2004参院選
 
三位一体改革 あえぐ自治体(争点を追う 04参院選:上)

 老朽化した下津町の小学校の建て替え工事が今年、延期された。

 「着工すれば、05年度には赤字に陥ります」

 1月末、04年度の予算編成で、同町の前川順治総務参事は、藤本洋町長に訴えた。

 下津小学校の講堂は築70年以上。耐震性にも問題を抱え、00年度に改築計画が持ち上がった。総工費約20億円のうち地元負担は約4億円。04、05両年度で工事をする計画だったが、建設費としてあてにしていた国からの地方交付税が、前年度より2億3000万円少ない19億5000万円になった。

 前川参事は「歳入が減ったのに対応するには、投資的経費にあたる公共工事の費用を切りつめるしかなかった」と振り返る。

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 地方交付税は、どの地域に住む国民も一定の行政サービスを受けられるよう国が財源を保障する制度だ。しかし、国と地方の税財政を見直す「三位一体改革」により、今年度、地方交付税が大幅に削減された。その影響は、県や市町村だけにとどまらない。

 「工事は減っており、荒れた田畑をよみがえらせ、農業に挑戦したい」。海草郡内の建設会社長(57)は4月1日、県庁にこんな内容の電子メールを送った。

 創業40年以上の同社の売上高は過去最悪になる見込み。最盛期の3分の1以下の水準だという。売り上げ全体の約7割を占める公共工事が大幅に減ったのが響いた。今後も好転が期待できないとして、後継者不足に悩む農業に商機を見いだそうと考えた。

 県の担当者から、企業でも農業ができる生産法人についての説明を聞いた同社の役員(59)は「実現へのハードルは多いが、動き出さなければいけない。公共工事が減ったことを嘆いている余裕はない」。

 県内の建設業者は約6200社。人口比にすると全国一の多さだ。多くが公共工事頼みの経営で、県技術調査課の担当者は「交付税削減の影響は計り知れない。今後は、業種転換を考える業者も増えるかも知れない」とみる。

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 5月上旬、県庁内であった記者会見で、坂越健一・市町村課長は、県内50市町村の財政状況についてこう話した。

 「財源不足を補うため、貯金を使い果たした市町村も出ている。05年度以降、大変なことになるかも知れない」

 50市町村合わせた地方交付税総額は前年度より約113億円減った。減額の規模、率とも過去最大だった。

 04年度の国全体の地方交付税総額は約21.1兆円にのぼる。前年度に比べて約12.0%減ったが、それでも8兆円の赤字。国と地方の長期債務残高は、04年度末見込みで、約719兆円(前年度末695兆円)に達する見通しだ。

 県財政課の担当者はこう漏らす。「いつかは景気が回復すると期待して、国を挙げて公共事業に投資を続けてきた結果、身動きが取れない状態に陥ってしまった」

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 公示まで10日あまりに迫った参院選。三位一体の改革、年金制度、イラクと課題は山積する。暮らしにそれらの問題がどうかかわるのか。県内の事情を追った。  (06/12)


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