ファイナリストがISEFの会場でブースセッティングや研究発表をしている5月15日〜16日、サイエンスリポーターは近郊の視察へ。アメリカンインディアンとスパニッシュ、西部開拓者の文化が融合した独自の文化を持つニューメキシコ州は、実は科学とのかかわりも深い土地だ。
5月15日はアルバカーキから車で2時間、同じニューメキシコ州にあるロスアラモスの街へ。車窓には、乾いた赤茶色の大地に背の低い草木が茂る景色が地平線の彼方まで続いている。
午前中は、ロスアラモス研究所の付属機関であるブラッドベリー科学博物館(Bradbury science museum)の見学。ロスアラモス研究所は、原子爆弾を開発するために設立された国立の機関。広島と長崎に投下された原子爆弾もここでつくられ、いまも核兵器の開発をはじめ、ナノテクノロジーやコンピューター科学など、さまざまな科学技術について最先端の研究が行われている。研究所員は1万人を超えるという。
ブラッドベリー科学博物館には、そんなロスアラモス研究所で行われている研究や発明を紹介する展示物が並んでいる。広島に投下された「リトルボーイ」、長崎に投下された「ファットマン」の模型もある。日本人にとっては特別な感情を抱かせる原爆。それを肯定的にとらえたようにもみえる展示に複雑な表情になるリポーターも少なくなく、「最先端の科学技術で原爆を発明したアメリカと、被爆国の日本との意識の違いを感じた」という声も聞かれた。
サイエンスデモンストレーションのコーナーでは、ロスアラモス研究所の研究員が、いま進行中の研究を実験装置の模型を使ってレクチャーしてくれた。太陽光を使い水から電気をつくる研究に、リポーターたちは興味津々。「太陽光発電だと、日が照っているときにしか発電できない。同じように太陽光をつかっていても、この研究なら夜でも電気がつくれるので画期的」と驚くのは千葉健人さん。星野知也さんは、「研究者自身に直接レクチャーしてもらえたのがうれしかった」という。さらに、そのクリーンエネルギーの燃料電池を使った電動カートに試乗することもでき、リポーターたちは「動きがスムーズで静か。これがあったらとても便利」と楽しんでいた。
午後は、アメリカンインディアンの住居跡地であるバンデリア国定公園(Bandelier National Monument)へ。レポーターたちはまず、眼前に立ちはだかる巨大な岩壁に圧倒された。3km以上も続く垂直に切り立つ赤茶色の岩壁に、アメリカンインディアンは穴を掘り、500年ほど前までその中に住んでいた。住居跡は数千軒を数える。
いくつかの穴には実際に入ることができた。また、岩壁のいたるところに描かれた壁画や、円形状の村の跡を見たり、リポーターたちはタイムスリップした気分で、数百年前のアメリカンインディアンの暮らしを追体験した。
歴史や民族に興味を持つ山本裕子さんは、「見るものすべてがおもしろかった。壁画を見つけるのが楽しくて、夢中で探しました」。瀬谷翠さんは、「アメリカンインディアンについてもっと知りたくなった」という。教科書を読むだけでなく、実体験を通して学ぶことの大きさと大切さを感じたようだ。
5月16日はアルバカーキから車で1時間、ニューメキシコ州の州都、サンタフェへ。日干し煉瓦づくりのエキゾチックな建物や、アートが盛んなことで知られる街だ。
まず訪れたのは、21世紀の科学ともいわれる「複雑系」の研究で有名なサンタフェ研究所(Santa Fe Institute)。世界中から気鋭の研究者が集まり、物理学、情報学、経済学など多くの分野を融合させ、まったく新しい切り口で分析や研究を行っている。
所員から研究所の概要などを聞いた後、所内を見学。実験機器がなく、研究所というよりもこじんまりしたオフィスのような雰囲気に、リポーターたちは驚いている。
研究員たちがディスカッションするためのコミュニティースペースでは、思いついたことをすぐに書き留められるようにと、窓ガラスそのものがメモボードになっている。「ここに残っているメモが、未来の大発見につながるかもしれない」世界最先端のアイデアが誕生する場所に立ち、リポーターたちも興奮を覚えたようだ。
また、多分野の研究者が交流して新しいことを生み出すこと、ひとつの問題をさまざまな立場から考え解決していくことに、大きな意義や魅力を感じたことだろう。
午後は近郊の高校を訪問し、授業(羊の眼の解剖実験)見学や生徒との交流を楽しんだ。互いの学校生活について質問しあったり、日本から持ってきたダルマや扇子、ケンダマをプレゼントし、日米の高校生たちは交流を深めた。
|