文豪が愛したホンモノの宿 vol.1

新井旅館

日本画家が育てた名建築に宿泊する。

 クルマを敷地内に滑り込ませると、外に出て我々を出迎える女将の姿が見えた。『新井旅館』の玄関は引き戸だ。引き戸の大きなガラスに、新型BMW 7シリーズの、頼もしくも優美なシルエットが映る。
『新井旅館』は数多くの文人に愛された宿だ。尾崎紅葉はここで「金色夜叉」を執筆し、泉鏡花は「斧琴菊」と「奥の院にて」を『新井旅館』内外をモデルにして書いた。川端康成は「伊豆温泉記」で『新井旅館』の温泉を描いている。

 広い敷地内には、大きな池が配され、趣向を凝らした大小の棟が点在する。近くを流れる川を引き込んだという清流をまたぐように、棟と棟が橋で結ばれる。大正5年に建てられた、池の上に建つ「桐の棟」をはじめ、15棟が国の登録有形文化財になっている。

 長期滞在した芥川龍之介の指定は「月の棟」。池の鯉が泳ぐ様子の見える貸切風呂も大層お気に入りだったのだそうだ。奥様と叔母の富貴さんに宛てた手紙の中に、「ここのお湯はこう言う風になってゐて水族館みたいだ。これだけでも一見の価値あり」と、図解入りで紹介している。二年前にリニューアルされているが、風呂嫌いだった龍之介がお薦めした風呂にぜひ体を沈めたい。

 天平建築を昭和9年に再現した「天平大浴堂」も、池の鯉が泳ぐ姿を見ることができるユニークな風呂だ。台湾から運んだ檜の柱が林立し、まるで寺のお堂にいるような気分になる空間だ。デザインしたのは日本画家の安田靫彦。安田靫彦も『新井旅館』とは縁が深い。この宿のおもしろさは、横山大観をはじめとする、画家たちとの関わりで深くなっていった。

 なぜ多くの画家が『新井旅館』を好んだかといえば、三代目・相原寛太郎が日本画家を目指していたこともあり、広く画家たちと交流があったことが大きい。人望が厚く、三代目に会うために宿を訪れる文人墨客も多かったのだそうだ。

 大正から昭和にかけて建てられた建築物には、先の「天平大浴堂」をはじめ、画家たちの手によるものも多い。藤原時代の聖観音像が安置されている「観音堂」も安田靫彦の監修。「山陽荘」は横山大観専用の居室兼アトリエだ。「渡りの橋」には、なんと遠近法が使われている。画家ならではの発想だ。高低差を感じさせないように、手摺りの高さを変えているのだ。
『新井旅館』では、文人や画家たちの滞在時のエピソードを交えながら建物を見て回る、文化財ガイドツアーが用意されている。初めての宿泊ならばぜひ参加したい。そしてお気に入りの部屋を見つけ、好きな建築を深掘りし、ここで書かれた作品を堪能する。

 究極のその先にある宿は、こんな知的好奇心を満足させる宿なのではないだろうか。

新井旅館
文人墨客の作品は、書画展示室で見ることができる。テーマを設けて展示がされており、定期的に展示内容が入れ替えられる。
住所:静岡県伊豆市修善寺970 TEL:0558-72-2007 公式サイト:http://arairyokan.net/

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