2004参院選
 
離島の自立(ふるさとは今… 04参院選:4)

 タイヤの直径が人間の背より高いダンプトラックが地響きを上げて行き来する。西郷町で進む隠岐空港の2千メートル滑走路は2年後の供用を目指す。東京ドーム8杯分の盛り土は9割ほど済み、最高80メートルの高さにまでなっている。

 新滑走路は小型ジェット機の運航などを目的に挙げ、現在の1500メートル滑走路の南側で、大床山(標高約150メートル)と赤畑山(同110メートル)を切り崩し、隣接する漁港の一部を埋め立てて建設する。ターミナルビル建設も含めた総事業費は280億円。道路や河川など周辺整備費を加えると500億円近い公共投資になる。大山隠岐国立公園の一部を大幅に変更させる巨大事業だが、今のところジェット機が飛ぶ予定はない。

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 新滑走路建設の根拠は、経済成長率をもとに94年に試算した需要予測だ。03年度23万人、08年度27万人、13年度32万人と想定。右肩上がりの需要を満たすには、機材の大型化と便数増が必要であるとして県と地元が要望活動を展開し、96年からの国の第7次空港整備5カ年計画に組み込まれた。

 91年から8年間、西郷町長を務めた毛利道生さん(73)は上京するたび、青年団活動でつき合いがあった故竹下登・元首相や青木幹雄・自民党参院幹事長、細田博之官房長官らに会った。「先生方の力も大きかった」と今も振り返る。

 だが、実際の航空機利用者は、本土との高速船「レインボー」が就航する前年の9万6千人(92年度)をピークに減少し、03年度実績は4万2千人で需要予測の5分の1以下だった。

 地元では「多額の税金を投入したからには効果がないのはまずい」(吉崎博章・西郷町商工会長)と危機感が漂う。隠岐7町村や観光協会など約150団体でつくっている「隠岐空港整備・利用促進協議会」は実績づくりに必死だ。来月から2カ月間、通常の36人乗りから、74人乗りも就航する大阪便(1日2往復)で6割以上の搭乗率を目指す。同協議会事務局では「実績ができればジェット化に弾みがつく」とし、来年2月に発着枠を見直す羽田空港への就航にも大きな期待を寄せる。

 しかし、一定の観光客を見込める夏場と、オフシーズンの冬場では利用者数に大きな隔たりがあり、搭乗率を重視する航空会社の戦略から見通しは険しい。

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 すでに2千メートル滑走路を備えている石見空港は、利用者の低迷が減便を招き、減便によってさらに利用者が減る悪循環に苦しむ。先月、航空会社は126人乗りの大阪便を10月から74人乗りに変更することを通告。地元と県は、大阪便の小型化・複便化を要望していたが、複便化は見送られた。

 石見空港も過大な需要予測に基づいて建設された。山口県東部を含む周辺35市町村などで組織している「萩・石見空港利用拡大促進協議会」の会長、牛尾郁夫・益田市長は「空港を望む隠岐の人の気持ちはよく分かるが、人口が少なければどうしようもない。隠岐空港も完成後は石見空港と同じことになる」と指摘する。

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 西郷町の吉田義隆助役は「本土並みの物差しで費用対効果を計れば、離島はすべての事業が計算上は無駄になる。公共事業そのものが隠岐を維持している意味合いもないわけではない」と訴える。だが、すでに隠岐7町村への公共投資額はピークだった98年から約2割減った。隠岐空港が完成すると、島内の経済がさらに冷え込むのは間違いない。昨年4月に改正された離島振興法には「離島の自立」を求める文言が盛り込まれた。これまでの公共事業依存型の離島振興が続かないことを国も示している。

 「もう公共事業頼りでは生き残れない」。構造改革特区に認められた海士町で今年1月、農業経営に参入した建設会社社長の田仲寿夫さん(51)は「隠岐では今まで公共事業があふれ、不要なものまでつくってきたのが実態だ。これからは自分たちが産業を興す発想に転換し、住民自身が地域づくりを真剣に考えないといけない」と言う。

 =おわり  (06/11)


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