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※研究科の名称、教員の肩書等は取材当時のものです

立教大学大学院人工知能科学研究科
文理融合でAIとデータサイエンスを学ぶ、日本初の人工知能に特化した大学院

立教大学大学院人工知能科学研究科開設準備室室長
理学部物理学科 内山 泰伸教授

ビッグデータの解析やクルマの自動運転、IoTなど、社会が急速にスマート化してきた。その中核をなすのがAI(人工知能)であり、すでに様々な分野で応用されている。立教大学では、このAIに特化した日本初の大学院「人工知能科学研究科」を2020年4月に開設。文理融合で社会人を積極的に受け入れ、知識や理論だけでなく、様々な社会的課題を解決するための実践的なスキルを育成するという。「AIはここ7〜8年で飛躍的に発展した分野。だからキャッチアップも他分野に比べて容易であり、アイデア次第で世界のトップに踊り出ることも不可能ではありません。それにふさわしい熱意と本気で学ぶ覚悟を持つ社会人を歓迎します」と開設準備室の内山泰伸室長(理学部物理学科教授)は語る。

まったく新しい分野なので、大学院の2年間を基礎として最先端で活躍することも可能

 高速大量のデータ処理が可能になるとともに、各種のソフトウェア技術も急速に高度化。情報ネットワークが隅々まで浸透した私たちの社会は、新たな段階に突入している。それがAIとデータサイエンスをエンジンとする超スマート社会だ。AIが人間の仕事を奪う、あるいは人間の能力を上回るシンギュラリティ(技術的特異点)など、畏怖を伴ったSF的な話題は少なくないが、意外にもAIに特化して学べる大学院はこれまでなかった。この分野で日本初となる立教大学大学院人工知能科学研究科の内山泰伸室長は、その経緯などについて、次のように語る。

「人間の神経ネットワークにヒントを得たディープラーニング(深層学習)の開花や、それに必要なビッグデータを収集・分析する仕組みなど、複数の条件が相乗することで、AIはここ7〜8年で急速に発展してきました。AIに特化した大学院は、本来的には国立大学や工業系大学にあってもおかしくないのに、総合大学とはいえ文系学部が多い立教が2020年4月に先陣を切ることになったことが、新しい分野であることを象徴していると思います。世界的にも2019年にアメリカのMITが開設したカレッジが類似している程度。それだけに、他の理工系分野とは違って、積み上げの部分がかなり浅い。逆に言えば、文系出身の社会人でも、本研究科での2年間の学習で、専門家として各分野の最先端で活躍することも可能なのです」

 当然のことながら、AIの専門家もニーズに比べて圧倒的に稀少であり、大学でこの分野を専門的に研究している理工系の学生も少ない。このため、自分が属している産業へのAI導入はもちろん、異分野から専門家としての新規参入などを考えている人にも絶好のタイミングという。

「しかも、この分野は技術もさることながら、どんなコンテンツを持っているのか、どんな種類のデータが揃っているかが問われます。AIに関してどんなニーズを捉えているのか、あるいは何がやりたいのかとも言い換えられるでしょう。高度な技術スキルがあっても、具体的な応用先がなければ活用も発展もできないので、エンジニアに比べて文系社会人はそこに強みがあると思います。ただし、着眼点や発想だけでも駄目で、今のディープラーニングにはどんな技術があるのか、何ができて何ができないのか、そうしたテクノロジーサイドの判断も不可欠。本研究科は文理融合として、基礎的なAIとデータサイエンスを身に付けた上で、それぞれの専門分野の垣根を越えた交流を促進しながら、お互いの補完やイノベーションを刺激する場にしたい。出身分野を問わず、社会人も学生も一緒になって取り組んでもらうつもりです」(内山室長、以下同)

入試のハードルは高いが、72名の合格者の3分の2が社会人

 AIはこれからどんな未来が到来するか想像もつかないハイエンドな分野だけに、文系社会人の興味を喚起する意見だが、すでに実施された同研究科の入試はハードルがかなり高く設定されている。書類審査にしても、研究計画書ほどではないが、入学後にどんなことをやりたいかを具体的に説明した研究プランが必要。たとえば「法律のチャットボット(自動応答ロボット)」や「監査のAI化」といった説得力のある研究テーマを提出しなければならない。
 また、一般的な社会人特別選抜ではほとんど課されない筆記試験も実施。しかも、数学、統計学、プログラミング、英語の基礎的教養と、未知の問題を解決する応用力が問われる。書類審査と筆記試験をクリアすれば面接に進めるが、これもまた、前述した研究プランをパワーポイントで10分間のプレゼンテーションをすることになっており、生半可な意識や準備では合格できない。

