大好きな"食"を通して貢献しよう、
"食育"を自分の最後の仕事にしようと決心しました
藤野真紀子さん(料理研究家)
[2011.05.12]
私にとって、家族の絆を壊すのも繋ぐのも食卓だった
自宅を訪れた取材陣を、藤野さんの笑顔と温かい紅茶と手作りのスコーンが迎えてくれた。さっそくいただいて和む様子に目を細める藤野さんの表情に、「食は鎖のように人と人を繋ぐ」というご著書の言葉を思い出した。
子供の頃からおいしいものが好きで、もっとおいしいものを自分の手で作りたい、と追求するうちに専業主婦から料理研究家になっていた、という藤野さんは約10年前から"食育"に力を注いでいる。「女の子ばかり7人の孫がいるんですけど(笑)、初孫が生まれた時に、この子たちに健康な食の環境を残したい、健全な社会を受け渡したいと思ったんです。還暦という人生の最終ステージの入り口も見えて、自分は何のために生まれ、何を遺していくのかなと考え始めた時期でもあったので、大好きな"食"を通して貢献しよう、"食育"を自分の最後の仕事にしようと決めました」
食育には、味覚磨き、農家の支援、自給率の向上等々さまざまな面があるが、藤野さんが選んだのは"家族の絆"。結婚、出産、子育てを経験してきた藤野さんの「私にとって、家族の絆を壊すのも繋ぐのも食卓だった」というひと言は重い。忙しさを理由に子どもたちに不自由な思いだけはさせまいと、おやつはすべて手作りし、毎日欠かさずお弁当を作り、食事の用意をしっかり整え、学校の催しを最優先してきた藤野さんだったが、対等に話ができるまでに成長したお嬢さんから返ってきたのは「ママは間違っていたよね」だった。「口では〈ごめんね〉と言いながら、どうして? 私、こんなにやってきたじゃない? と思った(苦笑)。
それから何年かして、一緒にスコーンを作っていた時に〈もっとママと一緒に台所に立って、いろんなことを教えてもらいたかった〉と言われた時に、初めて娘たちが感じていた寂しさや思いに気がついたんです」。料理研究家として完成度を高めたくて、幼かったお嬢さんたちをキッチンに入れなかったこと、家族がお互いの心や体の状態を察し合えるはずの食卓に自分がいない日があったことを、強く後悔したという。そんな苦い経験が、藤野さんの"食育"には生きている。
食は、前向きに生きるための力や幸福感につながるから
各地で講演をする以外に、今、藤野さんが積極的に行っているのは"キッズパーティー"だ。親子で一緒にお菓子を作り、試食する。そこで感じる小さな幸せを積み重ねていくことが、親子の絆を深め、子供の心を健康にし、大きな力になっていくはず、と話す。「生きていれば悲しいことや辛いことはたくさんあるけど、幸せな思い出がそれを打ち消してくれると思う。私自身、議員時代にさんざんたたかれた時に、母のところで祖母直伝の鯛茶を食べてすごく元気になれた。ただそれを食べるだけで、子どもの頃を思い出して、"母にも祖母にもちゃんと愛されている、だから私は大丈夫"と確認できた。毎日何を、どう食べるかは、子どもにとってすごく大事なことなんですよね」。東日本大震災以降、被災地と被災者、そして被災した動物たちと関わるなかで、藤野さんの食と食育への思いは深まっている。「あの日を境に、すべてが変わった気がします。今まで当たり前だと思っていたものがすべて貴重なものだったと気づかされ、本当に大事なものは何か、何が幸せなのかを思い知らされた。非常に不幸な出来事でしたけど、きっと何かが大きく変わっていくだろうし、戦後、忘れかけていた人と人との絆を取り戻しながら復興していければ、新しい日本の社会が生まれると信じています。食も、単に体を維持する糧としてだけでなく、前向きに生きるための力とか幸福感につながっていることを、今回の震災で改めて確信した。これからさらに誠実に、精力的に、食と食育の大切さを多くの人に伝えていきたいと、決意を新たにしています」。そんな思いで"就任"した[みんなのおべん党]党首(次ページ参照)。その活動に大いに期待したい!
この日藤野さんが焼いてくださったスコーン。 |
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(撮影:森川 昇/文:木村由理江)
藤野さんへ
- バッグにいつも入っているものは?
- 遠近両用のめがねとサングラスに、仕事柄、手や爪がすごく荒れるので、爪をケアするためのグッズ。あとはお化粧道具と筆記道具とメモ帳と携帯電話です。
- 今のマイブームは?
- まずは米粉。米粉のおいしさを1人でも多くの方にお知らせしながら、食料自給率もあげたい。もうひとつは動物愛護。被災地で保護されたペットの受け入れとそのために必要な経費を集めるボランティア活動。
- 一番のリラックス法は?
- 犬の世話をすること。動物社会は裏も表も駆け引きもないから、一緒にいると魂が浄化される。外出するとまた汚れちゃうけどね(苦笑)。
ふじの・まきこ
1949年生まれ。東京都出身。夫の赴任に伴って住んだニューヨークとパリで菓子と料理を本格的に学ぶ。元衆議院議員。菓子と料理の教室「マキコフーズ・ステュディオ」主宰。著書多数。




