志望校選びのアドバイス

2020年度入試志願状況

新型コロナウィルス感染拡大防止対策の影響で、新年度の授業がまだ始まっていない人が多いでしょう。そのため、特に高3生の中には、2021年度入試のことを考えると心配でたまらないという人もいると思います。でも、高2までの学習を見直す時間をきちんと確保できれば、学校再開後に高3の範囲の学習の遅れのリカバリーは十分可能です。決して焦ることはないように、今できることを確実に、そして集中してこなしていきましょう。

さて、今月は2020年度入試の概況についてまとめましたので、参考にしてください。なお、文中の( )内の数値は志願者数の前年度対比指数を表しています。

<国公立大>
■国公立大は9年連続減少、公立大は5年ぶりに減少

文部科学省が発表した2020年度国公立大一般選抜入試の確定志願者数に、駿台で集計した独自日程で入試を実施した国際教養大、新潟県立大の確定志願者数を合計すると、志願者数は443,066人で前年度と比べて30,492人(94)減少しました。前年度は2011年度以来8年ぶりに増加しましたが、再び減少に転じ、志願者数は45万人を下回る結果となりました。当初は2021年度入試からの導入が予定されていた大きな入試改革への不安、さらにセンター試験の平均点ダウンの影響を色強く反映した出願動向となりました。

国立大は前期が11,753人(94)、後期は11,208人(92)といずれも減少し、国立大全体では22,961人(93)の減少で9年連続減少しました。公立大は中期が261人(99)の微減でしたが、後期が3,319人(92)、前期は3,730人(94)、独自日程は221人(94)といずれもはっきりと減少しました。公立大全体では7,531人(95)の減少で、5年ぶりに減少しました。

■国公立大の系統別では、理・工系が底堅い人気

工(98)は微減、理(97)に留まりましたが、他の系統はいずれもはっきりと減少しました。ここ数年の「文高理低」という動向はすっかり姿を消しました。

文系では、一定の固定層に支えられている人文科学(96)、このところの低い人気で下げ止まり感のある法(96)の減少率は小さくなりましたが、他の系統ははっきりと減少しました。国際関係(82)は前年度増加の反動に加えて、募集人員が少ないことから高倍率になりやすいことも敬遠の要因となりました。社会(88)、外国語(89)も前年度増加の反動で減少しました。また、経済・経営・商(91)は、オリンピック・パラリンピック後に予想された経済指標の後退、昨今の厳しい国際情勢等への不安を反映した系統への人気低下などの影響で、2年連続減少しました。

理系では、農・水産(93)は模試動向でみられた系統への不人気に加えて、前年度の反動でやや減少しましたが、理(97)、工(98)は国公立大全体の減少率より小さく、人気の低下に底を打った感じがあります。

メディカル系では、入学定員増加による間口の拡大で現役合格率がアップし、既卒受験生の発生数が減少している医(87)は6年連続減少、この医の競争緩和で志望変更による流入が減少している歯(90)も減少しました。薬(93)は、薬剤師過剰による将来への不安から2年連続減少しました。保健衛生(92)は、比較的センター試験の目標ラインが低く、センター試験の配点比率が高い地方公立大での設置が多く、センター試験の平均点ダウンの影響を大きく受けて、国公立大への出願自体を断念した層がいた影響がみられました。

文理いずれからも志願者がいる系統では、オリンピック・パラリンピック効果が薄れたスポーツ・健康(89)、教育を取り巻く厳しい環境から敬遠された教員養成・教育(90)は、いずれも前年度の反動も加わって減少しました。

<私立大>
■私立大は14年ぶりの減少へ

駿台が集計した277大学の志願者数が確定した一般選抜入試(AO・推薦入試等の特別選抜入試を除く)募集単位を集計した延べ志願者数は、329.5万人(96)で前年度より約4%減少しています。最終的な延べ志願者数は14年ぶりに減少して、373万人前後になるものと予想されます。これは、2020年度入試では、前年度の弱気な出願動向、いわゆる「安全志向」により、難易度レベルを下げて大学に進学した受験生が多く、これにより既卒受験生が減少したことに加えて、結果的には先送りになった2021年度に予定されていた大きな入試改革への不安から、前年度以上に中堅校のAO・推薦入試といった特別選抜入試を利用して大学進学を決定した受験生が多かったことが減少の大きな要因といえます。

