2004参院選
 
それぞれの反体制 <政治の季節のあとに(2)>

 川島町の税理士、新井勝(すぐれ)さん(51)は、税理士政治連盟への会費納入を拒み続けている。

 地元の税理士会幹部が「うちの支部は政治連盟への全員加入を目指している」と話したのを聞き、反発した。税理士になったのは40歳を間近にしたころだ。

 政治連盟が自民党など与党議員を支援しているのは知っていた。自民は結局、既得権益の代弁者に過ぎないと思う。

    ■ □

 「体制に順応しない生き方」は昔からだ。

 川越高校2年だった69年、エンゲルスの「空想から科学へ」を読んだ。東京・立川にあった米軍基地を見に行った。仲間と「生徒憲章」を語り合い、「検討委員会」の委員長になった。「何かを変えたいと思った。その中で、自分たちの力で形にできそうなのは生徒憲章しかなかった」

 大学卒業後、銀行に就職したが、肌に合わず、3年で退職。専門学校講師、そば屋の出前で家計を支え、10年以上かけて税理士試験に合格した。

 「豊かな時代」を生きたと思う。右肩上がりの経済成長が続き、いつも「来年は今年よりも良くなる」と信じていた。「体制」に反発し続けても、職にあぶれる心配はなかった。

 それにひきかえ、デフレの時代に生きる今の若者たちは、自己防衛に走っているように見える。青臭く政治を語ることがなくなっても、当然なのかもしれない。

 長年、体制批判のつもりで共産党に投票してきたが、ここ数年民主党に変えた。自分の声を政治に反映させるためには、民主の方が可能性があると思うようになった。

 参院選の争点は年金だ、と考えている。

 自民でも民主でも、年金改革がもたらす結果は大差がないだろう。しかし、負担増が避けられない右肩下がりの時代に重要なのは、国民が納得できるプロセスだ。合計特殊出生率1・29を、法案審議が終わってから公表するような政府は信じられない。

    ■ □

 川越市の山田広道さん(51)の生き方も「体制への反発」に彩られてきた。69年、新聞部員として「川越高校新聞」に生徒憲章の記事を書いた。学生運動に影響されることを戒めながら、生徒憲章に「生徒一人ひとりが関心をもとう」と呼びかけた。

 高校卒業後、いったん朝霞市役所に勤めたが、1年後に大学に入った。

 大企業や教師といった安定した道を選ばず、印刷物の版下の修業を始めた。今は都内でチラシの版下制作やウェッブサイトデザインの小さな会社を経営している。

 あの時代、口では学生運動を批判しながら、実はそこにひたり、ドロップアウトすることへのあこがれがあったと思う。

 最近では、体制から逃れようとしてきたのに、実は取り込まれていた、と感じることがある。

 会社はバブルのころでも儲(もう)からなかったが、崩壊後は波をかぶった。金融機関の貸し渋りが激しい。潔癖な生き方をしたくても、ヤミ金融まがいなど怪しげな業者の仕事も断れない。

 参院選では、将来の政権交代に期待して民主党に入れるつもりだ。政権交代があれば、これまでのうみが白日の下にさらされる。民主党は党内がバラバラだが、ぼろが出るのも「情報公開」の一つの形だと考えている。

 成人した息子が2人。自宅に届く投票所の入場券は、いつも1枚は使われた形跡がない。だが、投票に行けとは言わない。

 「政治が人間の幸、不幸を決める社会が、良い社会とは限らない」

 自分の若いころとは、時代が違うと思う。

 (06/30)


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