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広告特集 企画・制作 朝日新聞社広告局

ご存じですか ATIS エイティス AtheroThrombosIS 脳や心臓、足の血管に血栓が詰まる病気の総称。世界の死亡原因第1位です。

座談会
動脈内の血栓が引き起こす病変の新しい概念・エイティス
アテローム血栓症(エイティス)とはどんな病気

エイティスの主な疾患

近年、わが国でも脳動脈疾患(脳梗塞など)、冠動脈疾患(心筋梗塞など)、末梢動脈疾患(間欠性跛行など)が増えてきています。これらの病気は動脈硬化が基盤となって血栓ができ、血管が詰まるという共通の発症経過を示すことから、統一した疾病概念として「アテローム血栓症(ATIS・エイティス)」と呼ぶことが提唱されています。これまで発症部位ごとに捉えられがちだった病気をエイティスという統一概念により予防・治療する重要性について、エイティスの命名者である池田康夫先生と脳動脈疾患に詳しい永田泉先生、冠動脈疾患に詳しい小川久雄先生、末梢動脈疾患に詳しい古森公浩先生がご専門の立場から話し合われました。

《座談会出席者》
池田 康夫先生(座長・早稲田大学理工学術院先進理工学部生命医科学科教授)
永田 泉先生(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科病態解析・制御学講座神経病態制御学教授)
小川 久雄先生(熊本大学大学院医学薬学研究部循環器病態学教授)
古森 公浩先生(名古屋大学大学院医学系研究科血管外科教授)

エイティスとは

[池田] 食生活などの生活習慣が欧米化し、高齢化してきたため、我が国の疾病構造も随分変わってきました。とくに、がんと並んで、動脈硬化を基盤にして発症する脳梗塞や心筋梗塞あるいは末梢動脈閉塞などで亡くなる方が非常に増えてきています。これらの疾患では基盤となる病態が共通していることからアテローム血栓症(ATIS・エイティス)という疾患概念で理解されるようになりました。エイティスとはあまり聞き慣れない言葉ですが、どのような概念なのでしょうか。

[小川] 動脈硬化の進展に伴い、プラーク(動脈硬化巣)が次第に大きくなって破裂したとき、血小板など凝固の成分が血管内に出てきて、血のかたまりである血栓をつくり、血管を塞いでしまいます。エイティスは、動脈が血栓で閉塞した部分に血液が行かなくなり、組織が死んでしまうことによって起こる疾患群を指します。このメカニズムは、脳や心臓、末梢動脈でも共通してみられるため、エイティスと一括して捉えるようになりました(図)。

エイティスは全身の血管の病気

池田 康夫 先生

池田 康夫 先生

[池田] 先生方は脳、心臓、末梢血管、それぞれの部位の動脈硬化を専門に診ていらっしゃいますが、身体の一部分ではなく全身で、共通のメカニズムによって動脈硬化が起こっていると思われる事実というのには、実際どんなことがあるのでしょうか。

[永田] 頭の血管の場合は、くびの血管(頸動脈)と頭の中の比較的大きな血管で動脈硬化が起こりますが、最近は頸動脈の動脈硬化が多くみられ、手術も多く行われています。こうした患者さんでは、心臓や足の血管も狭い(狭窄)場合がとても多く、とくに心臓に血液を送る冠動脈の病変を合併する方が3割程度みられます。さらに、くびの手術の後の死因で一番多いのは心筋梗塞で、毎年5%位の方が亡くなられます。ですから、頭やくびの手術のときは、循環器や末梢血管の先生方に相談する必要があります。

[古森] 下肢の動脈が詰まって症状が出ている患者さんを診るとき、エイティスの一部分症であるということを念頭に置いて、必ずくびや心臓など他の部位の動脈硬化の合併症がないかを診ます。実際に、とくに脳、心臓、足と3カ所の動脈硬化症の合併はおよそ5〜10%もあるということが分かっています。また、末梢の動脈が詰まる疾患のある人では、冠動脈の動脈硬化症で亡くなられる頻度が高いという報告もあります。

[小川] 心筋梗塞や狭心症で心臓の血管を調べるときにも頭と末梢の血管の検査を行いますが、心臓以外の血管障害がかなり多く見つかります。冠動脈疾患のある人の超音波検査をすると、ほとんどの人の頸動脈にも病変があるということが分かっています。

