第三回ゼミ
テーマ

「ビッグヒストリー」

長沼毅先生(広島大学 生物生産学部教授、生物学者)

2017年1月28日(土)、駿台お茶の水センタービルにて開催された第3回「知の広場」。この日は“科学界のインディ・ジョーンズ”こと広島大学 生物生産学部教授の長沼毅先生が「ビッグヒストリー」をテーマに講義を行った。

ビッグヒストリーは視点を与えてくれる

ビッグヒストリーは宇宙のはじまりから現在までの歴史を研究するプロジェクトです。今、インターネットにはビッグヒストリーに関する動画がたくさんあります。それなのに土曜日である今日、皆さんはわざわざここに学びに来た。でも、一堂に会することには意義があります。例えば、雰囲気に触れることができる。それに誰かが質問するとそれに触発されてアイデアが刺激される。質問しやすい雰囲気になる。情報、体験を共有できる。同時にこれは我々人間の特徴なのです。なぜ人間はこんなに発展したのか。なぜ我々だけが特筆すべき生物史を有しているのか。今日はそういう話をしたいと思います。

ビッグヒストリー、つまりは大きい歴史。一番大きい歴史は宇宙の歴史ですよね。そのなかで人間の歴史をどうやってとらえるかということを学んでほしい。そこにはもちろん文系的な発想もあれば、理系的なバックグラウンドもあります。私たちは去年11月にビッグヒストリーの英語版を日本語に訳した本(※注)をつくりました。この本、アマゾンで総合2位までいきました。ちなみにその時の1位は占い本、3位はダイエットでした。そこから分かることは、人間の関心事は自分自身なんです。それはそれでいい。ただその関心事に対して、どう自分をとらえるのか、どう視点をより大きく、高く持てるのか。その視点を与えてくれるのがビッグヒストリー的な考え方だと思っていてください。
(※注 『ビッグヒストリー われわれはどこから来て、どこへ行くのか 』明石書店)

歴史的な大変換点「スレッショルド」

この本においては歴史的な大変換点を8個用意しています。それは①ビッグバン、②最初の恒星、③最初の超新星爆発、④地球の誕生、⑤生命の発生、⑥ホモ・サピエンス、⑦農業のはじまり、⑧アントロポシーンの8個です。大変換点のことをこの本では「スレッショルド」と言います。スレッショルドとは英語で敷居(閾)のこと。敷居の向こうとこちらでは違う世界。前と後ろでは世界が変わってしまう、それくらい重要な出来事があったんです。

この本の最初のスレッショルド、それは138億年前、ビッグバン。宇宙のはじまりです。これが我々の歴史において最初の大事な出来事でした。地球が生まれたのは今から46億年前、宇宙の歴史のちょうど三分の一が経過した頃です。その前の三分の二は地球がないから我々には関係がない。でも果たしてそうだろうか? 地球はどうやってできたのか。我々の体をつくる物質はどうやって発生したのだろうか。だってビッグバンの瞬間には物質は存在しないのですから。この辺りのことはスレッショルドの②最初の恒星と、③最初の超新星爆発あたりで論じられています。

そうはいっても地球がない状態のことはあまりピンと来ません。したがってこの本でも、地球の誕生にいたるまでは、全体で四分の一くらいしか割いていません。むしろ我々人間への道筋に分量を割いています。そりゃそうですよね、我々はみんな自分に興味がありますから。人間にいたるまでの道筋はぜひ本を読んでください。

リレーゼミ採録