パネリストのみなさんのプロフィール

男女雇用機会均等法施行から20年以上たった現在、様々な分野で活躍する女性は確実に増えている。しかし、その一方で仕事と家庭の両立に悩む女性もいまだに多いという厳しい現実もある。女性の生き方を応援する教育機関である跡見学園女子大学において、さる11月17日の土曜日、約300人が参加して、「働く私のライフスタイル」をテーマとした「跡見学園女子大学 茗荷谷キャンパスリニューアル記念シンポジウム 東京ライフ跡見」が開催された。

働くことで社会と関わり続け、家族や社会を輝かせる人生を。

自分の成長を家族の成長につなげる

山崎 本日のパネリストの方は皆さん、多忙な日々を過ごしながらも独自のライフスタイルを築いていらっしゃいます。最初は、ご自身の体験を交えて家庭と仕事のバランスについてお話いただけますか。

小谷 私のメインの仕事はシンクロナイズドスイミングの指導です。毎週末、小学生から高校生までの子どもたちを指導していますが、これはずっと続けていきたいライフワークです。
このほかの仕事に関しては、二児の母親業もありますので、自分なりの基準を設けて選ぶようにしています。それは、(1)自分の成長につながるか、(2)自信をもって全力投球できるか、(3)家庭に持ち込むことなく仕事の場で完結できるか、という3点です。家庭を出て外で働くのだから、少しでもプラスになるものを持って帰りたいですし、そうした姿勢が子どもの成長にもつながると信じています。その意味で、スポーツイベントのお仕事やオリンピック委員会や教育関係の会議などは可能な限り参加するようにしています。

進藤 私は大学卒業後、TBSに7年在籍していましたが、昨年、結婚を機に自分が本当にやりたいと思っていた「人と深く関わる仕事」をしようと、2001年退社を機にフリーになりました。結婚後は家族との生活を考え、月に3日しか休みがなかった仕事を半分に減らしましたが、今年3月の出産後にもまた、仕事をどうしていくべきかという悩みに直面しました。私は悩んだ時は初心に帰って自分と向き合うようにしているのですが、今回もそうしてみたら、自分の優先順位が見えてきました。そして、今一番大切なのは娘との時間、次は主人との生活と、心から納得することができました。とはいえ、仕事も私にとってはようやく出会えた夢中になれるもの。家族の生活に支障のない限りは、“継続は力なり”の言葉を信じて、細くとも長く続けていきたいと思っています。現在は、レギュラーの経済番組の収録、大学での非常勤講師の仕事、週刊誌の連載インタビューなどを週のうちの3日間に詰め込んでこなしています。

渡辺 私は12年前に主人を亡くし、それから渡辺教具製作所の社長をしています。社長になる前は主人の闘病を支えながら三人の息子を育てるという大変な時期がありましたので、思いがけず家業を引き継ぐことになってからは、会社経営のほうが楽だ、と感じました。これまでなんとかやってこられたのは、自分が育っていく中に子どもの成長があったからだと思います。また、かつて私は子育てをしながら自分も楽しめることをしたいと家で英語教室を開いていたのですが、その過程で子どもが随分自立してくれていたこともあり、逆に子どもたちに支えられる部分も大きかったように感じています。

自分の成長を家族の成長につなげる

山崎 皆さん、きちんとご自分のキャリアや限られた時間を上手くマネジメントされているのですね。そのコツはどのようなところにあるのでしょうか。

小谷 時間の管理に関して申し上げますと、私はオンとオフのメリハリを意識するようにしています。私は仕事の帰りには玄関前で仕事関係の連絡を終わらせてから家に上がるようにしていますし、仕事に出る前のお化粧も行きの車の中でやっています。そして、家事をする際は全神経を集中してこなしています。例えば、私の料理を見た人は皆、味ではなく、その速さにびっくりします(笑)。
また、余計なことは一切しません。お酒も飲みませんし、ゴルフもしません。時間のかかることには興味を持たないようにしています(笑)。

進藤 私は一昨年の4月から母校の神戸松蔭女子学院大学で「キャリア研究」についての講義をしていますが、母校に戻るとタイムスリップした気持ちになって、つくづく卒業して13年たった今も自分は変わらないなぁと思ったりしています。というのも、現在の私も当時と同じように迷いや焦りの中にいるからです。ただ、昔と違うのは、悩みはするけれども自分の中でその操縦術を身につけているということでしょうか。
自分のキャリアは、自分次第。その時その時の価値観や優先順位に合わせて考えていけばいい。仕事を通じて様々な方のお話を伺っているうちに心からそう思えるようになりました。今の私は、家族といるべき時間を優先し、無理はしない。それで良いと思っています。でもその代わり、時々は余った時間があればフルに活用できるよう、時間の管理はしています。

渡辺 私が社長業を実際に継いでみてわかったことは、若い頃、将来につながるとは考えもせずに一所懸命やったことが意外と生きているということです。例えば、私の会社では星座早見表やプラネタリウムなどの教材も作っている関係で天文学者の方からご教示いただくことも多いのですが、学者の先生たちとの関係を築いていく過程で、跡見時代の師弟関係の中で学んだことが大いに生きていると実感しています。また、新しい事に興味を持ち、仕事を通じて自分の世界を広げていきたいと思えるのも、熱心な先生のいる跡見という環境の中で自分の好奇心を育てることができたおかげだと感謝しています。

