感染者は150万人から200万人といわれ、「国民病」という表現がもはやオーバーではなくなったC型肝炎。新たに登場した治療法が大きな成果をあげる一方、取り組むべき課題も少なくありません。東京(6月10日/シェーンバッハ・サボー)と大阪(7月8日/メルパルクホール)で開かれた「C型肝炎〜その最新治療を学ぶ」(主催/日本肝臓学会・ウイルス肝炎研究財団・朝日新聞社、協賛/シェリング・プラウ株式会社)には、そうした現状を反映してか、多くの参加者が熱心に聴き入る姿がありました。当日の模様を紹介します。


虎の門病院副院長

熊田 博光 先生
大阪大学大学院医学系研究科
消化器内科学教授
社団法人 日本肝臓学会理事長
林 紀夫 先生

 C型肝炎は、いまや国民病ともいわれ、日本人の感染者は150万人とも200万人ともいわれています。そのC型肝炎が発見されたのは1989年で、そして92年に、ウイルスを排除できる治療としてインターフェロンが使えるようになりました。糖尿病などの慢性病は完治するものは少ないのですが、インターフェロンによってC型肝炎患者は、ウイルスから解放された健康な状態に戻れるようになったのです。当初は、完治するのは全体の10%未満でしたが、今ではリバビリンとの併用によって、治りにくい1型の人でも48週投与で50〜60%が、治りやすい2型の人であれば24週投与で90%が完治する時代となりました。本日は、その治療の最先端情報をお届けしたいと思います。

 日本のC型肝炎の患者数は約200万人と推定され、大阪は特に多い地域です。厚生労働省も02年から検診を推進していますが、受診者数はあまり伸びていません。症状がほとんどない病気ですから、自発的な検診が必要です。またC型肝炎の治療法は、04年12月以降大きく進歩し、以前より多くの患者さんに効果がみられるようになりました。 C型肝炎は、ほかの病気に比べて複雑な面がありますが、本日の講演が、全体像をご理解いただく一助となれば幸いです。そして、40歳以上の方はC型肝炎ウイルスについて、一度検査を受けていただきたいし、感染している方には最新情報を知ったうえで治療していただきたいと思います。

肝がんの原因の多くはC型肝炎 再発をいかに抑えるかも課題

武蔵野赤十字病院消化器科部長 泉 並木 先生

 日本は先進国では珍しく、肝がんは男性の死因の第3位、女性でも4位と上位にあります。毎年約2万5千人が亡くなっており、その原因の約70%がC型肝炎ウイルスの感染です。
 C型肝炎ウイルスの感染者の7割は慢性肝炎となります。この段階では肝機能は正常な人も多いのですが、徐々に進行し、そのうち4割が肝硬変に、さらにその8割は肝がんになります。ただ、進行には個人差があります。進行の早い人の原因の一つはアルコール。次に、肝臓に蓄積した鉄分の影響。肥満も疑いが強く、高齢になってからの感染も進行が早いと考えられています。
 肝機能の指標であるALT(GPT)値が高くなくても、注意が必要です。慢性肝炎の人の9割が43以上の数値なのですが、実は30〜43未満でも42.9%、30未満でも16.7%が肝炎というデータがあります。また、血小板は15万以下で慢性肝炎、10万を切ると肝硬変の可能性があります。
 肝がんの大きな特徴はウイルス性であること。がんの切除に成功しても残った肝臓にウイルスや肝硬変も残っている可能性があるためか、術後1年の再発率は20%と高率で、同じ臓器に再発を繰り返してしまうことがあります。これをいかに抑えるかが大きな課題です。
 最近は高齢者でもインターフェロン治療を受ける人が多くなりました。肝がんのピークは男性で65〜70歳で、80歳以上も多い。最近は女性、特に70〜75歳が増えているのも特徴です。70歳以上だと、男女比はほぼ1対1です。今後は高齢化と女性患者の増加も問題となってくるでしょう。

いずみ・なみき
78年東京医科歯科大学医学部卒。現在、同学医学部臨床教授、近畿大学医学部客員教授。97年から武蔵野赤十字病院消化器科部長。99年にはアメリカ初の肝がんマイクロ波治療を行った。第48回日本消化器内視鏡学会会長賞など受賞。

