広告特集 企画・制作 朝日新聞社メディアビジネス局

大学・大学院 OB・OG訪問> backnumber

仕事と子育てをしながら大学院に通学。
「クリエイティブ就活ラボ」を主宰して、自らテレビ局に転職。
青山学院大学大学院総合文化政策学研究科文化創造マネジメント専攻2012年修了 國井 真実さん

 女性が家事や育児をしながら働くだけでも大変だが、さらに大学院に通学して、みごとに2年で修了したのが青山学院大学大学院OGの國井真実さんだ。テレビ業界での経験を学問的に振り返るために同大学院総合文化政策学研究科に入学。「念願だったテレビ局の正社員になることもできました。毎日時間が足りなくて、とてもハードでしたが、大学院でのすべての経験が大きな財産になりました」と話す。

1968年神奈川県生まれ。高校卒業後、青山学院大学経済学部に入学したが、テレビ番組制作会社に就職したため退学。その後、フジテレビの契約社員を経て、テレビ制作会社の経営者兼フリー・ディレクターになる。94年に同大学英米文学部(2部)に入学して、99年に卒業。2010年青山学院大学院総合文化政策学研究科入学、2012年修了。2011年秋にBS日テレに入局して、現在は編成局制作部チーフ・プロデューサーを務める。

——入学動機を教えてください。

学生の頃から「テレビドラマをつくる人になりたい」と強い憧れを抱いていました。ですから、青山学院大学経済学部在学中にテレビ番組の制作会社を受けて、大学は退学しました。ですが、クライアントであるテレビ局の方々はみんな大卒者ですから、仕事をする中でしだいに学歴コンプレックスを感じるようになったのです。また、テレビ局の経験者採用試験を受けようとも思いましたが、学歴要件が「大卒以上」であることがほとんどなので、まずはこれをクリアしようと青山学院大学英米文学部(2部)に入学しました。

 何とか卒業したものの、すぐに転職できるわけはなく、フリーのディレクターとしてドキュメンタリー番組などを担当するようになりました。ある時、仕事を通して青山学院大学のキャンパスにテレビ番組用のスタジオができる、それをNHKがサテライトスタジオとして使用すると聞いて見学に。そこで、大学でスタジオを主に使うのは2008年に新設されたばかりの総合文化政策学部と同研究科と聞き、さらに研究科では社会人入試も実施していると知ったのです。

 その少し前に、ご自身も社会人になってから大学院に入学した内館牧子さんの『養老院より大学院』を読んでいたのですが、私も大学院に進み、テレビ業界での経験を学問的に整理しようと考えました。

——特に役に立った科目や、興味深いと感じた科目は何ですか?

現在の仕事に直接的に役に立っているのは「統計学」です。ここで得たスキルを元に、テレビには欠かせない視聴率などを計算することができるようになったからです。ご承知のように視聴率は「10%」などという数字で発表されますが、テレビ局にはその大もとになるローデータも届くので、そこから様々な数値を計算できるのです。

 日比野克彦先生が担当していた「現代アート論」も印象に残っていますね。日比野先生は著名なアーティストですが、母校である東京芸術大学の教授も務めていて、その東京芸術大学と多摩美術大学と青山学院大学との3大学合同で行う「新潟演劇合宿」を夏季集中講座として実施。3泊4日で、50人ぐらいの学生が参加して、出演者や演出、舞台装置の製作、イベント全体の運営などそれぞれ役割を分担しました。最終日に新潟の方々に演劇を披露するのですが、ふだんの仕事とは違って、損得抜きで共同作業をするのがとても新鮮で楽しかったですね。

修了式後の記念写真。2008年に新設された同研究科の3期生にあたり、様々なバックグランドを持つ意欲的な社会人が集まった。

——仕事と子育てと学業をうまくこなす秘訣はなんでしょうか?

 大学院に在籍していた時は、テレビ番組制作会社の経営者兼フリーのディレクターでしたので、時間は自由にできました。とはいえ、子どもが3人おり、特に一番下の子はまだ2歳でしたので、子育てとのバランスが大変でしたね。

 そこに大学院での勉強が加わったのですから、1日中フル回転でした。朝6時半に起床して朝食を作り、子どもに食べさせて、保育園と小学校に送り出し、自分も昼間の授業に出席。夕方いったん帰宅して夕飯を作り、帰宅した長男に下の子の面倒を頼んで、夜間の授業のために大学へ。夫の帰宅が7時頃と比較的早かったので、放課後も大学院生室に深夜まで残って翌日の授業の準備などをしていました。 やるべきことは山ほどありましたが、1番は育児、2番は仕事、3番が勉強という優先順位を付けて割り切ることにしました。

 ちなみに、仕事は大学院の夏休みや春休みなどに長期ロケを行うなど、スケジュールを工夫して取り組みました。

同級生との大学院修了旅行のひとコマ。「今も年1回は食事会を楽しむなど、交流が続いています」(國井さん)

——大学院での収穫は何でしょうか?

 総合文化政策学研究科の授業は平日夜間と土曜日ですが、私はいくつか昼間の授業も履修していました。特に英語力を磨こうと思っていて、授業のほかに留学生が行う英会話レッスンにも参加。仕事でイギリスやアメリカの番組の買い付けを行うこともあり、その交渉も英語ですから、大学院時代の勉強がここでも役立っています。

 何より一番の収穫はテレビ局の正社員になれたことですね。この研究科ではゼミとは別に「ラボ」という演習科目があり、私は井口典夫教授にご協力いただき「クリエイティブ就活ラボ」を開設したのです。その活動として、マスコミ就職を志望する学部生や大学院生に向けた業界研究会を行ったり、出版社や広告代理店などに勤務している社会人の体験談を聞くイベントなどを行いましたが、これらを通して自分にも「テレビ局の正社員になりたい」という長年の夢があったことを思い出したのです。

 ちょうどそんな時に夫がBS日テレ(株式会社BS日本)で正社員を募集しているという情報を得て、私に教えてくれました。ダメもとで採用試験を受けたところ、なんと合格。驚きましたが、これまでのキャリアだけでなく、大学院の授業や活動を通して自信を持てるようになったことや、実力を客観的にアピールできたことが大きかったのだと思います。

——これから大学院を目指す社会人へメッセージをお願いします。

 私にとって大学院での経験に何一つ無駄はありませんでした。勉強や研究は大変でしたし、限界も感じましたが、精いっぱい準備して臨んだプレゼンテーションで高い評価を得るなど、自分の力を信じることができるようになりました。

 仕事と学業との両立は苦労もありますが、努力すればすべてがプラスになります。それを信じてチャレンジしてほしいと思いますね。

國井真実さんの1週間のスケジュール(修士1年:2010年の場合)

9:00-10:30
1限
家事・育児など 家事・育児など 家事・育児など 家事・育児など 家事・育児など 家事・育児など 家事・育児、仕事
11:00-12:30
2限
仕事 国際比較文化論 プロジェクト演習 仕事 社会統計学
13:20-14:50
3限
大学院生室で勉強 仕事 大学院生室で勉強 情報システム論
15:05-16:35
4限
メディアデザイン論
16:50-18:20
5限
社会調査論Ⅰ 統計学 メディアリテラシー 社会調査論Ⅱ 社会家事・育児など
18:30-20:00
6限
大学院生室で勉強 クリエイティブ経済論 創造都市論 社会調査演習 大学院生室で勉強
20:10-21:40
7限
ブランド戦略 大学院生室で勉強 映像メディア特論 大学院生室で勉強

※黄色が授業。