第四回ゼミ
テーマ

「世界を読みとくための歴史」

佐藤優先生(元外務省主任分析官、作家)

2017年2月4日(土)、駿台お茶の水センタービルにて第4回目となるゼミが開催された。この日のテーマは「歴史」。元外務省主任分析官で、現在、作家として活躍する佐藤優先生が、「世界を読みとくための歴史」と題して講義を行った。

歴史は複雑な物語で構成されている

歴史はドイツ語で2つの言い方があります。「ヒストリエ」と「ゲシヒテ」です。ヒストリエは、どこで何々があったという「歴史の年表」のようなものと考えてください。それに対してゲシヒテは「出来事としての歴史」です。みなさんが学校で勉強している日本史や世界史はゲシヒテの方の歴史です。過去にあった事実という点と点をつないで、物語を作っていくことです。でも各国、各民族によって世界史でも自国史でも取り上げる歴史的な事項は異なってきます。そうするとその点と点をつなぐところで物語もいろいろ異なってくるということを念頭に話を聞いてください。

時間もギリシャ語で2つの言い方があります。「クロノス」と「カイロス」です。何年何月、と時を刻んでいくように、カレンダーや時計の中で流れている時間がクロノス。対してカイロスは、ある出来事が起きる前と後では意味が変わってくるということ。たとえば誕生日。その前は、お母さんのおなかにいたけれど、誕生日に地上に存在した。じゃあ入試は? 入試もカイロスですよね。合格するかどうかで人生がかなり変わってきます。たとえば2011年の3月11日の午後2時46分。あの時に起きた東日本大震災をどの場所でどう体験したかによって認識は違いますが、これは日本にとってのカイロスです。同様に、日本にとってのカイロスは1945年8月15日の終戦記念日です。実は国際的にこの8月15日に大きい意味を持たせている国は日本と韓国と北朝鮮だけ。なぜなら国際法的に見ると日本がポツダム宣言を受諾したのは1945年8月14日。その事実を天皇がラジオを通じて国民に伝えたのが8月15日。つまり国際的な歴史認識においては8月14日、もしくは第二次世界大戦が終結した9月2日がカイロスなんです。

なぜこんな話をしたかというと、歴史にはいろいろな側から、いろいろな評価があるということを伝えたいからです。歴史というのはそういう複雑な物語によって構成されています。みなさんはいま、客観的な視点で「世界史Bと」か「日本史B」とか、教科としての歴史を学んでいると思っているかもしれませんが、資料の取捨選択、また意味づけというのは、そのなかにおいて日本の国家的な枠組み、つまり教育を通じて、我々とその他の人たちとを区別しています。だから歴史というのはある意味においては、日本人というものを形成していく不可欠な道具なのです。

2017年度リレーゼミ採録