肝機能正常だから大丈夫との思い込みは危険
感染者は“いま何処チェック”を

金沢大学大学院医学系研究科消化器内科教授 金子 周一 先生

 肝硬変、肝がんなど肝臓病で亡くなる日本人は1年間で約5万人、そのうちの8〜9割がB型、C型肝炎ウイルス感染者です。肝臓は、症状が現れにくい“沈黙の臓器”です。特にB型、C型肝炎は慢性化しやすく、何十年にもわたって徐々に進行します。肝硬変や肝がんになってからでは、十分な治療効果を得られないかもしれません。ですから、ぜひ一生に一度のつもりで、肝炎ウイルスをチェックしてください。簡単な血液検査だけで分かります。
 石川県の調査によると、肝炎ウイルス検診の陽性者のうち精密検診を受けない人が3割もいました。C型肝炎患者は3年後、半分弱の人が病院に来なくなるというデータもあります。せっかくウイルスを見つけたのに、治療をしない人がいるのは残念でなりません。
 血液検査の数値が正常だから大丈夫、と思い込むのも危険です。C型肝炎患者のAST(GOT)、ALT(GPT)や血小板数は、慢性肝炎でも正常値のことがあり、測るタイミングによって変動するため、血液検査だけでは病状を判断できません。必ず、エコーやCTなどを組み合わせた定期的な検査を受けて、いまの肝臓の状態はどの段階か“いま何処(どこ)チェック”をしてください。C型肝炎で肝硬変の人は、7年で2人に1人が肝がんになるというデータがあり、肝硬変、肝がんの早期発見は、特に重要です。金沢大学では、肝硬変の場合、エコーと腫瘍(しゅよう)マーカーは3カ月、CTは6カ月に1回の検査が基準です。主治医と相談のうえ、進行している人ほど期間を空けずに検査することをおすすめします。

かねこ・しゅういち
82年金沢大学医学部卒。米国南カリフォルニア大学客員教授などを経て、04年から金沢大学大学院医学系研究科がん制御学教授、同大附属病院消化器内科教授、肝臓センター・炎症性腸疾患センター長。今年から医学部長も併任。

完治を目指すか発がん抑制か 安全で確実な療法を選択すべき

京都府立医科大学消化器病態制御学教授 岡上 武 先生

 C型肝炎患者の診断では、肝がんが発生しやすいか否か、抗ウイルス療法(ペグインターフェロン単独療法、ペグインターフェロン/リバビリン併用療法など)が効果的か、またその副作用が出現しやすいかどうか、この3点の評価が重要です。その上で、完治を目指すか、それが難しい場合は発がん抑制を目指すのかを判断します。
 ペグインターフェロン/リバビリン併用療法の登場で、これまで治りにくかった遺伝子型1型高ウイルス量では5割が、2型だと9割近くが完治するまでになりました。ただし、糖尿病や高血圧などの合併症がある人では慎重な治療が必要ですし、副作用にも個人差があるので、治療の前に十分な検査をしなくてはなりません。
 1型の場合、48週間の治療が基本。目安としては、4週目までにウイルスが陰性化すれば、ほぼ100%治ります。12週目までだと70〜75%に、24週目まででは40%足らずになります。陰性化の時期が遅くなるほど完治の可能性は低くなるわけですが、48週間の治療で完治しなくても、さらに続けて投与することで治療効果が上がることが分かっています。
 ただ、24週後も陽性の場合、完治の可能性は非常に低くなります。ただし、ウイルスは消えなくても、発がん抑制効果はあるので、投与を続けるか否か検討する価値はあります。
 陰性化しない場合に目指すのは発がん抑制ですが、この治療の基本はインターフェロン単独療法です。インターフェロンの長期間投与で、ウイルスがいるにもかかわらず、発がんを抑える効果があることが明らかになっています。また、病気の進行を早める鉄分を取り除くための瀉血(しゃけつ)療法などもあります。
 C型肝炎の治療では、いかに安全で確実な治療法を選択するか、それが重要です。

おかのうえ・たけし
69年京都府立医科大学卒。02年同学第三内科教授、03年から同学大学院消化器病態制御学教授。日本肝臓学会理事、日本消化器病学会理事のほか、日本内科学会評議員などを務める。

難治性でも約60%、2型では約90%にウイルス排除効果

国立病院機構大阪医療センター消化器科部長 加藤 道夫 先生

 日本でみられるC型肝炎は、ウイルスの遺伝子型により1型(1b)と2型(2a、2b)に分類されます。もっとも多いのは1bで約7割、続いて2aが約2割、2bが約1割です。このウイルスの型と量、年齢や肝炎の進行状態によって治療方針が決まります。C型肝がんの発症を防ぐ最良の方法は、ウイルスを排除することであり、それが可能な薬が「インターフェロン」です。
 日本人に一番多い1型でウイルス量の多いタイプ(難治性)では、インターフェロンが承認された92年当時はウイルス排除率(ウイルスが排除された人の割合)が10%未満と低値でしたが、インターフェロンに「リバビリン」という内服薬を併用する治療法で約20%に上昇、さらに04年に承認されたインターフェロンの新タイプ「ペグインターフェロン」と、「リバビリン」の併用療法では、約50〜60%ものウイルス排除率が得られています(国内治験)。
 残る40〜50%の無効例の対策も立てられています。同併用療法は通常48週間治療を行いますが、すでに海外の臨床試験では72週の長期投与で48週より良好な成績が出ています。日本でも長期投与が行われ、同様の結果が出ることが予測されています。また、ペグインターフェロンと、リバビリンに代わる新薬「プロテアーゼ阻害剤」の併用療法は、来年早期にも日本で治験開始の予定で、過去のインターフェロン治療で無効であった人にも効果が期待されています。
 その他、現在、世界で種々のさらに効果の高い治療法の開発が進められていますので、あきらめることなく、前向きに抗ウイルス治療を考えていただきたいと思います。

かとう・みちお
76年和歌山県立医科大学卒。国立大阪病院消化器科医長などを経て、04年4月に大阪大学医学部臨床教授、独立行政法人国立病院機構大阪医療センター消化器科医長、同年7月に同センター消化器科部長に就任。
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