2004参院選
 
あえて日の丸を <政治の季節のあとに(3)>

 参院選を前に、東松山市で薬局を経営する金子達也さん(51)のもとに、薬剤師会からファクスが届いた。

 薬剤師連盟が推す比例区候補と、連盟を含む医療関係13団体が支援する埼玉選挙区の関口昌一氏への支持を呼びかけるため、連盟幹部が各地を回るスケジュールの連絡だった。2人は自民党の候補だ。金子さんは県薬剤師会の支部長として選挙を手伝っている。

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 川越高校時代、学生運動には反発があった。日本の伝統にも良いものがあるし、家族の価値観は大切にしたい。高校の制服にも抵抗はなく、生徒憲章も「なぜ今の決まりを変える必要があるのか」と疑問に思った。

 仲間と「ガッツ会」という名前のグループを作った。「根性」とか、「武士道」とかいう言葉が嫌われた時代だ。

 体育祭の日、教室の窓から手作りの日の丸を掲げた。

 日の丸に特別なこだわりがあったわけではない。日の丸というだけで非難される時代の状況に、ただ反発したかった。

 製薬会社などで修業した後、「家族と一緒に過ごせるから」と薬局を開いた。

 小売店が影響をかぶる消費税に反対し、社会党に投票したこともある。業界代表の選挙応援に真剣に取り組むようになったのは5年前、薬剤師会の役員になってからだ。

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 1969年という時代を今、振り返る。「70年安保」とは、日本の将来を決める期限が切られた課題だった。それが目の前にぶら下がっていた。だから、あんなに一生懸命になれたのだと思う。

 本当は、今の日本も差し迫った課題を抱えているのだろう。しかし、年金改革にせよ、なぜか課題を先送りにして、済ませている。

 日本中が「ゆでガエル」になっているのではないか。熱湯に入れると飛び出すカエルも、水に入れ、少しずつ熱すると気づかないままゆであがるという。

 薬局も「ゆでガエル」の典型だ、と思う。ふと気づくと、周りには大型のドラッグストアがたくさん生まれ、規制緩和の名の下で、薬もコンビニエンスストアで売られるようになる。

 薬剤師会は医師会と比べ、政治に無関心すぎたと感じる。日本歯科医師連盟の贈賄事件以来、組織選挙への風当たりは強いが、政策を決めるテーブルに代表が1人もいないのでは、権利の主張もできず、役人の言いなりになるだけだ。

 限られた医療関係予算を奪い合う医師会や歯科医師会とは、時に利害が相反する。しかし、法律の解釈などで質問しても、ろくな返事が来ないような霞が関から誠実な回答を引き出すには、歯科医師出身の関口氏の事務所も頼りになる。

 政治には「数の論理」が働く。だからこそ、無党派層と言われる人たちや若者も、もっと政治に参加し、選挙に行けばいいと思う。参加し、多数を集めることで、政治は必ず動くはずだ。

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 数カ月前、「ガッツ会」のメンバーを中心に高校時代の仲間と一緒に飲んだ。学校の校長になった1人が「卒業式で日の丸を掲揚しても起立しない先生がいる。どう思うか」と聞いた。

 色々な意見が飛び交った。「いいんじゃないの。1人や2人、そういう人がいても」。金子さんはそう答えた。

 様々な考えをもった友人たちが、自分の思いをぶつけあった高校時代があった。だからこそ、今の自分がある、と思っている。

 (07/01)


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