欧米化している日本人の疾病構造

永田 泉 先生

永田 泉 先生

[池田] エイティスは世界で死亡原因第1位の疾病ですが、日本人と欧米人との特徴の違いはありますか。

[永田] 日本人はくびの血管よりも頭に入った中の血管が詰まる人が大変多かったのですが、最近では頭の中の血管が詰まる人は少なくなり、くびの狭窄の人が多くなっています。食事などライフスタイルの欧米化とともに、変化してきていると考えられます。

[小川] 日本人の冠動脈疾患の頻度は欧米人より低いのですが、その数は年々少しずつ高くなってきています。また、昔は日本人は3本の冠動脈のうち1本だけに病変を起こす人が多かったのですが、最近は、2本、3本と病変を起こす多枝病変が明らかに増えてきています。さらに、病変の壁の動脈硬化の度合いも、昔と比べていまは目に見えてひどくなってきています。

[古森] 末梢動脈疾患では、80年代頃までは原因不明で難病に指定されているバージャー病(閉塞性血栓性血管炎)が多く、動脈硬化症と並ぶ2大疾患に考えられていましたが、いまではバージャー病は大幅に減り、ほとんどが動脈硬化が原因の病態となり、この点でもいわゆる欧米化がみられます。また、1カ所ではなくいろいろなところに病変が起こる人が増え、複雑で重症の病変をもつ人も多くなってきています。

危険因子を管理して発症予防を

小川 久雄 先生

小川 久雄 先生

[池田] エイティスの病態の基礎には動脈硬化の進展がありますが、動脈硬化の危険因子はどのようなことがあげられますか。

[小川] 心筋梗塞を起こす危険因子で一番にあげられるのは高血圧で、次に喫煙、糖尿病と続きます。最近注意が必要なのは、30〜50歳代と若いときに心筋梗塞を発症する人で、三つの因子に加えてコレステロールや中性脂肪が高い脂質異常症の人が増えています。また、危険因子には男女差があり、女性の場合には喫煙と糖尿病が大変強い因子になってますので、とくに注意が必要です。

[池田] 動脈硬化には共通してこれらの危険因子があるといえますか。

[永田] エイティスという概念で全部つながってはいますが、多少、起こる場所によって危険因子は異なってきます。頭では基本的に高血圧が重要で、コントロールすれば3割方で脳梗塞などの発症が減ります。コレステロールや糖尿病も危険因子としてはっきりしていますが、治療してどのくらい脳梗塞が減るかを比較すると、高血圧に比べていくらか少ないといえます。

[古森] 末梢動脈が狭窄したり閉塞したりすると、歩くと足が痛くなる間欠性跛行という症状が出て、さらに進むと何も運動しないのに安静時に痛みが出る(安静時疼痛)、あるいはひどいものは壊疽や壊死につながる重症虚血肢という状態になります。間欠性跛行の患者さんが重症虚血肢になるリスクは、糖尿病があると4倍、喫煙が3倍、脂質異常症が2倍になるという報告がありますので、これらのコントロールが重要です。

[池田] 予防について注意すべきことはどのようなことでしょうか。

[永田] エイティスの脳梗塞に加えて、小さな脳梗塞のラクナ梗塞も高血圧が基盤となるので、高血圧の管理がまず重要だといえます。また、最近増えている糖尿病は動脈硬化を進めて頸動脈狭窄症や頭の後ろの方の動脈を狭窄させます。さらに、脳梗塞とラクナ梗塞の間のBADという細い動脈に起こる梗塞も糖尿病の人に多くみられるので注意が必要です。

[小川] 心臓でも高血圧と糖尿病は一番注意が求められますが、禁煙も非常に効果があります。最近病院は禁煙になっていますので、発作が多くあった患者さんでも入院すると軽快することがよく見受けられます。

予兆を見逃さず早めの受診と適切な検査を

古森 公浩 先生

古森 公浩 先生

[池田] 健康だと思われていた方が脳梗塞や心筋梗塞で突然倒れてしまうことも少なくないのですが、この様な場合予兆というものはないのでしょうか。

[小川] 心筋梗塞は突然に起こる場合が多いですが、全体の半数位では何らかの症状が出ています。胸が締め付けられるような圧迫感があったという人が多くみられますが、胃の症状と思い込んだりしてなかなか病院に来ていただけません。一番怖いのは、そうした症状が次第に頻繁に起こるようになったり、痛みが強くなってきても、受診されない方です。早めに受診すれば心筋梗塞にならずにすんだ例は多く見受けられます。

