2004参院選
 
(5)景気対策 回復は現場の知恵頼み <争点の現場から>

 スーツ上下は6300円から、ワイシャツ1枚は1600円から。物ではなく、君津市のクリーニング会社「ナチュラルクリーン」(NC)の値段設定だ。

 ●差別化図って

 NCはドライクリーニングが主流の業界で、水洗いで差別化を図る。シルクや革製品も水で洗う。このやり方に変えてから7年で、500万点の汚れを水で流した。最近では、シャネル、バーバリー、ヴェルサーチなど、アフターケアも求められるブランド品の取扱店も取引先に加わった。

 クリーニング業界も不況に直撃された。03年度の市場規模は約5千億円といい、10年間で3千億円ほど減った。需要が減るなか、「ワイシャツ1枚100円」という店も少なくないように、価格競争が生き残り策の主流だ。

 NCの山田幸雄社長は「それではプライドも何もない」と言い切る。ドライクリーニングの店として、95年ごろ、1店舗としての売り上げ「日本一」を誇ったこともある。しかし、同年の地下鉄サリン事件によって、自社で使用していた薬品に熱を加えるだけで有毒ガスが発生することを知り、水洗いの研究を始めた。

 97年、カシミヤやシルク、革製品にも使える水洗い技術を開発し、米環境保護局から「21世紀に必要な技術」と認められた。だが、本格稼働後、縮まないはずの物が縮むなど、少量の衣類を使ったテストと実際は違った。納期が遅れ、取次店が減り、「設備投資過大でつぶれる」ともささやかれた。

 徹夜の作業が続く中、残った取次店が深夜におにぎりを差し入れるなど、周囲の支えのおかげで、水洗いを軌道に乗せることができたという。

 NCの鈴木三雄営業本部長は「価格競争に参加して、地元の客を取り合っていたら今はない」と振り返る。新たなビジネスモデルの展開で、地場のクリーニング店が顧客を全国に広げた。

 ●街の活性化を

 「元気な会社があれば、働く人、見に来る人、取引する人、多くの人が集まる。そこには食事するところ、泊まるところ、多くの産業が必要となり、街が活性化していく」。鈴木本部長はそんな企業にしていきたいという。

 全国の完全失業率はバブル後最も高い03年1月の5.5%から、04年5月には4.6%に下がった。03年の全国の倒産件数は4年ぶりに前年比で減少し、県内では04年上半期は3年連続減少傾向にある。また03年度、大企業を中心に最高益の更新が続出した。

 しかし、「景気回復」を実感している企業や人は一握りだ。大企業の最高益は売り上げ増ではなく、コストの切り詰めによるところが大きい。

 将来への不安、少子高齢化など複合的な要素が絡む景気対策に妙案はない。「稼げなければつぶれる」という危機感のある現場が知恵を絞り、打開策を模索し続けている。

      ◆

【景気を巡る近年の動き】

86年末から 低金利政策とカネ余りの相乗効果で土地や株の価格が急騰

89年末 日経平均株価3万8915円の最高値を記録

90年 株価の暴落始まる。地価も91年以降下落に転じる

98年末から 米国でのネット関連株上昇を受け、国内でもネット関連株の人気が高まる(ITバブル)

00年4月 ITバブル崩壊

04年3月 大企業を中心に過去最高益の更新が相次ぐ

 (07/03)


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