キャリアも時間の活用も自分次第

山崎 様々な人との出会いやコミュニケーションを通じて、皆さんは仕事へのスタンスを見直すきっかけをつかんでいるようですね。

小谷 本当にそうですね。私はオリンピック選手を引退するまでの15年間は、競技のこと以外は何も考えない生活をしていたため、他の人より知識や経験が足りないというコンプレックスがありました。そこで、そのコンプレックスを克服したいと思い、素晴らしい方に出会ったらその良いところを全部吸収しようと必死で努力してきたことが、今日の私に生きていると思っています。

進藤 私もインタビューなどで人に接する機会が多いのですが、結局その人を通して、自分が見えてくることを実感しています。

渡辺 私は社長になった当初、職人さんとの間に存在する壁に驚く日々がありましたが、「風通しの良い会社に」という社員に伝えた最初のメッセージをゆっくりですが実行することが、未来を切り開くことにつながったという経験があります。例えば、製造現場にも入って「私が1時間でできたんだから、あなたはもっとできるでしょ」と言ったりもしましたし、営業に行くと、問屋さんやお客様の声を聞いてそれを「商品に生かしたい」と社員に言いました。そうやっているうちにいろいろなチャンスが出てきたように思います。

山崎 相手から学ぼうとする強い意志とエネルギーが今日の皆さんをつくっているんですね。そのほか、自分の思い描くビジョンを実現していくにはどのようなポイントがあるでしょうか。

小谷 私は無心で何かに打ち込んだり、あるいは大自然の中に身を置いたりすると、自分が向かうべき方向に自然と導かれるように感じています。

進藤 TBSに在籍していた頃、仕事がなかった時期にやっと声がかかったのが、パジャマや着ぐるみを着る深夜のバラエティの仕事で、落ち込んだことがありました。でも、先輩からのアドバイスもあり、どんな仕事でも料理の仕方次第と前向きな気持ちを持つようにしてから、不思議とやりたかった仕事に導かれるようになった経験があります。その場その場で必死につかんだものが次につながり、思いもよらない財産になっていく。私の哲学は「わらしべ長者」です(笑)。

チャンスは必ずめぐってくる

山崎 これは私自身実感していることなのですが、学校や社会で学んだものが使えるのは最初の15〜20年位で、その後はどうしてももう一度インプットし直す必要が出てくる。そんな“賞味期限”というべきものがあるように思いますが、皆さんはどうお考えですか。

小谷 私の賞味期限は、オリンピックメダリストという意味ではとっくに切れています。今、足を上げても喜んでくれる人はいませんし(笑)。ですので、枯れていない人だと思っていただくためにも、チャンスをいただいた時は100%の力を出すよう心がけています。
また、以前マット・ビオンディ選手(アメリカの男子競泳選手。オリンピック金メダリスト)に「人間、二つ働いたら、三つ休まないと駄目だよね。」と言われたことがあるのですが、全くその通りで、勉強したり働いたりしたらそれを吸収する時間を持つことが大切だと思います。

進藤 賞味期限という言葉は厳しい言葉ですが、思えばアナウンサーになった時から隣り合わせだったように思います。自分の内面を見れば育てられる芽があるはずなのに、つい隣の人が咲かせている花ばかり見てしまうこともありました。秋元康さんに「過去の遺産で仕事をするな」と言われて共感したことがあるのですが、常に自分を更新していく意識は持っていたいですね。

渡辺 お二人のおっしゃる通りで、日常の積み重ねというのは本当に大切で、すぐには返ってこないけれど必ず実を結ぶものだと私は信じています。たとえ何かを中断せざるをえなくても、必ずチャンスはめぐってくるものです。私自身、学生時代に学んだ英文学や茶道などを今になってまた学べる時間ができたことを考えても、そう強く感じます。

山崎 最後に、働く女性そしてこれから働こうとしている女性たちにメッセージをお願いします。

渡辺 やりたいと思っていることは何でも、挑戦していただきたいですね。女性の力を求めている職場は意外に多いですし、経営側から見ても、育児経験のある方は頼りがいも社会性もあります。チャンスは必ず来ますので、勇気を持って前に進み出してください。

進藤 自戒を込めて、逃げないこと、諦めないことの大切さをお伝えしたいですね。思い続けていればきっとたどりつける。人生に無駄なことは何もない。そう思って、私は目の前にあることを味わい尽くす自分でありたいと思っています。
女性が輝いている姿は、後輩たちや周りの人の励みになるものです。皆さんの輝く姿で私のことも元気にしてください。

小谷 生きている人にはみんなに価値がある。本当の幸せは自分の中にある。忙しい日々だと思いますが、いつもそのことを心にとめていてほしいですね。

山崎 お話を伺い、皆さんが経験してきたこと、出会ってきた人たちが“本物”であったと強く思うと同時に、そうした経験や出会いが皆さんの生き方に色濃く表れていることを感じました。我が校でも、皆さんのような素晴らしい女性たちを育てていきたい。改めてそう思いました。本日は、どうもありがとうございました。

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学校法人 跡見学園