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静岡文化芸術大学大学院文化政策研究科
芸術振興とアートマネジメントを担う高度人材を養成

静岡文化芸術大学
片山泰輔 研究科長

 「クールジャパン」という言葉があるように、文化芸術は日本の新たな産業として重要性を高めている。文化庁でも2020年に日本が世界のハブになる「文化芸術立国中期プラン」を発表しているが、その効果的なマネジメントなどを実行できる専門人材は数少ない。静岡文化芸術大学は、日本初の文化政策学部を持つ大学として2000年に発足。04年には大学院文化政策研究科を設置し、文化政策やアートマネジメントの専門家養成を行ってきた先駆けである。「まだまだ新しい分野であり、未知の領域も少なくないので、活躍できる余地は多彩かつ広大ですよ」と片山泰輔研究科長は語る。

「楽器のまち」浜松に立地する文化政策の専門大学院

 静岡県浜松市はヤマハの本拠地であり、「楽器のまち」として知られている。2000年に誕生した静岡文化芸術大学は、この立地特性から日本では初の文化政策学部を開設。デザイン学部と併せて、新しい価値や文化を創造する知性と感性を育成してきた。1期生が卒業する04年には大学院が発足。さらに07年には日本文化政策学会を立ち上げて事務局を置くなど、この分野の先駆けとして活動してきた。10年からは静岡県立として公立大学法人に移管されている。

 また、アメリカ合衆国に本部を持つAAAE(芸術経営教育者協会Association of Arts Administration Educators)の日本で初めての正会員でもある。
「この日本文化政策学会における大学院生の大学別発表件数では、07年〜10年の第4回までは東京大学が第1位でしたが、11年の第5回から14年の第8回までの合計では本学がトップとなりました。研究者養成ではなく、自治体や公益法人などで活躍する実務家の養成を目的とした大学院ですが、学会での発表は高度な研究内容を証明する重要な指標なので、この結果は評価されていいのではないかと思います。ここでの発表で顔を覚えてもらい、人脈や修了後の職務に結びついてくこともありますからね。それまでは受け身だった学生も、学会での発表を経験すると意欲が変わってきます。そうした観点から、大学院は社会人も対象としていますが、修士論文を必修としており、指導にも力を入れています」(片山泰輔研究科長、以下同)

 授業は昼間しかないため、仕事と並行して通学することは容易ではないが、自治体などからの派遣学生もいる一方で、自主的に入学した社会人学生も少なくない。
「現役のオーケストラ指揮者から、大手企業を退職後に文化芸術で社会貢献をしたいという人まで、実に様々な人たちが全国から入学してきます。そうした社会人が約3割。4割が学部からの進学で、残り3割が海外からの留学生です。社会人の場合は会社や組織からの派遣でなければ退職することが多く、戻るところを失いますが、それだけに意欲や目的意識は強いですね。このため文化政策関連業務へのキャリアチェンジは多数の実績があり、真剣に研究さえすれば道は必ず開けてきます。そのためのアピール材料として、優秀な修士論文が必要となるのです。一方、在職のまま学ぼうとする学生のためには、パートタイムの通学で、3年間をかけて修了できる長期履修制度も用意しています」

4つの専門領域を3つの段階で構成

 同研究科には以下の4つの専門研究領域が設定されており、その1つを自分の軸足として選択した上で、これらを越える領域横断的、学際的なアプローチによって実践的な研究を行う。

●アートマネジメント
楽団、劇団、美術館など非営利の民間芸術団体の経営や公立文化施設の運営などに関する研究を行う。
●芸術・文化産業政策
民間非営利団体の支援政策、営利の文化産業を含む創造的産業の振興政策などに関する研究を行う。
●まちづくり自治体政策
まちづくりと地域活性化、コミュニティ政策、自治体改革、行政評価などに関する研究を行う。
●市民社会と多文化共生
多文化共生とまちづくり、コミュニティ運営(NPO、市民活動など)、国際協力NGOなどに関する研究を行う。

 カリキュラムは、最終的な修士論文作成に向けて、以下の3段階で構成されている。

1)基礎科目
方法論を学び、修士論文の構想づくりを進めるための「文化政策研究の方法」と、4つの研究専門領域における現場感覚を養う「文化政策特論」で構成。
2)基幹科目
各分野の概論的な知識を習得する「特講科目」と、各教員の研究分野に即した専門的な内容を学ぶ「専門科目」で構成。
3)演習科目
演習Ⅰ(M1)と演習Ⅱ(M2)で構成。この演習は異なる教員による2つの演習が必修。修士論文に向けた本格的な指導が始まり、3回にわたって行われる研究科全体の発表を経て完成させていく。

 「文化政策特論が本研究科の特長的な科目です。4つの専門研究領域の現場で活躍する人たちの話を直接に聞くという授業で、各分野2人ずつ年間で8人をお呼びしてきました。学生は聴講するだけでなく、その分野を事前に問題意識を持って調べた上で、講演後はディスカッションを行い、より深めていくことになっています。アートや文化政策などの現場における課題や問題などに触れられる大変に有益な授業だと思います。

 演習Ⅰ・Ⅱは2013年からスタートしたカリキュラムで、主指導と副指導の教員の演習を履修することで、同じテーマを違う分野・角度から研究します。たとえばパブリックアートを行政・政策的に考える。そしてアートそのものとしても考える。このような多角的な視点をそれぞれの専門教員が指導します。それによる複眼的な研究を修士論文として結実させることになるわけです」

地域の文化や芸術を担うプロフェッショナルを育成

 参考として、これまでの修士論文のテーマを以下にピックアップしてみた。

●小学校における芸術を通じたコミュニケーション教育の推進方策 ―アーティストによる「共感」の視点を持ったプログラムに焦点を当てて―
●パブリックアートの設置プロセスにおける市民参加のあり方―日本の多様な事例の分析から導かれた台湾への示唆―
●浜松における音楽を通じた多文化共生教育のあり方―外国人支援教育を越えて―
●アートNPOにおける組織ミッション広報に対する支援―経営基盤確立に向けて―
●若手アートマネジメント人材における人的資本の形成―職場環境と能力開発に関する実体調査から―
●インターネット普及による音楽視聴の変化と著作権
●美術館と小学校の連携推進のための課題―鑑賞教育に取り組む教員の資質向上の視点から―
●台湾・日本における舞台芸術運営の支援政策―助成金の比較分析から―
●市民ボランティアを通じたまちづくり―あいちトリエンナーレ2010の事例から―
●台湾の公立文化ホールにおける市民ボランティアの高度化―日本の先進事例との比較をもとに―

 「地域の文化や芸術を担うプロフェッショナルを育成するのが本研究科の基本的な目的。しかし、こうした専門職の認知はまだまだ低く、その必要性に対する理解はもちろん、処遇も定まっていないのが現状です。けれども、これを逆に考えれば、まだまだやるべきことは豊富に残っており、活躍できる余地も広大にあるということです。文化で世の中を少しでも良くしたいと考える人、人々を幸福にしたいと考える人に入学してほしいですね」