広野雅明本部長 [SAPIX小学部 教育事業本部]
先日ある学校の校長先生が、自分が受験生だったころ、ひとつの問題集を3回解くことで力がついたと話していました。これは、今でも変わらない学習の大切な基本です。あれこれ手をつけてどの教材も中途半端で終わるより、ひとつの教材にじっくり取り組み、すべての分野をまんべんなく理解することが大切です。
6年生の後期では、「合格力判定SAPIXオープン」と「学校別SAPIXオープン」というふたつの模試があります。「合格力判定」は9~12月に月1回ずつ実施し、計4回ですべての学習範囲を網羅するよう問題を作成しています。この4回を受験した子どもたちの偏差値が最も良かった回と悪かった回を比較すると、約6の差があります。偏差値で6というのはかなりの違いです。子どもによっては10や15違うことも珍しくありません。その日の体調や出題との相性などによって極端な差が出るのは、彼らの幼さを考えれば無理もないでしょう。
模試は、結果が良かったか悪かったかが重要なのではありません。特に小学生の場合、1回ではなかなか本当の実力が測れないことは今ご説明した通りです。なるべく全4回の「合格力判定」を受験したうえで、自分の得意と苦手はどこにあるのか、間違いやすい問題に共通の傾向はないか、弱点を克服するにはどんな学習が必要かを、本人と保護者、あるいは塾の講師も交えて考える参考にしていただけたらと思います。
もうひとつの「学校別」は、難易度や出題内容、問題用紙のレイアウトなど、各校の入試に可能な限り近い形式で実施する模試で、予想問題としての精度の高さでも定評があります。一部の学校では実際の試験会場を使用し、当日と同じような時間帯に実施するので、入試本番のシミュレーションとしても役立ちます。自宅で過去問題を解く時はリラックスして普段通りの力を出せても、周囲に他の受験生がいる状況では焦って頭が真っ白になる子もいます。場慣れをしていない小学生にとっては、追い詰められる経験も時には必要です。ぜひ「学校別」のような機会を有効活用してください。
「合格力判定」でも「学校別」でも、大切なのは単に「受けただけ」で終わらせないこと。模試の解説を読まない子もいるようですが、それは非常にもったいない話です。まずしっかりと解説を読み、なぜここでこの公式を使うかわからない、といったポイントを絞って以後の学習に取り組めば、着実に力がついていきます。どこで間違ったか、なぜそうなるのか、子どもが自分の頭で考えることが重要で、漫然と解説授業を聞き「わかった気」になるだけなら模試を受けた意味がありません。
9月以降は各学校の入試要項が出そろうので、志望校を真剣に考え始める時期だと思います。しかし学校案内やホームページだけでは学校の本当の雰囲気はなかなかつかめないので、なるべく学校説明会や行事に出掛けてみてください。機会があれば生徒に声をかけて話を聞き、さまざまな角度から志望校を考えてもらえたらと思います。(談)