2004参院選
 
モノ言わない教師たち <教育の現場から:04参院選(下)>

 「政治的な問題に労働組合が首を突っ込むのはいかがなものか」

 県教委が「新しい歴史教科書をつくる会」主導の教科書を採択した02年夏、県教委の職員は県教職員組合(県教組)に対し、こう苦言を述べた。県教組はこの教科書の採択に反対し、採択審議の公開などを県教委側に求めていた。その後、県教委は県教組との定期的な話し合いを取りやめた。

 県内の教職員組合の組織率は、県教組に日教組系の愛媛教職員組合(愛媛教組)を加えても2%に満たない。組合員は県教組約170人、愛媛教組17人。全国的にもこの数字は極めて低い。校長を含めたほぼ全教職員が組合に加盟し、国政選挙でも革新勢力の牽引(けんいん)役をつとめた、かつての面影はもうない。

 衰退と共に立場は弱まった。勤評闘争後、労使交渉は長く途絶えた。復活したのは80年代。それも歴史教科書の一件で中止になった。県教組は97年から県教委と確定交渉を始めたが、議題は賃金などに限定されるため、広く教育について話し合う定期協議の機会は失われたままだ。

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 「余計なことを言って校長や教委からにらまれるのが怖い」。愛媛の教員が決まって口にするフレーズだ。現職の教員は「組合もない愛媛では誰も守ってくれない」。教員OBも「報復なんてないのに過去の記憶を引きずって亡霊におびえている」ともらす。

 数年前、管理職登用試験の一環として県教委が主催した研修会に、講師として招かれた県外出身の愛媛大教員は本番を前に、事務局職員から注意を受けた。「出席者に、自由な意見を言わせないでほしい」。一瞬冗談かと思ったが、相手の表情は真剣だった。

 「管理職にもモノを言わせない。これが愛媛の教育か」。ささいな出来事だったが、鮮明な記憶として残った。

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 組合の弱体化は60年に発足した研修目的の県教育研究協議会(愛教研)によって、決定づけられた。激しい組合弾圧もあって、組合を脱会した教職員が次々に入会した。組織率は98%余り。全盛期の日教組をほうふつとさせる巨大組織だ。

 市郡ごとに支部があり、運営は教員OBらが担う。事務局側は「あくまで研修団体」というが、組合幹部は「そもそも体制側組織。職員を守れない」と言い放つ。

 来年夏、県内の中学校は教科書採択が控えている。県教組は運動方針に毎年、「つくる会教科書採択の阻止」を盛り込む。今後も、審議の透明性を高め、民主的な手続きで教科書を採択するよう県教委に求めていく方針だ。加藤諭書記長は「各種団体とも協力しながら、つくる会の動きを注視していきたい」という。

 01年と02年の教科書採択では一般教職員に目立った動きはなかった。ある県立高校教諭は「現場ではほとんど話題にもならなかった。ああマスコミが騒いでいるなあという感じ。そもそも学校で政治的な話題が出ることはない」と振り返る。

 「けがをするといけないので無難に仕事をこなそうとする。それが体質となって問題意識は本当に低い」。69歳の元中学校長が抱く不満はいまだに解消されていない。

 (07/04)


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