2004参院選
 
深刻さ増す医療過疎 <2004参院選>

 今年度から医師の臨床研修の必修化などで、大学医局が地域に派遣していた医師を引き揚げている。県内でも医師不足に拍車がかかり、医療過疎は深刻さを増すばかり。同じ社会保障でも年金問題は、参院選の街頭で声高に語られるが、医療過疎問題への取り組みを語る声はなかなか聞くことができない。

 「島根県でも多くの医師が大学に引き揚げられ、山間へき地にとどまらず中核の病院でさえ医師が足りなくなっている」

 6月19日、出雲市の県立中央病院で開かれた「しまね地域医療の会」にへき地医療に携わる医師や県の担当者ら約50人が集まった。県健康福祉部の正林督章次長は、県内の医療過疎の現状を説明した。

 国家試験に合格した医師が任意で受けてきた臨床研修が必修となり、2年の期間が義務づけられた。これまで多くの新人医師が大学の医局に籍を置いて研修医として専門領域を学びながら、事実上の労働力となってきた。新制度では希望する専門領域以外の能力を養うため、内科や外科などを順に回っていく。04、05年度の2年間は大学医局に研修医が入らず、大学医局は人手不足を補うために地域に派遣した医師を引き揚げ始めた。

 ■37人が不足

 県医療対策課が1月に県内の国立や公立病院などから聞き取り調査した。大学医局からの常勤医師の派遣数は、前年度に比べて02年度が8人減、03年度が10人減。04年度は15人も減る見込みと分かった。4月現在での県内の主な病院の医師の不足人数は37人。02年の15人、03年の18人から大幅に増えた。また、県内には半径4キロ以内に容易に通える医療機関がない「無医地区」が19市町村に39地区ある。人口10万人当たりの医師数(02年12月)は、全国平均206.1人に対し、雲南地域では157.4人、隠岐地域で173.4人。県内全医師のうち70歳以上は11%を占める。

 頓原町立頓原病院でも先月、常勤の派遣外科医が引き揚げられた。このため、整形外科担当の院長が不在の時は外科では対応出来ないという。同病院はベッド数48で、掛合、赤来、頓原3町と吉田村などから患者が訪れる中核病院。戸田修・事務次長は「島根大学や県立中央病院に外科の先生の派遣を要望している。医師がいなくなると病院経営の悪化にもつながりかねない」と話す。雲南総合病院(大東町)の常勤精神科医は4月から不在。隠岐病院(西郷町)では今秋、2人いる産婦人科医がいなくなる。

 ■対策に必死

 県も対策に必死だ。4月に医師確保事業をまとめる「しまね地域医療支援センター」を設けた。全国初の専門医養成プログラムを企画し、産婦人科や精神科などの専門医募集を始めた。大規模病院と中小病院での勤務を組み合わせ、地域医療に携わりながら専門医としての勉強をできる仕組み。澄田信義知事は島根大に地域事情を十分考慮するように要望した。

 県内の医療を担うのは島根大医学部の派遣医師や自治医大の卒業生ら。地域医療に関心がある医師を登録する県の「赤ひげバンク」も頼みの綱だ。昨年4月から西郷町の国保中村診療所に勤務する三島紘一さん(64)は大阪府内の元公立病院長。住民の顔が見えるへき地診療をしたいと同バンクに登録した。1日平均約20人の患者を診察し、4月からは医師不在の布施村にも通う。

 「これまでも医療過疎を含めた医療問題は先送りされてきた。政治家たちは『財源がない』と言って逃げている。今は先に手を付けた年金問題が解決しないと、ほかが前に進まない状態。医療過疎を解決しなければ人は生活できない。一番大切なところを政治で触れないのは寂しいことだ」。島で迎えた参院選を、三島さんはそんな風に見ている。

 (07/08)


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