「2019年に実施した第1期生入試では、受験者は153名でした。告知期間や手段が十分とはいえませんでしたが、入試のハードルを低くすれば、もっと受験者は増えたはず。しかしながら、入学後に2年間でこの分野を完全に習得するのは、生やさしいことではありません。文理融合の研究科として、文系出身の社会人も積極的に迎え入れる方針ですが、ある程度の数学力や、統計学、プログラミングの基礎的な知識やスキルは必要。それらのことを入試段階でしっかりメッセージとしてお伝えすることが大切だと考えたのです。そのため、文系ウェルカムと言っているにもかかわらず、ハードルが高めになってしまいました。それによって敬遠されたら元も子もなくなるのですが、幸いに定員の2倍以上が受験。72名を合格としました。うち社会人は3分の2を占めています。仕事と並行してAIを学ぶのは実際問題として大変であり、全員が2年間をきっちり学びきれるとは限りません。通学さえすればほぼ自動的に修了できるのでなく、脱落も十分にあり得る。そのかわりに、いくらか多めに合格を出させていただいた」

 その社会人の中でも、文系学部出身者は約6割にも達するという。にもかかわらず、統計学や確率の正答率が高いので、大学卒業後に理系の分野に従事または独自に勉強していた人が多いようだ。ディープラーニングなどを独学していた人も少なくなかったという。ハードルを上げたことで、優秀な社会人の意欲を刺激したといえるかもしれない。

「年齢的には20代から50代までかなりの広がりがあります。社会人のボリュームゾーンはやはり30代で、つぎに多いのが40代で20代がそれに続きます。50代も20代の半分くらいで、ある程度まとまっています。40〜50代層では各業界の管理職、経営層、ベンチャー企業の社長や、さまざまな士業の方なども目立ちます。おそらく各業界でAI活用の意思決定をする人たちが、自らダイレクトに大学院を目指したのではないでしょうか。皆さん意欲的ですよ」

人工知能は技術であり哲学。リベラルアーツとの結びつきが立教の特長

 人工知能科学研究科は、AIそのものであるソフトウェアを学ぶ「機械学習・ディープラーニング(深層学習)」を中心に、「自然科学×AI」「社会科学×AI」、そして「社会実装」と「AI ELSI」(AI に関する倫理的、法的、社会的諸問題)という5つの領域を設定。各領域に関係する科目が、基幹科目と基礎科目、応用科目に演習・実習科目、それに研究指導科目に分かれている。

「最初の1年は基礎的な学びで、2年目も科目数は減少しますが続きます。入学者の出身学部は様々であり、それぞれの立場でリスタートして新分野を学ぶことになるので、基礎知識をカットするわけにはいきません。かといって、それだけで終われば学部と同じなので、研究プロジェクトも並行して進めます。学習と並行して研究も行うことになるわけです。仕事と並行するのは確かに大変ですが、それを考慮してリミットを設けるのはむしろ熱意ある社会人に失礼だと考えて、必要な科目はすべて揃えてあります。それでも、平日の夜間は週に2〜3日の通学、土曜日に集中して取り組めば修了できるカリキュラムになっているので、安心してください」

 人工知能科学研究科の教員数は9名だが、新しい分野だけに、外部から招へいした教員が7名を占める。分野は異なるが、AIやデータサイエンス分野などの第一線で高く評価されている専門家ばかりだ。

「日本で初めてAIにフォーカスした大学院ということで賛同を得やすかったですね。たとえば、三宅陽一郎さんはデジタルゲームの世界でAIを開発してきた第一人者。人工知能学会でも有名で、ゲームというカテゴリーに留まらない人です。社会実装に関しては、AIカメラを開発した松下伸行さん。ハード開発だけでなく、AIをマーケティングや販促に利用するためのノウハウをお持ちです。
 AIはコンピュータ技術という狭い範囲だけでなく、哲学にも直結します。知能とは何かがAIの主題なので、哲学や倫理も重要な課題になってくるのです。この分野は本学の村上祐子教授が『人工知能と倫理』という必修科目で担当します。人文的な要素が強い内容になりますが、それこそがリベラルアーツの立教大学らしい特長と言えます」

「富の独占は認識しやすく、その再分配も理解しやすい概念です。ところが、データやAIのアルゴリズムの独占は、分かりにくいだけでなく、既存の法律などの枠組みを超えています。GAFAのように超国家的になることも十分に考えられます。まだ正解が見えない新分野ですが、平和に資するAI人材、フェアな民主社会の実現を加速するAI人材などを輩出すれば、独占的なパワーの暴走を自然に抑制できるのではないでしょうか。いずれにしても、人材ニーズは極めて高い分野。データは大量にあっても使いこなせる人材が少ない。そんな環境ですから、この研究科で鍛えられた人材は引く手あまたになるでしょうね」

 最後に、どんな社会人に入学して欲しいかを聞いた。 「漠然とAIをやってみたいという、ふわりとした意欲で入学するとヤケドします。入試で重要視しているのは、学びの覚悟はもちろん、その動機となるAIやデータサイエンスで解決したい具体的な課題です。その上で、たとえば統計学は、今の高校生が勉強している内容くらいは理解しておいてほしい。逆にいえば、その程度で大丈夫ですから、それほど身構えることなく、多様多彩な分野の社会人に本研究科を目指して欲しいですね」

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