2004参院選
 
変わる費用 <明日へ 有権者の足元>

 また一つ、大手メーカーの工場から、労働者がごっそりいなくなる。

 音響機器大手の日本ビクター。小山工場は、物流大動脈の国道新4号と小山市街地の中間に位置する。従業員300人弱の3分の2は、7月末までに事実上解雇される。

 そこから直線で3キロ離れた富士通小山工場と、昭和電工小山事業所では01〜02年、大規模なリストラが実施された。

 当時、富士通小山工場を早期退職した40代の技術者は、県南の製造請負会社で契約社員になっていた。大手メーカーが発注する設計や開発、組み立ての事業を、一定期間で仕上げる仕事だ。

 時給は千円前後。ボーナスや退職金とは無縁だ。かつての割り増し退職金で、中学生になる子供2人の学費には困らない。しかし、退職金を減らさないよう、少しでも時給のいい仕事を探す。

 現在、働く場所はもといた小山工場の近くにある富士通子会社。「(職場のそばの)富士通時代を懐かしむ余裕はない」

 1カ月ほど前。子会社での仕事が終わった夕方、雇用主の請負会社に呼び出された。

 「この夏にも(富士通子会社との)契約が切れる。こちらが選ぶ次の職場で働けるか考えて下さい」

 「次の職場」までは、今より車で30分遠い。それを受け入れるか、別の請負会社を探そうか。まだ判断がつかない。

 ●高さ全国有数

 県内の有効求人倍率は昨年11月、6年3カ月ぶりに求人数が求職者数を上回る1倍を超えた。特に小山市と周辺3町を所管するハローワーク小山では、製造業の業績回復をバネに、一足早い同9月に1倍台を回復した。

 ただし、雇用形態は大規模リストラ前とうって変わっている。高求人倍率の主因は「派遣・請負が増えたこと」(ハローワーク小山)だという。

 自前での正社員採用を抑え、派遣や請負会社からの人材でコストダウンを図る。こうした大手の経営戦術は、製造業への派遣が解禁された3月の改正労働者派遣法で、ますます強まっている。小山管内では求人数の4分の1が「派遣・請負」。求人倍率が全国有数の高さを示しても、リストラで縮小してしまった雇用規模に、回復の兆しは見られない。

 昨年12月、大手電子部品メーカーの県内工場にいた社員や元社員15人ほどが、JR宇都宮駅東口に近い居酒屋で、約2年ぶりの忘年会を開いた。

 「話があるんですけど」。2次会の後、01年9月に早期退職した三谷候さん(44)は、かつての部下(42)に引き留められた。部下は中堅メーカーに就職したが、給与体系への不満と残業時間の多さを愚痴った。

 「ならば」と三谷さんは自分の転職先を勧めた。年収は大手のころの半分。部下の勤める中堅メーカーより見劣りする。それでも得心していた。「本当は安月給への不満ではなく、昔のように安住できる働き場所を求めていたのではないか」と三谷さんは思いやる。

 ●技術で選別も

 2人は今、宇都宮市の大手製造請負会社「アイライン」の業務推進部にいる。請け負ったモノづくり事業を指揮する部隊だ。同部の30人すべては大手か中堅メーカーの出身者。リストラや早期退職制度などで流出した人材が、請負会社の屋台骨を支えている。

 同部長の菊元新二さん(55)は月に数度、技術系の採用面接に立ち合う。請負旺盛の現在、同社は技術者の大幅増員を図っているが、それでも2〜4割は不採用にする。「メーカーは請負会社にも、正社員なみの技術水準を求める」ためだ。

 リストラの受け皿になったはずの請負業界でも、人の選別は厳しくなるばかりだという。

 (07/07)


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