[永田] 脳のエイティスには一過性脳虚血発作という疾患があり、一時的に1時間位手足の麻痺が出たり、話しにくくなるなどの症状が出ます。これは緊急の事態ですからすぐに病院に来ていただく必要があります。その段階の前に見つけるのはなかなか難しいのですが、危険因子がある中年以上の方は脳ドックを受けることをお勧めします。

[古森] 足が痛いとき整形外科に行く患者さんが多いのですが、足の脈まで診てもらえず、末梢動脈の病気が見逃されることもあります。危険因子があってある程度高齢の患者さんに対しては、まず脈がふれているかを診て、足の血圧と上肢の血圧の比をとる検査をするという簡単な方法で病変の有無を診断します。問題があれば頸動脈や末梢血管の超音波検査を行います。

[池田] エイティスが考えられる患者さんには、足の脈を診て、足の血圧を測ることを必ず行う必要がありますね。

[永田] かかりつけ医の先生方には是非ともそういう役割をもっていただきたいと思います。

[池田] 血管の状態を外から知るという意味では、頸動脈の超音波が一番分かりやすいでしょうか。

[永田] 頸動脈のIMTという血管壁の厚さを測る超音波検査は、心臓疾患などのリスクが評価できますし、超音波のなかではくびの検査が一番簡単にできるものだと思います。

動脈硬化は改善できるか

[池田] 人は血管とともに老いるので、高齢になれば血管が脆(もろ)くなってくるのはいたしかたないのですが、一旦動脈硬化になってしまった血管を少しでもきれいにすることはできるのでしょうか。

[永田] いろいろな薬物療法によって、頸動脈のプラークの退縮やIMTの値の減少は可能性があります。ただし、年齢も一つの大きな危険因子なので長い目でみるとまた悪くなってくるようではありますが、とりあえずは良く効くという薬もあります。

[小川] 頸動脈と同様に心臓でも動脈硬化の退縮は確かにあります。とくに、コレステロールを十分に抑えると目に見えて退縮します。また、アンジオテンシンIIに作用する降圧剤を使用すると、血管の機能が良くなるということはありえます。そして、予防のためには抗血小板薬は非常に重要な役割を果たすと考えられます。

[古森] 末梢動脈のプラークの退縮についてまでは研究が進んでいませんが、ステントなどの血管内治療やバイパス手術などの外科的治療の後に、抗血小板薬やスタチンなどを長期に投与すると治療成績が良くなるという結果は報告されています。冠動脈疾患の抑制も含めて、術後の薬物療法のフォローは非常に重要なポイントだと思います。

抗血小板薬による再発予防と全身の血管管理

[池田] 一度エイティスを発症した患者さんが再発を起こさないための「二次予防」という点ではいかがでしょうか。

[古森] 軽度の間欠性跛行では運動療法や薬物療法、高度の間欠性跛行や重症虚血肢では、ステントなどの血管内治療やバイパス手術などの血行再建術を行います。そうした外科的な治療の局部的血行を良くするために、また、治療によって血流が良くなったとしても、全身的な血栓の予防のために主に抗血小板薬の投与を続けていきます。

[小川] 冠動脈疾患の治療においても、局所だけではなく全身のトータルな治療に効果がある抗血小板療法は必須といえます。抗血小板薬により、ステントを入れたり、バイパス手術を行うなど外科的治療後の心筋梗塞の再発も防げますし、脳や末梢動脈の血栓の形成を制御することもできます。また、心臓に限って考えても、3本ある冠動脈のうちの1本にステントで治療した場合、残りの2本のどちらかに血栓が詰まる可能性も高くあります。こうした新しい病変を防ぐためにも抗血小板薬は有効です。

[永田] 既に脳梗塞の症状がある方では、頸動脈の狭窄が70%以上の場合には抗血小板薬の投与に加えて、心臓のように外科的治療を行いますが、それより狭窄度が低い方へは、基本的に抗血小板薬による内科的治療を柱に全身の血管の管理が行われています。

[池田] エイティスとは、一つの血管の部位の病気ではなく、全身の血管に共通して起こり得る病気であるという考え方を十分に理解していただき、適切な予防と治療につなげていただきたいと思います。本日はありがとうございました。