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色の魔法を楽しめる体験型コンテンツをご用意。約850年の時を経て蘇った極楽絵をご覧下さい。
往生極楽院は、建物そのものが重要文化財です。さらに天井の下には、国宝の阿弥陀如来と菩薩二体が鎮座しています。煤を落とそうとすると建物も天井画も痛んでしまいますし、国宝を動かして機械を入れることもできません。復元の第一段階となる分析は、困難を極めました。
馬場氏は、赤外線カメラで天井や長押(なげし)などを撮影。阿弥陀如来の背後は狭くて人が入る隙間がなかったため、ファイバースコープで撮影を行いました。赤外線カメラを通すと、肉眼では見えない線が浮かび上がってきます。さらに、馬場氏は往生極楽院の床に落ちていた埃や、剥落した天井画のかけらを採取。それを山口県の産業技術センターに持ち込み、高精度の電子顕微鏡で成分解析を行いました。この電子顕微鏡なら、直径1mmにも満たないような細かいかけらでも、使われている顔料(がんりょう)の成分を元素レベルまで割り出すことができるのです。
極楽の空の部分を、電子顕微鏡で見ていた時のことです。馬場氏は、見慣れないものが写っていることに気づきました。下地として使われた白土(はくど)や、定着剤となる膠(にかわ)の間に見える、繊維のようなもの。分析の結果、これは布海苔だということがわかりました。「驚きました。平安時代、顔料に布海苔を混ぜていたなどという例は他にはありませんから」と馬場氏は言います。
赤外線カメラで見ると、天井画の背景は、下から上へ向かって徐々に濃く塗られていることがわかります。これは、舟底型天井ならではの立体感を生かし、空の高さを効果的に表現するため。濃さの異なる青を何色も作るには、藍に他の顔料を混ぜる必要がありますが、その時に重要な役割を果たしたのが布海苔です。布海苔を入れると画面が乾きにくくなり、乾くまでの間に、他の顔料より比重の軽い藍が表面に浮かび上がって定着します。鮮やかな青だけが、きれいに天井画の表面を覆うことになるのです。
「平安の人は、実に深い知恵を持っていたのですね。極楽の美しいグラデーションは、布海苔なしでは生まれなかったでしょう」。