2004参院選
 
武装した人道支援 NGO、戸惑い <争点の現場から>

 「戦争をしに行くのでない。国際貢献、人道支援だ」として、政府は武装した自衛隊をイラクに派遣した。だが、片手に銃を持ちながらの「人道支援」には、国際的な援助活動をしてきたNGO関係者らから戸惑いの声が上がっている。

 松山市に事務局がある「岩村昇博士協力会」。ネパールで医療活動を続けてきた宇和島市出身の岩村昇博士の志を受け継ごう、と80年に発足した。ネパール中南部のチトワン地方に若者を派遣し、植樹やトイレ建設などを手がけている。

 日本の若者が植林した村では今、現地の青年たちが畑の畝に苗木を植え、牛に食べられないように柵(さく)をつくっている。ここで育てた苗木を植えた林が周辺に点々と生まれつつある。

 同会が活動を始めた20年前、人口の急増で森の大半が伐採されていた。このため、洪水がたびたび村を襲った。当時、首都カトマンズからチトワンへの約200キロの道中は緑がまばらだった。

 ネパールには植林の習慣がない。会のメンバーたちは、最初に村人と村を歩いて地図を作り、いま何をするべきかを話し合った。植林した山と、しない山でどのような違いが出るかを理解してもらうため、ネパール語の紙芝居も作った。そのうちに、1人2人と住民が植樹に加わるようになった。

 同会事務局の篠浦千史牧師は「大切なのは、木を何本植えたかではなく、村人にそれが伝わり、根付いたかどうかです」と言う。信頼し合うには、長い時間をかけるしかないと考えるからだ。

 イラク南部のサマワでは、武装した自衛隊が医療支援や給水事業をしている。その一方で、武器を持たずに人道支援に携わる高遠菜穂子さんらは一時拘束された。「確かにイラクで丸腰で援助活動ができるかどうか、わからない。でも武器を持っていて、信頼を得ることができるだろうか」。篠浦さんは疑問を募らせている。

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 愛媛大法文学部の栗田英幸助教授(国際開発論)は、政府の途上国援助(ODA)などによる途上国の大規模プロジェクトについて、フィールドワークによる研究をしている。フィリピンのダム建設や火力発電所建設の現場では、住民の意思を十分につかむことができず、本来利益を受けるはずの住民がODAによってかえって貧困な状況に陥った例を見てきた。

 栗田助教授は、米国を中心としたイラクの復興支援の対象が石油産業中心になっていることが問題だという。利益の分配が不公平で、貧富の格差を作り出してきた社会構造を固定化しかねないと考えるからだ。「社会的弱者の立場を代弁できるNGOと連携したうえで、現地の住民と幅広く議論し、援助のあり方を考えるべきだ」と話す。

 (07/09)


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