2004参院選
 
(4)安全 「信頼」「当たり前」揺らぐ <争点の現場から>

 「長年信頼してきたのに……」

 千葉中央バス(本社・千葉市中央区)の車両担当の男性社員はつぶやいた。同社が所有するバス120台のうち、20台が三菱自動車製という。同自動車から、車軸とタイヤをつなぐ部品「ハブ」の欠陥を通知され、4カ月かけてすべての車両について交換した。

 ●「欠陥」のまま

 小湊鉄道(本社・市原市)は今年4月に三菱のリコール通知を受け、6月初めから中旬にかけて交換を済ませた。

 子会社のバス3社を統括する新京成電鉄(本社・鎌ケ谷市)は、現在運行している三菱自動車製9台はリコールの対象になっておらず、「問題がない」として走行を控える考えはないという。

 次々と三菱の欠陥隠し、クレーム隠しが明るみに出た。欠陥が発覚しても、すぐに新しいハブを調達して交換することができず、商用車、とくにバスの場合、不特定多数の利用者が危険と隣り合わせになる可能性につながる。

 関係者によると、リコールがあっても、部品の調達などができるまで、しばらくは、欠陥を抱えたまま運行せざるを得ないこともあるという。

 国土交通省リコール対策室や千葉運輸支局はこうした状況を「好ましくはない」と指摘する。が、一方で、「過度にタイヤに負荷をかけず、道路運送法に従って安全な運転をすれば、ハブは損傷しない。路線バスの当面の安全性に問題はないと考えている」とも説明。バス会社に対して、利用者に説明を義務づける予定はない。

 自助努力として、新京成電鉄は、今年度に予定していた三菱の小型低床バス2台の購入を再検討する。バス事業の責任者は「お客様に不安を抱かせるのは避けたい。しかし、お年寄りらに優しいバスは導入したい。困ったものです」と話した。

 千葉中央バスの車両担当者は「交換したハブなら大丈夫だろう、と信じるしかない。国土交通省が、三菱の車や部品の『安全宣言』でも出してくれたらいいんですが」と胸の内を明かす。

 ●縦割りで混乱

 国内初の牛海綿状脳症(BSE)の牛が県内で出たのは01年のことだった。行政は、家畜段階は農水省、牛肉加工段階は厚生労働省の管轄と分かれており、「縦割り」が招いた対応の混乱や、その後の風評被害に対して批判が出た。

 「当たり前」のように思っていた身近な安全や信頼が揺らぎ続ける。

 社会の安全問題に詳しい国際基督教大学の村上陽一郎教授(科学技術論)は「今は企業の製造者としての責任が第一の社会になりつつある。とはいえ、政治家が単に『お上』感覚ではなく、政治に携わる一つの責任として、人々が困っている時に努力する責務はある。米国では議員個人が国民のクレームをもとに調査委員会を作ることもよく見られる」と指摘する。

■安全を巡る最近の事件

96年2月 薬害エイズ問題で菅直人厚生相が国の責任を認め、患者らに謝罪

00年6月 雪印の乳製品で大規模食中毒

01年9月 国内初の牛海綿状脳症(BSE)の牛、県内で見つかる

02年1月 雪印食品で牛肉偽装事件が発覚

   8月 日本ハムが牛肉偽装を認める

04年5月 三菱自動車製大型車のハブの欠陥隠しで元役員ら逮捕。大型車クラッチ系統の欠陥隠しも発覚

 (07/01)


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