2004参院選
 
参議院ってなんだろう(中) 良識の府

 参院議員会館のエレベーターで、岩本荘太は乗り合わせた女性に話しかけた。

 「先生は次(選挙)でしたっけ」

 議員の半数が3年ごとに改選される参院ではこの時期、そんな言葉が議員同士のあいさつになる。「いえ、私は出ません」。ヒールの音を響かせ、足早に女性は去った。

 自民の比例区選出の佐々木知子(49)。元検事、松木麗のペンネームで書いた小説が横溝正史賞を受賞、と華麗な経歴の持ち主だ。豊富な実務経験からストーカー規制法や少年法改正などに積極的に携わってきた。

 立候補を断念した理由に選挙制度の変更を挙げる。初当選した98年の参院選では、比例区は政党への投票で党の議席数が決まり、名簿掲載順に当選した。目玉候補だった佐々木の順位は安全圏の11位。選挙運動はしなかった。

 しかし、01年選挙では名簿から順位が消え、個人名での得票順に当選する制度になった。比例区候補も自分への投票を呼びかけ、党員獲得のノルマもある。佐々木は自身のホームページで「立法はやりがいのある仕事だが、選挙はとうていやれない」と記している。

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 初の参院本会議があった47年、250人の議員中108人は無所属だった。第1会派「緑風会」は作家の山本有三、主婦連を作った奥むめおら無所属92人のグループ。文化財保護法の議員立法、「自衛隊の海外出動をなさざることの決議」の発議と可決など、「良識の府」の姿に最も近い会派だったとされる。

 しかし、その後は政党化が進み、緑風会は18年で消滅。83年、個人に投票する全国区に替わり政党に投票する比例区が導入され、衆院との違いは薄れていった。

 98年選挙で自民の比例名簿を見ると、上位には各省庁の長だった人が並ぶ。元農水省なら農業や外食産業、元国交省なら建設業など関係する業界からの集票を期待してのことだ。一方、民主の顔ぶれには労組の長ら。その傾向は今回も変わらない。

 岩本はいま、時間が空けば机に向かい、資料の山と格闘している。4冊目となる著書「これでいいのか参議院」(仮題)のため、独自に参院議員の経歴による分類を進めているのだ。それによると、3分の1は「団体の長」で出身業界の利益代弁に執心している。タレント議員や二世議員をあわせ、議員の大半は国政への野心がない。だから、ただ党が決めた方針に従う、と岩本は指摘する。

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 「党議に縛られて参院改革はない。既成政党に属さない条件で出馬した」という岩本は無所属の会の一員だ。緑風会を理想とし、政策など議員に対する拘束は全くない。国旗国家法、少年法改正に賛成、個人情報保護法、有事法制、イラク特措法には反対。是々非々で臨んできた。

 現在、無所属の会は衆院1人と参院4人の計5人。政党交付金の要件を間際で満たし、「単なる金の受け皿だ」と批判もある。03年の政党交付金は約3億2千万円。02年度の政治資金収支報告書によれば、岩本の後援会収入は100万円あまりだったのに対し、同会県支部は約2700万円と大きい。

 小会派にも発言機会は平等にまわり、所属する農林水産、決算委員会や憲法調査会ではほぼ毎回質問に立つ。党の方針に従って発言をする議員に対し、独力で渡り合った自負がある。

 だが、言動が自由な半面、大政党の議員に比べて存在感は薄い。発言が報道されることもほとんどない。03年には無所属の会の参院議員2人が民主に移った。

 岩本を含め、参院の残る4人は全員が今期限りで政界を引退する。(敬称略)

 (06/17)


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