2004参院選
 
治安 <明日へ 有権者の足元>

 JR宇都宮駅東口から徒歩で約8分の市中心部に14階建てのマンションが建設中だ。完成は来春の予定。24時間オンラインの防犯設備が売りの一つだという。

 全78室の約9割がすでに契約済みという。「防犯設備の充実でお客様に安心と安全を買って頂く」。販売元ナイスの山本典良・宇都宮営業所長は自信を持って言った。

 外出時に使う玄関ドアの鍵は複製が困難な「ディンプルキー」。外出時、鍵穴に差し込み回すとセンサーが自動的にセットされ、室内の異状を感知すると警備会社に即座に知らせる。ピッキング防止のため、玄関ドアは錠が二つの「ダブルロック」だ。

 「3、4年前からお客様の防犯への関心が高まってきた」と山本所長は話す。県内の空き巣など侵入盗の発生件数は、98年を境に急増した。年間4千件前後だった発生が、03年は6272件と5年で1.5倍以上になった。

 ●空き交番解消

 5月中旬の午後3時ごろ。宇都宮市緑2丁目の緑交番に50代の主婦が架空請求の封筒を持ち駆け込んできた。封筒のあて名は娘で、東京の弁護士名で「2日以内に連絡しないと強制執行する」とあった。

 相談員の森下昭雄さん(70)は警察官としての経験から「こういうものには取り合わないのが肝心」と話した。主婦は安心して帰宅したという。

 県警は4月から空き交番をなくそうと警察OBに協力を求めた。宇都宮南署が管轄する三つの交番では4、5月の2カ月に警察官がパトロールなどに出て留守になった「空き交番」を計226時間解消できたという。

 元県警刑事部長の森下さんは「事件の発生に追い回され、今の警察官は交番で立ち話をする時間がないんだろう。私たちは交番で存在感を示すことが最大のボランティアだと思う」と話す。

 緑交番の近くに住む主婦(62)はかつて、会社帰りの夜に自転車に乗った不審な男につけられた。怖くなり交番に駆け込んだが無人だった。「いつまた同じようなことがあるかと思うと、交番に人がいるだけで安心だ」という。

 県内の犯罪発生件数は6年連続で過去最悪を記録した。県が行った「03年度県政世論調査」では86.5%の県民が「治安が悪化している」と答えている。長引く不況や少年犯罪の深刻化、地域社会の希薄化、「おれおれ詐欺」など新手の犯罪の登場などが背景にある。

 ●「もっと身近に」

 県警本部で22日、刑事や地域、交通など幅広い部から35歳未満の警察職員10人が参加して弁論大会が開かれた。

 「(警察の不祥事などの発覚で)逆風の環境の中、ストレスは並大抵ではない」

 県警ナンバー2の警務部長らを前に、ある巡査部長は大きな声で主張した。「市民の協力は欠かせない」「もっと身近な存在の警察官になる」と住民の参加を求める声も次々と上がった。

 県警の警察官の定員はここ8年間で670人増え、04年度は3126人になった。4月には街頭犯罪を無くそうとパトロールを行う66人体制の機動警察隊を発足させ、「体感治安」の回復を目指す。しかし、県警幹部は「昔と違い、今は警察の力だけではどうにもならない」ともらす。「市民との協力や情報提供を通して、犯罪が発生しにくい環境を作っていきたい」

 警察という組織は、大きな発想転換を迫られている。

     ◇

 参院選が公示され、街に候補者の訴えが響く。200万県民の暮らしの中の不安や願いを政治家たちはどう聞いてくれるのだろうか。

 (06/26)


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