2004参院選

比例区得票分析


頼みの地方で自民退潮 比例区得票率



 参院選で不振だった自民党だが、目を引くのが地方あるいは町村部での退潮だ。01年参院選より得票率を減らした比例区は、沖縄県を除く46都道府県。27ある1人区での獲得議席は14にとどまり、伝統的に強いとされた地方で盛り返せなかった。03年総選挙比例区で民主党に8ポイント差をつけた町村での比例区得票率は、今回2ポイント差まで縮まった。これに対し、民主党は29都道府県の比例区で、得票率1位を記録。都市部だけでなく地方でも自民党に肩を並べる存在に成長した。

 「郡部で票が伸びなかった」(長崎・松谷蒼一郎候補)、「すべて私の不徳のいたすところ」(秋田・斉藤滋宣候補)。

 11日夜、東北や西日本の1人区のあちこちで、自民党現職から落選のため息が漏れた。自民党が地方でここまで落ち込むのは、1人区で3勝22敗という惨敗を喫した89年の宇野政権下での「消費税」選挙以来のことだ。

 中四国・九州地方は、01年の参院選で自民党が「小泉ブーム」の追い風もあって圧倒的な強さを見せた地域。比例区で4割以上の得票率を上げた県が17県中15県、改選19議席中17議席を占め、1人区では全勝した。

 しかし、今回は同地方で、比例区の得票率4割を超えた県は3県のみ。1人区15選挙区も9勝6敗に終わった。

 東北6県中4県でも、01年参院選の比例区では自民党が4割以上の得票率を上げ、1人区の改選4議席中3議席を獲得した。しかし、今回の比例区得票率は、最も高かった秋田県でも37%止まり。1人区は推薦候補を含めて1勝3敗という結果に終わった。

 東大法学部の蒲島郁夫教授は01年参院選での自民党大勝の原因について「基盤のある農村部は党の力で、基盤のない都市部は小泉人気で票を稼ぐ戦術を採り、功を奏した」と分析。今回は「農村部は小泉改革に反発、都市部は自民党に押さえつけられる小泉首相に嫌気がさした。双方で、前回選挙と逆効果になった」と解説する。

 朝日新聞が11日に実施した投票者への出口調査によれば、宮崎選挙区で自民候補に投票した無党派層は25%、当選した無所属候補の67%を大きく下回った。同選挙区で自民候補に投票した自民支持層も62%に過ぎなかった。

 青森選挙区でも自民候補に投票した無党派層は22%にとどまったのに対し、民主党候補には59%が票を投じた。同選挙区で自民候補に投票した自民支持層は59%だった。

 全国的に見ても、03年総選挙比例区での都市規模別比例区の自民党と民主党の得票率は、町村で41%対33%だったが、今回の比例区では町村で37%対35%とほぼ拮抗(きっこう)した。

民主、満遍なく伸長

 一方、今回躍進した民主党は、従来強かった都市部だけでなく、都道府県別で満遍なく得票を伸ばした。比例区で自民党の得票率を10ポイント以上引き離した地域も13都道府県となり、前回のゼロ、前々回の1県を大きく上回った。

 なかでも自民党の不振と表裏の関係で、中四国・九州での健闘が目立つ。民主党は前々回、9都道府県の比例区で得票率1位を獲得したが、同地方ではゼロに終わった。さらに01年参院選では、島根、徳島、山口、熊本を除く13県の比例区で公明党の得票も下回った。

 民主党は03年9月、98年参院選比例区で9%、01年同8%を獲得した自由党と合併。さらに、岡田代表は最終盤の9、10両日に中四国・九州の1人区を遊説した。こうした積極策が奏功、同地区での獲得議席は、98年参院選の2、01年の1から5議席に大きく伸長。岡山、広島、山口、愛媛、福岡、長崎、大分、沖縄の計8県の比例区でも得票率1位を記録した。

 東北、西日本での躍進が民主党を全国的に押し上げ、27の1人区で9議席を獲得する原動力になった。

郵政・遺族会組織票伸びず

 地方での退潮とともに、自民党の不振を招いたのが、支持団体票の減少だ。大規模な組織を持つ自民党比例区の主な10候補のうち、当選者は7人。01年参院選の8人を下回った。10候補の総得票数も前回の78%にとどまった。「自民党をぶっ壊す」として「改革」を進める小泉政権と対立する団体の動きは鈍く、高齢化もあって、党を支えてきた足腰は徐々に弱ってきているようだ。

 10候補の総得票数は約178万票で、前回の約227万票を下回った。比例区全体の票に占める割合は11%だった。最高得票は、特定郵便局長OBらでつくる「大樹」の支援を受けた長谷川憲正氏の約28万票。しかし、組織に80年参院選で103万票を獲得した往時の勢いはない。前回比例区で当選した高祖憲治氏が選挙違反事件で辞職、「組織的違反行為」が指摘されたこともあり、前回の約48万から大きく票を減らした。首相が進める郵政改革では真っ向から対立している。

 首相に反発しているのは、当選した西島英利氏を支援した日本医師会の政治組織である日本医師連盟も同様だ。今年5月、医療制度改革を手がける首相は、植松治雄・日本医師会新会長の就任パーティーの席で「不満の皆さんがたくさんいることも十分承知している」と述べた。旧全国区時代に130万票の集票力を誇った医師連盟だが、今回の得票は約25万票。前回の約23万票をかろうじて上回った。

 軍人恩給受給者や遺族会など、組織の高齢化も、苦戦の原因になったと思われる。

◇     ◇     ◇

公明、強い組織 上位6位を独占

 比例区の選挙制度が01年の前回参院選から候補者名でも投票できる「非拘束名簿式」に変わり、候補者の組織力や知名度が大きく当選を左右するようになった。今回も宗教団体の支援を受けた人や芸能・スポーツ関係者ら著名人の集票ぶりが目立った。

 組織力を見せつけたのは創価学会が支持母体の公明だ。得票ランキングでは182万票を集めた1位の浜四津敏子氏から6位までを公明候補が独占した。また、10位の小林正夫氏など民主の上位当選者の多くは労働組合の支援を受けた。

 著名人では7位の竹中平蔵経済財政・金融相(自民)のほか、ノルディックスキー五輪金メダリストの荻原健司氏(同)、歌手の喜納昌吉氏(民主)らが当選を果たした。



(朝日新聞2004年7月12日夕刊紙面)


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