2004参院選
 
旧産炭地振興<問われるもの04参院選・筑豊から>

 緑深い丘の中腹に、うす茶色のビルが立つ。昨年春にできた飯塚市のIT拠点、トライバレーセンター(TVC)だ。

 森大輔さん(26)はTVCの一室でパソコンに向かう。市内にある九州工業大の大学院生。01年に医薬品製造に使うソフト開発のベンチャー企業を1人で立ち上げた。学生の場合、部屋代は1平方メートルあたり月500円。相場の4分の1だ。「安くて快適。企業イメージも圧倒的によくなった」と喜ぶ。

 TVCは、市のトライバレー構想の中核として整備された。「山に囲まれた飯塚の地(バレー)から世界に挑戦する(トライ)」という意味の造語。米国のシリコンバレーにあやかった。

 地元に誘致した九工大の人材などを生かし、IT産業を生み出すのが目的。独創的なアイデアの実用化をめざす起業家を支援したり、ベンチャー企業を対象に経営相談をしたりする。国や県が出資する基金から補助を受ける。

 「黒ダイヤ」と歌われ、筑豊に繁栄をもたらした炭鉱が70年代に姿を消し、地域の振興は国に頼ってきた。だが、石炭6法が01年度で失効。どうやって地域を立て直すのか、手探りが続くなか、飯塚市はITに活路を求めた。

 98年には7社だった市内のベンチャー企業は39社に増えた。働く人は約300人、年商は約12億円に。市は07年度までに100社、800人、50億円をめざす。

 構想は6月、内閣府などが選ぶ産学官連携功労者表彰で「経済産業大臣賞」を受けた。旧産炭地から転換を図った成功事例と評価された。

 今津研太郎さん(27)は、企業のIT化を請け負うベンチャー企業をTVCで創業した。九工大出身でグラフィックス技術を駆使したソフト作成は自信がある。しかし、契約交渉で値切られてしまう。営業力のある人材がほしいと思う。

 この春、TVCに入っていた会社が福岡市に移った。飯塚市は慰留したが、返事は「開発のめどが立ったので営業面を重視したい」。今津さんらももっといい条件で多くの仕事を得ようと思えば、大都市への進出を視野に入れざるを得ないという。

 地域活性化の種はまいたが、実りは大都市に持っていかれてしまいかねない。地方の不利を補うために、市がいかにバックアップできるか。ITベンチャーが根付くかどうかの分かれ目になりそうだ。

 江頭貞元・市長は「政府は公共部門のIT受注を拡大するなど幅広い支援策を考えてほしい。体力のない地方都市では限界がある」と訴える。

 (07/02)


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