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中学受験 SAPIX 小学部

SPECIAL TALK 教育対談

危機と変化のなかで
育まれる子どもたちの力

髙宮 敏郎

SAPIX YOZEMI GROUP共同代表
教育学博士

平 秀明

麻布中学校 麻布高等学校
校長
世界を覆うコロナ禍が依然として収束の気配を見せない中、教育現場では子どもたちの学びを止めないための努力が続いている。麻布中学校・高等学校の平秀明校長と、SAPIX YOZEMI GROUPの髙宮敏郎共同代表がこれからの教育を語り合った。

教室で授業ができない異例の事態に学校は

髙宮 この10年ほど、「グローバル化」や「AIと子どもたち」をテーマに様々な教育関係者のお話をうかがってきました。しかし今回のコロナ禍は、そうした社会的変化と比べてもはるかに教育現場に与える影響が大きいと感じています。何しろ授業ができない、教室に集まってはいけないという状況ですので。
 そうですね。ひと昔前なら限られた地域のなかで終わっていたかもしれない問題が、すぐに国境を越えて世界を変えてしまった。これはグローバル化の負の側面といえるかもしれません。今後はこうしたマイナスの変化も含めて、全地球的規模で物事が動いていくということだと思います。
髙宮 一方で、様々な制約がある状況だからこそ、変えられないこと、変えてはいけないものが明確になったという側面もあるのではないでしょうか。
 日本はこれまで何度も大きな自然災害を経験し、世界ではテロの不安と隣り合わせの国もある。危機というのは常にあるものですが、教育はそうした目先の物事に動じない、動じてはいけない、本質的に非常に保守的なものだとあらためて感じました。
髙宮 昨年、麻布は休校という決定を下すまで校内でずいぶん議論があったと聞きました。ギリギリまで他の道を探ったということかと思いますが。
 その時考えていたのは、可能な限りの情報と多様な人の意見を集めて慌てずに決めようということでした。拙速な決定で方針がコロコロ変わるというのでは生徒や保護者を動揺させてしまうからです。私学の独自性が保障されているので休校しないという選択もあり得ましたが、最終的には生徒の安全を優先して休校の判断をしました。

教室のなかでこそできる学びがある

写真:髙宮敏郎
写真:平 秀明

人間を育てることが中学・高校の務め

同じひとつの空間で
ぶつかり合う人と人

髙宮 オンライン授業も実施されたそうですが、そのメリット・デメリットについてはどうお考えですか。
 関東大震災後に建てられた築90年の校舎は堅固で、趣きがありますが、Wi-Fi環境はありません。それでもなんとか取り組んでみてオンラインの利点があることもわかりました。一方で、やはりこれだけで教育を完結することはできないと実感したのも確かです。
髙宮 私たちも昨年は、対面授業を続けるかどうかずいぶん悩みました。どちらを選んでも批判は受けるものですが、同じ教室のなかで子ども同士が競い合い、励まし合うからこそできる学びというのは絶対にあると思っています。
 全く同感です。大学であれば学生はある程度大人ですので知識の伝達が主な目的になりますが、中学・高校では人間同士がぶつかり合い、磨き合うことのほうがより重要だと思います。
髙宮 ただ、国では高度なIT・AI人材の育成という目標を掲げていますし、情報教育も今後は無視できませんよね。
 もちろん、情報技術の使い方を理解することも大切ですが、身につけた知識を悪いことに使う人になったのでは困ります。国やメディアは「人材」という言葉を簡単に使いますが、私はこの言葉が大嫌いで(笑)、麻布では何かの役に立つ「材」を育てているつもりは全くありません。次代を切り開く青年たちを育てること、彼らの人格を陶冶することが全てであり、その土台となる教養をしっかり身につけさせることが、中等教育の務めだと思います。

コロナが奪ったものと
決して奪えないもの

髙宮 入試についても聞かせてください。麻布では、入試問題は学校から受験生へのメッセージだという意識で問題を作成していると聞いたことがありますが。
 先生たちは自分の担当教科が楽しくて大好きだという人ばかりですので、その楽しさを伝えたいというのが一番だと思います。ある国語の先生は、試験時間を通して子どもたちに向けて授業をするようなイメージで問題を作成しているということです。
髙宮 新型コロナの影響は今後も続くと思いますが、受験生に何かアドバイスなどいただけますか。
 今年は人数制限のうえですが、学校見学会や進学相談会をできる限り開催する予定です。生徒たちも受験生に学校を見せてあげたいというので、厚労省の指針などを調べて工夫しながら文化祭を公開できるよう計画しています。そうした機会に少しでも学校の空気を感じてもらえたらと思います。
髙宮 自分たちの学校生活をどうすれば守れるか、生徒自身が考えているんですね。
 6月の運動会は、接触を避けた新しい競技をみんなで考案するなど、生徒のアイデアと行動で実施にこぎ着けました。また麻布では、生徒が授業をきっかけに考察を深めた成果を発表する『論集』がありますが、昨年は考える時間が多かったからでしょうか、例年になく充実した作品がそろいました。コロナが彼らから奪ったものは少なくないですが、そのなかで培われている力もきっとあるはずだと思っています。
髙宮 イエスかノーか、できるかできないかで一方を切り捨てるようなやり方は、多くのものを損なっていきます。しかし今の話のように、「どうすればできるか」「自分たちにできることは何か」を考える力がこの状況下で育っているとしたら頼もしい限りです。本日は、私自身にとっても役立つ多くのヒントをいただいたと思います。どうもありがとうございました。

たかみや としろう/1997年慶應義塾大学経済学部卒業。三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)を経て、2000年学校法人高宮学園に。米ペンシルバニア大学で大学経営学を学び、教育学博士号を取得。09年から副理事長。現在、SAPIX小学部、SAPIX中学部、Y-SAPIXなどを運営する株式会社日本入試センター代表取締役副社長などを兼務。 たいら ひであき/1960年5月、東京生まれ。79年麻布高等学校卒業。東京大学工学部、教育学部を卒業後、85年より麻布学園に数学科専任教諭として28 年間勤務。2013 年4月より校長をつとめる。校長就任後は毎週月曜日の朝、校門に立って生徒と挨拶を交わすことを楽しみとしている。
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