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06月25日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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第3部 3大学の学長によるパネルディスカッション

多文化恊働型のアジア人材育成への課題と挑戦

パネリスト
立命館大学 川口 清史(かわぐち・きよふみ) 学長
広東外語外貿大学 仲 偉合(チョン・ウェイフー) 学長
東西大学校 張 済国(チャン・ジェグク) 総長

コーディネーター/箱田 哲也(朝日新聞社論説委員・元ソウル支局長)
オブザーバー/姜 尚中氏

箱田 「キャンパスアジア・プログラム」で学生はどう成長したのでしょうか。

川口 中国の女子学生は、日本に来て夜行バスで東京へ行って東方神起のツアーを見てきたそうです。アジアの若者の共通の文化が生まれていると感じました。また、同じアジア人でも色々な違いがあることを発見してそれを克服しているようです。


広東外語外貿大学
仲 偉合(チョン・ウェイフー) 学長

 大学での勉強はもちろん、技能、技術の習得、能力の向上、人としての素質の底上げ、問題解決の技術や理解力も向上しました。

 ファッションや口調、考え方が誰がどの国の生徒かわからないくらい似通ってきています。異文化に対する理解の深まりや、話し合うという討論の文化の定着も感じます。

箱田 受け入れる側のご苦労や工夫、課題などを教えてください。

 学生に合ったカリキュラムの体系づくりが第一です。また企業研修など、社会での実践のチャンスの提供を心がけています。

 平和と安全、繁栄のために機会を極大化し、葛藤を最小化していくための教育に力をいれています。

川口 このプログラムはモビリティがポイントですが、移動費などのコスト面の課題があります。まず、学生が個人として向き合うという経験ができたのは、一番の成果です。

 国を行き来することで、自分たちの社会に対する距離感が生まれ、相対化できるのではないでしょうか。


立命館大学
川口 清史(かわぐち・きよふみ) 学長

箱田 これからの東アジアの展望をおうかがいします。

 韓国はさまざまな苦難の時期を経て、世界12位の強国に成長を遂げました。これは大きなチャンスです。中国もG2の国としての地位を得ています。日本はさまざまな分野でノウハウ、経験を蓄積した素晴らしい国です。機会要因は肯定的で明るいと思います。

川口 国民レベルでお互いを嫌悪や反目し、それに政治が反応しているのは深刻です。過去の日中韓の問題の根を我々が「認識」しなければ「寛容」は生まれてきません。そして大学、研究者、マスメディアが、社会のなかで国民的認識に広げていかなければなりません。学生諸君も学んできたことを発信して欲しいと思います。

 

 東アジアは力を合わせてウィンウィン関係を築いていくことが大切です。そのためには影響力を持つ人々が協力し合う。99年の首脳会談で3カ国の対話の体制が構築されました。対話し、理解し合う若者が増えれば、素晴らしい東アジアが現れると思います。

 日中韓で共通しているのは、不平等の拡大です。社会の中に矛盾が大きくなると、外側に転化される可能性がある。社会構造の変化にどう対応するか、未来のビジョンを構築することが大切です。

箱田 これからの若者への期待を語ってください。


東西大学校
張 済国(チャン・ジェグク) 総長

川口 グローバル化の中で自分の依って立つところが揺らいできていると思います。若者は学ぶことで思想や価値観などの基盤を作ることが大切です。そうすればグローバル化は怖くないと思います。
 恐れずに体験することで自分を高めていけます。キャンパスアジアに参加された方は、勇気を出したからこそ成長があったと思います。その勇気をすべての若い人に出してほしいです。未来の発展は若者たちの努力にかかっています。

 お互いを理解し合い、平和な世界を築く役割りを果たしていただきたい。また、正しい判断力・責任感を持つことが大事です。

 キャンパスアジアに参加している皆さんが、肯定的な記憶を作っていくほど未来は明るくなります。国境を越え、真の意味での北東アジア人、世界人として、世界で活躍して欲しいと思います。

 地域とは時代とともに人が意味を見出して作っていく概念です。自分たちが「東アジア」を意識して作らなければ、住処(すみか)にできる場所にはなりません。若者にはそれを心がけながら頑張っていっていただきたいし、大人も負の遺産を残さないようにしていきたいと思っています。

質疑応答(会場からの質問)

箱田 どうして人文学の分野が選ばれたのですか。

川口 姜先生の話の中にもありましたが、言語や文化、人間そのものにまでいかないと本当の意味での東北アジアの一致した人間像が出てきません。そういうことだと認識しています。

箱田 キャンパスアジア・プログラムを通じて歴史認識の違いを学び、どうしたら共通認識に近づくことができますか。

 私たちは、それぞれの国の教科書で歴史を勉強しており、その内容が自分たちの頭脳を支配しています。キャンパスアジアの学生は3カ国の歴史の先生が、どのような歴史の教え方をしているかを、その国に行って勉強をして、比較、判断することで、相手の国への理解を深める努力をしています。

箱田 東京一極集中が進むなか。キャンパスアジア・プログラムが京都・広州・釜山という地方都市の大学で行われる意義について教えてください。

 3つの大学は、国の重要な位置を占めている都会にあります。学生は国を代表する都市に触れ、その国をより知ることができます。しかし、日本に来たら東京に行き、中国では北京へ、韓国ではソウルに行く機会を作ることはできます。

箱田 今日のフォーラムを韓国や中国で行うとどうでしょうか。

 成功すると思っています。ソウル、北京、東京ではなく釜山、広州、京都、大阪の地域で新しい日中韓の3カ国の関係を作っていきたい。未来のためのさまざまな提言をする発信地としてこれらの都市は重要だと思います。

 機会があれば広州でも行いたいと思います。きっと成功すると思います。

箱田 このプロジェクトを継続させる意志はありますか。

川口 フォーラムに先立ち、3大学の学長が継続に合意し、署名をしました。どうぞご期待ください。

川口 清史(かわぐち・きよふみ)
立命館大学 学長
京都大学大学院経済学研究科博士課程修了、博士(経済学)。立命館大学の教学部長、政策科学部長などを経て2007年より立命館大学長。日本私立大学連盟常務理事などを務める。

仲 偉合(チョン・ウェイフー)
広東外語外貿大学 学長
学長であり、教授、博士課程指導教官を務める。中国翻訳協会副会長、広東省社会管理研究会会長などの職務を兼任。主な研究テーマは通訳理論と通訳教学研究、翻訳学研究など。

張 済国(チャン・ジェグク)
東西大学校  総長
米国弁護士や韓日フォーラム運営委員、韓国外交部政策諮問委員などさまざまな分野に携わる。第11回日韓文化交流基金賞(日本)、国家漢弁孔子アカデミー先進個人賞(中国)などを受賞。