2004参院選
 
年金説明、訴えの「要」 責任追及強める野党

 「ここで説明に1時間かけても皆さん飽きてしまう。分かろうったって分かりませんよ」――。27日の静岡県三島市での街頭演説で、小泉首相は年金改革について、こう述べた。年金制度の複雑さに加え、様々な重要情報の「後出し」問題がのしかかる与党に対し、年金を参院選の要とみる野党は説明責任の追及を強める。7割に達する年金改革法への有権者の反対姿勢は、選挙戦を通じてどう変化するのか。

 厚生労働省が作った年金制度改革の広報パンフレットに、最近2枚の追加資料が挟み込まれた。

 「モデル世帯の年金水準は現役世代の50%を上回る」という説明には、「年金をもらい始めた年以降の給付水準は下がっていきます」と追加された。国民年金保険料を月額1万6900円で固定するとの説明には、「賃金の上昇に応じて変化します」と加わった。

 いずれも国会審議や報道が端緒になり、政府が当初の説明を「後出し」で修正したものだ。

 年金改革法の審議過程で、坂口厚労相は給付水準低下を「新聞で初めて知った」と答え、小泉首相は、年金給付抑制の仕組み「マクロ経済スライド」の内容を問われ、「専門家ではない」とかわし続けた。重要な前提である出生率の低下も、公表は改革法成立後だ。

 年金法案の作成にかかわった有力与党議員は「厚生労働省から給付水準の低下の説明はなかった。詰めなかったのは政治の手抜かりだったかもしれない」と漏らす。

 重要情報をきちんと把握せず、年金制度の内容も十分に理解しないまま、官僚が準備した答弁を繰り返す姿は、国民への説明責任を果たさない政治を浮き彫りにした。

●関心まだ薄く

 参院選公示直前の20日、NTT、りそな銀行などのOBらが東京都内で初めて集まった。それぞれの企業年金の切り下げの動きに危機感を持つ人々だ。情報交換や互いの活動支援に加え、公的年金の水準切り下げにも、協力して反対することを約束した。

 りそな銀行OBの勝呂誠司さん(63)は、経営再建の一環で企業年金の減額計画が浮上した昨秋から、勉強会を続ける。仲間数人と「引き下げに反対する会」をつくり、約1万6000人の受給者に手紙で引き下げ拒否を訴える。「会社は都合の悪いことは言わない。自分たちで調べ、知ることが行動を起こす力になった。公的年金も同様の時期に来ているのではないか」と話す。

 朝日新聞社の世論調査では、5月時点で有権者の7割が年金改革法成立に反対し、その後の重要情報の後出しや強行採決に、批判的な意見が強まっている。社会学者の橋爪大三郎氏は「講演などでも、受給世代や自営業者、学生、主婦は、説明責任を含め年金問題に敏感だと感じる。ただ、最も影響を受けるはずの30歳〜40歳代の会社員は保険料の天引きのせいか、知識も関心もまだ薄いようだ」と話す。

●通じぬ「簡潔」

 「年金制度の一元化」を前面に押し出す民主党は27日、東京・銀座の歩行者天国で「あおぞら年金講座」を開いた。こうした座談会を、参院選期間中に各地で10回程度開く予定だ。年金制度に詳しい議員が同行し、専業主婦の年金問題など身近な疑問にも答える。

 「一方的に伝えるだけでは説明責任を果たせない。少人数でもきちんと分かってもらえれば口コミで広がる」と期待する。ある座談会に参加した男性(33)は「納得したとは言えないが、熱意は感じた」と話す。

 「(自民党が大敗した)89年の消費税選挙と同じ。入り口で『どういうことだ』と印象を持たれてしまっている……」

 24日の参院選公示直後から、自民党執行部には戸惑いが出ている。簡潔なフレーズで有権者を引きつける小泉流は、年金では通用しそうにない。

 自民党は年金改革を解説した「虎の巻」を候補者や所属議員に配布、「年金と多国籍軍参加の問題は、国民の皆さんにしっかり説明したい」(安倍晋三幹事長)と力を入れる。ただ、青木幹雄参院幹事長は27日のNHKの討論番組で、「与党が年金を説明するには時間がかかる。野党は非常に楽で『負担が増えました。給付は減りました』と言えば小学生でもわかる」と危機感を示した。

(06/28 12:03)


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