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Woman's Talk

友人が一人ずつ増えていく感覚です

さん(女優)

[2016.11.10]

「オケ老人!」は素に近いかも


撮影時、バイオリンを慣れた手つきでケースから出し、すっと抱え持った。

「楽器はやった時間に比例すると聞き、触って、触って、身近になるように心がけました」

初主演映画「オケ老人!」が11月11日から公開される。音楽の道を諦め高校教師となった杏さん演じる千鶴が、再びバイオリンを弾こうと勇んで入ったのは、目当ての楽団と名前の似た、老人ばかりのヘタな交響楽団だった……。ベテラン俳優と杏さんが醸し出す心温まる作品だ。

「ほっこりした笑いが全編にちりばめられています。私も皆さんもほとんど素に近い設定で、素の魅力がたくさん入っています」

撮影が終わった昨年秋以降、産休に入り、今年5月に双子の女の子を出産した。が、その印象は全く変わらない。繊細で生真面目で賢くて、すっと背筋を伸ばしたような不思議な初々しさ。「オケ老人!」の現場でも、ベテラン俳優さんたちのアイドルになっていたろうと思わせる、そんな雰囲気が映画の画面からも伝わってくる。

個性的な役柄を数多く演じてきた。しかし「妖怪人間」もこの人が演じると共感できたし、「デート」の几帳面(きちょうめん)で理詰めの依子は魅力的だった。「ごちそうさん」の食いしん坊・め以子では国民的な人気女優となった。

「役にも作品にも恵まれて、全部大好きになりました。友人が一人ずつ増えていく感覚なのです。周囲の人は、私は依子に一番近いと言いますし、め以子は一個の人格として自分のなかに残っている気がします」

こだわりの9割は「食」です

歴史好きは有名。今回も共演の俳優たちから古い時代の話をたくさん聞いた。

「進駐軍の話とか1964年の東京五輪の話とか楽しかった。いまは昭和29年の主婦の投稿を集めた本を読んでいます」

文章を書くことも好きで、10月20日に、朝日新聞デジタルに連載していたエッセーが本『杏の気分ほろほろ』に。気負いのない文章で、仕事現場の裏話や、最終回では子どものいる暮らしについても書いている。

「いま子どもに何時間かおきにミルクをあげて、2匹の犬にも1日2回ご飯をあげて、それをやっていると、結構、1日が終わります。もともと食にかける時間が多いんです」

め以子同様、家のご飯が大好きだという。

「暮らしのなかのこだわりの9割は『食』についてです。いろんなものを食べてみたいという欲が多いかな。器やグラスを見たり集めたりすることも好きです。でも最近、子どもを連れて家族で初めて外にご飯を食べに行きました。すごく新鮮で嬉(うれ)しかったですね」

好きな場所も家。ただし家族が一緒にいる家。

「まだ子どもが生まれる前、主人もたまたまいなくて、犬も預けていて、家に一人でいて、これほど寂しいものはないなと思いました(笑)」

交流ある作家の村上春樹さんが杏さんについて、女優のオーラをまるで感じさせず、「『ごく普通の女の子』に見える。……『自然娘』とでもいうか(『杏のふむふむ』あとがきより)」と書いているが、まさに同じ印象。彼女が無二の女優だからこそ、それは驚くほどだ。好きな色は「白」と言うが、女優として、多彩な色を秘めた「白」だと感じる。

撮影:宮本直孝/スタイリスト:河辺菜津子/ヘア&メイク:佐々木貞江/文:追分日出子

杏さんへQ&A

いつもバッグに入っているものは?
本です。いま主婦の投稿の『戦争とおはぎとグリンピース』、垣根涼介『室町無頼』。
好きな花と色は?
結婚して家紋が「桔梗(ききょう)紋」に変わりました。ですから最近、桔梗の花が入っている柄のものに心惹(ひ)かれます。好きな色は白。

あん
1986年東京生まれ。2005年から海外のファッションショーで活躍。07年から本格的に女優活動。NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」のヒロインで一躍人気を集める。主な出演作は「花咲舞が黙ってない」「デート〜恋とはどんなものかしら〜」「妖怪人間ベム」など。15年元日、俳優の東出昌大さんと結婚。初主演映画「オケ老人!」(細川徹監督・脚本)が11月11日(金)より全国ロードショー。新著は『杏の気分ほろほろ』(朝日新聞出版)


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