2004参院選
 
「年金」募る不安と不信 <争点の現場から>

 重要情報の「後出し」や、閣僚や国会議員の未納未加入などの問題を抱えて成立した年金改革法。十分な審議もなく、何が事実なのかも納得できないまま、国民は負担増と給付減を押しつけられることになった。有権者には不安と不信が募るばかりだ。

 ●保険事務所、来訪増える

 松山市朝生田町1丁目の松山東社会保険事務所。国会議員の未納問題が明らかになって以来、事務所の駐車場はいつもいっぱいだ。

 「私の加入期間は大丈夫ですか?」という問い合わせや、「国民の金を無駄遣いするな!」といった苦情が相次ぎ、5月の来訪者数は昨年の5割増の1951人だった。愛媛社会保険事務局年金課の担当者は「不信感で年金から脱退する人が増えるのか、関心が高まって加入者が増えるか、まだわからない」。

 松山市内のある社会保険労務士は、年金制度への市民の関心が低いことにもどかしさを感じていた。

 相談に来た人のなかには、会社を退職したら自動的に国民年金に切り替えられると勘違いしている人も多かった。1週間、アルバイトをした主婦がその後、国民年金への切り替えを忘れ、そのまま2年を超えたため追納できなくなった例もあった。60歳に近づき受給資格の加入年数の25年に足りないことに気づき、あわてて相談に来る人もいた。「未納問題をきっかけに、老後を支える年金に関心が高まったことも事実」という。

 小泉首相は勤務実態がない会社で厚生年金に加入していた。国会答弁で、「人生いろいろ、社員もいろいろ」と開き直った。「違法だと知らないのだろうか?」とこの労務士は驚く。厚生年金は正社員の労働時間の4分の3以上の勤務実態がなければ加入できないからだ。未納が明らかになった閣僚や国会議員の多くは「気づかなかった」「制度が複雑だから」と言い訳した。

 「人口が減って高齢者は増えるのだから、痛みを分かち合うのは仕方ない。でもせめて、正確なデータをもとに、現行制度を理解したうえで議論してほしい」

 ●「『死ね』と言うもの」

 年金生活者の相談活動をしている松山市の山内淳正さん(74)は、自らも月10万5000円の厚生年金で暮らしている。

 かつて無料だった老人医療費は1割負担になり、介護保険料の負担も加わった。一方で、物価下落を理由に年金は減額された。だがもっと厳しいのは国民年金しかもらえない高齢者だという。40年間、満額かけつづけても月額6万6000円、平均は約4万6000円にすぎない。しかもわずかな年金から介護保険料などは容赦なく天引きされる。

 山内さんは2年前の冬、「近所に電気もストーブもつけず、震えてる人がいる」との相談を受けた。以前、駄菓子屋を営んでいた80歳前後の一人暮らしの女性だった。毎月の収入は約3万円の国民年金だけ。貯金を使い果たし灯油を買えず、電気も止められていた。

 山内さんは「今回の『改革』は負担額を増やして給付を減らし、ツメに火をともすようにして暮らす高齢者に『死ね』と言うようなもの。無年金者をなくすためにも最低保障年金の制度をつくってほしい」と話す。

 (07/07)


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