2004参院選
 
三位一体(改革の現場で 04参院選)

 「経済に明るい兆しが見えてきた。小泉改革が軌道に乗ってきた」

 6月30日の昼下がり。高知市の繁華街で、小泉首相は約2500人の聴衆を前に「改革」の実績を訴えた。

 首相は参院選高知選挙区の自民現職、森下博之氏=公明推薦=の応援でやってきた。だが、その前にマイクを握った森下氏は、首相に異議を唱えるかのように叫んだ。

 「三位一体の改革は、高知県に非常に厳しい。政府は少しは反省していると思う」

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 森下氏の頭には、この改革をめぐる県内の市町村長の怒りがあった。

 過疎化に悩む高知県内の市町村は今年度、軒並み財政危機に陥った。県は5月末、「このままでは県内市町村の9割が09年度までに財政破綻(はたん)する」との試算を発表した。

 四万十川が流れる中村市。子どもに人気の市営プールがこの夏、休業する。築30年で老朽化が激しく、約1億円かけて改修する計画を立てていた。それを凍結した。

 同市では、今年度当初予算で交付税と補助金が計約6億4000万円減ったのに、移譲された税源はその10分の1にすぎなかった。旧経済企画庁の調査局長だった沢田五十六市長は「小泉首相の人気が理解できない」と首をひねる。

 四国山地の山あいにある大川村の合田司郎村長は参院選の公示日、森下氏の出陣式への参加を断った。8期務めた村議時代を含め、初めて試みた自民党への「反抗」だ。

 村の年間予算は約10億円。収入の7割前後を交付税に頼ってきた。その交付税は今年度、約1億円減る見込みだ。職員3人に早期退職を促すなどして、なんとか予算を組んだ。

 合田村長はこう憤る。「市町村の痛みを知ってほしい。我々は、選挙の集票マシンというだけの存在ではない」

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 盤石のはずだった市町村長を通じた自民党の集票システムが、動揺している。無所属新顔の広田一氏=民主推薦=は、そのすきを突く。

 「地方の切り捨てを許さない。一緒に声を上げよう」。高知市で公示日の夜開いた個人演説会で、広田氏は呼びかけた。4月下旬には三位一体改革を批判する文書を全市町村長53人に郵送した。「強権的で地方軽視」「国の財政運営の失敗のツケを地方に回すものだ」

 共産新顔の中根佐知氏も「事実上、市町村合併を強制することになる」、無所属新顔の松岡由美子氏=社民推薦=も「国の赤字の押しつけだ」と、それぞれ批判する。

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 公示後初の日曜日となった27日。島根選挙区で4選を目指す自民党参院幹事長で現職の青木幹雄氏=公明推薦=の選挙カーは山間部の町村に向かった。全国遊説に飛び回る青木氏に代わってマイクを握ったのは、改革で痛めつけられているはずの町村長たちだった。

 故竹下登元首相の生地、掛合町の影山喜文町長は町内遊説の後、つぶやいた。「自民党が勝つと、地方切り捨ての流れが加速しないか悩ましい。でも、我々は青木先生に頼るしかない」

 別のある町長はこう語った。「町村はこれまで補助金に頼りすぎ、国や県、政治家ばかり見てきた。今後、いかに知恵を絞って生き残るか。三位一体改革で、それが試されている」

 民主新顔の神門至氏は「地方にもっと思い切った税源移譲を」と訴え、共産新顔の後藤勝彦氏は「青木氏は三位一体改革を推し進めた立場だ」と主張している。

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 11日投開票される参院選。3年前、「改革」を掲げて登場した小泉政権の実績が問われる。小泉改革は私たちの何を変え、それが選挙戦でどう論じられているのか。争点の現場を歩いた。

 <三位一体改革> 国から地方への補助金の削減、交付税の見直し、税源移譲を一体で進める税財政改革。地方分権を進め、国と地方の財政再建を図るねらい。1年目の04年度は全国の自治体に対して補助金約1兆円、交付税など約3兆円を削る一方、税源移譲は約6500億円にとどまり、「負担を押しつけるだけ」などと地方から不満が続出。これを受け、今年5月に閣議決定された「骨太の方針・第4弾」では、06年度までに3兆円規模の税源を移譲する方針が盛り込まれた。

 (07/05)


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