2004参院選
 
(2)農業 将来の姿、政策に見えず <争点の現場から>

 「在外邦人向けに、日本産の米や野菜を輸出する事業に参加しないか」

 成田市の稲作農家海保博資さん(61)は、知人に持ちかけられた新たなビジネスチャンスに乗り気だ。海保さんは「コメはおいしくて安全な日本のが一番。海外で日本米を恋しがっている人は多い。ここに、日本の食糧自給率を上げるヒントがあると思う」と話す。

 ●有機米を安く

 98年6月、印旛地区の10軒の農家が有限会社「ちば緑耕舎」を作った。海保さんは現在、年間約500トンを出荷するこの会社の代表。創業当時から有機農法によるコメ作りを進め、首都圏の生協と取引している。

 同社が力を入れるのは、一般のコメより農薬と化学肥料を半分近く減らした「減減」米だ。有機農法は面積あたりの収量が減るし、消費者には割高感が先に立つ。中をとって、安全性と値ごろ感を高めているコメで、同社の出荷量の半分を占める。値段はコシヒカリが10キロで5千円ほど。「安全と価格の両立は永遠の課題」という海保さんが、今、持ち合わせている答えだ。

 ●消費者と模索

 日本の食糧自給率は現在4割程度。今回の参院選で、政党も候補者もこぞって「自給率アップ」を訴える。各党が掲げたマニフェスト(選挙公約)では、そのための政策として、国が農家に所得を払う制度の導入や、NPOや株式会社に農地利用権を認める制度の創設など、従来の制度を変え、規制を取り除く内容が目立つ。

 ちば緑耕舎の創業当時、農家が生産だけでなく、流通経路の開拓や取引先との交渉もこなす試みは珍しかった。それまで農協任せにしていた事務作業に苦労して取り組む一方で、ビジネスの楽しさも感じたという。

 各党のマニフェストについて海保さんは「日本の農業の将来像が浮かばない」という。土地改良や農道整備に出ていた補助金を、農家個人に対する補償、補助へ切り替えることが、「本当に自給率の向上に結びつくのか?」「経営者意識が強い農家のプライドは守れるのか?」という戸惑いだ。

 ちば緑耕舎は都市部の消費者を対象に、田植え、草取り、稲刈りを体験してもらう「田んぼ交流」を続けている。「自分で作るコメはおいしい。野菜だってそう。キャベツの柔らかさとかタマネギの甘さとか。自分で作れば違いがよく分かる」。農業体験で外国産との味の違いを消費者に分かってもらうことが、自給率アップのかぎと考えている。

 消費者はおいしくて安全で安いコメを求める。でも安全には一定のコストもかかる。消費者と農家がもっと接近して、一緒に農業を学べる世の中になったらいいと思う。

 「『売れるコメを作れ』と言う政治家のみなさん、田んぼで待っています」。米作りの現場からの海保さんのメッセージだ。

 (06/29)


 参院選 各都道府県のニュース   一覧>>

ニュースの詳細は朝日新聞へどうぞ。購読の申し込みはインターネットでもできます。
asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。
すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
| 著作権 | リンク | プライバシー |
Copyright Asahi Shimbun. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission