第五回ゼミ
テーマ

「理数探究、そして教養~重力波検出実験を例に~」

笠原邦彦先生(駿台予備学校 物理科講師)

2017年2月14日(火)、駿台お茶の水センタービルにて『知の広場』リレーゼミが開催された。最終回となるこの日は、駿台予備学校 物理科講師の笠原邦彦先生が「理数探究、そして教養~重力波検出実験を例に~」をテーマに講義を行った。

これから始まる新しい科目「理数探究」とは

今日のテーマの一部となっている「理数探究」。これは君たちには直接関係ありませんが、理科や数学を中心に、いろいろな分野を横断した科目を作りましょうと今、文部科学省が検討中のものです。センター試験に代わる新テストにも将来採用されるかもしれません。私は駿台の中で、この科目について今後の備えをするチームの一員ですが、この科目がどのようなものになるのか、関心を持って見つめています。

私は高校生の時、大学で数学を勉強したいと考えていました。しかし、子どもの頃周囲に公害による喘息の患者が多かったこともあり、弁護士になって人々の役に立ちたいという思いもありました。そこで文系、理系両方の興味を持って勉強し、東京大学理科一類に進学しました。東大は、最初の2年間は教養課程でいろいろと幅広く学びます。私はワクワクして教養科目の一つである経済の授業に出席しました。ところが、「この講座には文系の人も多いので、できる限り数式を使わないようにします」とアナウンスされ、ひどく失望したことを鮮明に覚えています。何のためにここに来たのだろうと。歴史の授業などでも同じことを感じました。

せっかく大学の一般教養で、専門以外の科目も本格的に学ぼうと思っていたのに、表面的にしか学べないと感じてしまったのです。本当はそこで自分で探究して勉強するべきだったのですが、私は教養課程へのモチベーションを失い、物理や数学の勉強に没頭することになりました。その時、一般教養って怖いなと思いました。広く深く学ぶはずが、表面をなでるだけで終わってしまう危険性があるのだと。

以上のような経験から、「理数探究」でいろいろな分野を横断すると聞いたときに、広く浅く表面的に学ぶ科目になってほしくないと思いました。

そもそも「探究」とは何なのでしょうか。たとえば「温度とは何だろう?」という素朴な問題を考えたとしましょう。教室にあるような温度計では水銀の体積を測っています。素子にかかる電圧を測るようなものもあります。では、それらの測定値がなぜ温度になるのでしょうか?そして、私たちの熱い冷たいという感覚とどう関係しているのでしょうか?

何かを学ぶ上で、このように〝いろいろな観点から結び付ける〞ことはとても重要です。幅広く学ぶことを自己目的化せず、一つのテーマを探究していく過程で、いつの間にか関連したたくさんのことに興味が拡がり、結果的に幅広く学んでいた。そのような姿が、私たちの思い描く理数探究のひとつの将来像です。

2017年度リレーゼミ採録