休憩を挟んだ学習が、長期的な記憶に有効
英単語を学習した中学生のテスト結果について、池谷教授は論文で「グループ間のテストスコアを見てみると、翌日には『15分×3(計45分)学習』グループが『60分学習』グループを抜き、1週間後にはさらに差が広がりました。この結果から、休憩時間を挟んだ『15分×3(計45分)学習』グループの方が長期的な記憶固定には有効である可能性があります」と記しています。
また、トータルの学習時間と点数が逆転した現象にも着目。「『15分×3(計45分)学習』グループは、『60分学習』グループよりも合計学習時間が短いにもかかわらず、効果が得られているのは興味深い」と述べています。
脳波計が示した、集中力の維持効果
実験では、学習している中学生の脳波の計測なども行われました。池谷教授によると「脳波は前頭葉のガンマ波が集中力に関与していると考えられます」とのことで、どれだけ集中力を維持しながら学習できているかを見る目安となるものです。
脳波計の測定データをグラフで示したのが、上の2つの図。「『60分学習』グループは時間の経過とともにガンマ帯域のパワーが低下しており、特に40分を境に急激な降下が観察されました。この事実は集中力が40分ほどしか持続しないことを表しているのかもしれません。一方で、『15分×3(計45分)学習』グループでは各ブロックで初期のガンマ波パワーの低下は観察されましたが、休憩によりパワーが回復し、学習時間全体として一定以上のレベルを維持していました」と、池谷教授は述べています。
今回の実験結果を受けて、池谷教授は「脳波を見る限り、集中力やガンマ波のパワー回復に差異が見られました。休憩を挟むことは集中力の維持に寄与し、より少ない学習時間にも関わらず長期的に見て高い学習効果を発揮する可能性が示唆されます」と総括。短時間の積み上げ学習がもたらす効果については、今後の検証でさまざまなことが明らかになるのが期待できそうです。