2004参院選
 
「勢いづくり」 <凪の行方 04参院選:上>

 「おでんをやめないか」。5月8日、宇都宮市の宇都宮グランドホテル。民主党県連副代表の佐藤信県議はロビーで、県議会自民党議員会の渡辺渡会長に呼ばれた。自民は矢野哲朗氏の3選を、民主は簗瀬進氏の再選を目指す。その参院選の相談だった。

 「おでん」とは選挙時に道端に立てるポスター板のこと。選挙の度に県内で1千本近く立つ。

 「金もかかる。互いが了解できるならどうだ」。渡辺会長が言った。自民は数千万円の経費と多大な労力が省ける。「当選に自信があるから金も労力も節約したいということか」。佐藤県議はそう感じたという。提案は民主県連に伝わり、了承された。「選挙の苦労が50%は減ったと思うよ」。佐藤県議はそう言う。

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 栃木の参院選は、自民の各衆院議員が系列の候補者を支持する権力闘争の場だった。01年は森山真弓氏らが推す国井正幸氏(公認)が31万票で当選。西川公也氏らが推す増渕賢一氏(推薦)は、民主候補に3万票差で敗れしこりを残した。

 自民県連は今回、9年ぶりに候補者を一本化した。佐藤明男事務局長は「1議席の絶対確保」という党本部の方針や、足利銀行問題での党内団結をあげる。一方で県連幹部は「2議席独占が民主に阻まれてきた事情も考慮された」と話す。

 5月22日に宇都宮市内であった県連大会。衆院議員らのあいさつは、参院選よりも足銀の受け皿問題で対立する福田昭夫知事への批判が目立った。渡辺会長は「参院選の勝ち方は秋の知事選への影響力とつながる」と話す。連立政権を組む公明党県本部も「協力を前向きに検討中」という。

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 野党もまた、参院選への勢いづくりに悩む。

 「熱気に欠ける」。5月15日、宇都宮市での簗瀬氏の事務所開き。民主の渡辺直治県議は妙な落ち着きを感じた。4年前に吹いた「風」との違いだ。夏の衆院選で水島広子氏が当選し、秋には知事選で無党派の知事が誕生した。「自民を脅かす土壌はできてきた」。連合栃木の板橋賢二事務局長はそう見るが、昨秋の衆院選は、自民が五つの小選挙区を独占した。

 今回の参院選の得票は、民主県連の実力が試される場だ。ところが年金未納問題に絡む菅直人党代表の辞任や小沢一郎氏の代表就任辞退など足元が大きく揺らいだ。佐藤栄県連幹事長は「もし保守系新顔が出たらどうなる、と緊張が消えない」と心境をもらす。

 連合栃木の伍井邦夫会長は「次期衆院選につなげるなら、無党派の火をおこす起爆剤が欲しい」と願う。

 「年金問題や自衛隊派遣を見て欲しい。自民も民主も大差はない」。共産党公認の新顔、野村節子氏は街頭演説などで訴える。

 「国民の目線に立つ共産の主張を聴いて欲しい」。年金未納問題は有権者の政治不信を招いた。矢野、簗瀬両氏とも未納期間があった。野村氏は「党の実態をいち早く公表した」とする共産への納税者の手応えを感じるという。

 壁はその先だ。塚原勝党県委員会委員長は「『共感するが勝てないだろう』という共産への固定観念を変えたい」と話す。

 「党がもう一回り大きくなれば求心力は増すのだが」。支持拡大への勢いに期待するのは、比例票に党の存亡をかける社民党県連も同じだ。

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 「守りの自民と動けぬ野党」。今回の構図を自民党衆院議員はそう言う。国会で与野党が年金問題で激しくぶつかる一方で、県内の各党は凪(なぎ)の行方を気にする。24日公示、7月11日投開票の日程が想定される参院選が近づく。

 (06/05)


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