■私立大志望者の人気の高い系統は文系から理・工系へ

系統別では、増加しているのは理(107)、工(104)、農・水産(103)、芸術(102)の4系統のみです。受験人口の減少、AO・推薦入試で大学進学を決定した受験生が多く、一般選抜入試を目指した受験生が減少したことに加えて、一般選抜入試の中のセンター利用方式の大幅減少が影響しています。

前年度に増加率が鈍った文系の系統は全て減少に転じており、国際関係(85)の減少率が最も大きくなっています。近年、特に増加が顕著な系統でしたが、反動が一気に表れました。次に減少率の大きい法(88)は、駒澤大がほぼ半減し、成蹊大、成城大、専修大、東洋大、法政大、大阪経済法科大、摂南大、関西学院大などの大幅減少が影響しています。

前年度最も増加率の大きかった総合科学(91)も減少しています。文理のいずれからも志願者のいる系統ですが、前年度新設の中央大・国際情報が前年度の高倍率の反動で半減以下の大幅減少、駒澤大・グローバル・メディア・スタディーズが6割以上の激減、法政大や近畿大などの大幅減少が影響しています。

理(107)、工(104)はいずれもやや増加していることから、 私立大志望者の人気の高い系統が文系から理・工系へ移ったことがわかります。農・水産(103)はやや増加していますが、前年度は約5%減少したため、人気が戻っていないことがわかります。理系の中でも、メディカル系は全て減少しています。特に歯(86)、薬(90)の減少が目立っており、理・工系と比べると、人気低下が顕著です。

■私立大文系は難関グループの減少が顕著

上のグラフは、私立大277大学の一般選抜入試の志願者数集計において、2019年度第3回駿台・ベネッセマーク模試(2019年11月実施)の合格判定ライン(B判定ライン)を基にして、学部単位(医学科は別集計)で5つのグループ(上位Aグループ~下位Eグループ)に分類し、各グループの志願者数合計の前年度対比指数を示したものです。

文系では、合格目標ラインの低いEグループ(123)は大幅増加していますが、その他の4グループは減少しています。特にAグループ(89)、Bグループ(91)といった難関のグループは10%前後の減少で、文系の弱気な出願動向が強まったことがわかります。

理系では、Aグループ(97)がやや減少、Bグループ(98)は微減に留まっています。理・工系の人気上昇から、文系のようなはっきりとした弱気な出願動向はみられません。理系のその他の3グループは増加しています。増加率は下位グループほど大きくなり、特にEグループ(126)は大幅増加しています。これは合格確保のための慎重な出願が要因で、文系のEグループ(123)も同様の要因で大幅増加しています。

以上、述べてきたように、2020年度入試は文系と理・工系の対照的な人気、私立大志願者の弱気な出願動向が特徴でした。私立大に関しては、むしろ強気に第一志望を貫いた受験生がいい結果を残すことができた例が多かったようです。2021年度入試は、新型コロナウィルス感染拡大防止対策の行方により、まだまだ予想しにくい部分もありますが、文系の人気低下、理・工系の底堅い人気は継続するものと思われます。また、有力私立大が近隣に多くある都市部では、この環境下では当初の予想以上に2021年度から始まる共通テストを敬遠して、私立大に集中する可能性もあります。いずれにしても、共通テストを恐れずに、「第一志望」は絶対にあきらめないという気持ちを強く持って、そして2021年度入試を目指している受験生全てが同じ条件であることを冷静に受け止めて、自宅でもできることを日々主体的にこなして、学力養成を心がけてください。

《コラム:2021年度入試に向けて⑩》

─新型コロナウィルス感染拡大防止対策と2021年度入試─

2021年度入試に向けてのポイント、今月は、直接的な入試改革から少し話題は逸れますが、「新型コロナウィルス感染防止対策と2021年度入試」です。

本編でも触れていますが、今年は高3生の皆さんは例年にない4月を迎えました。新型コロナウィルス感染拡大防止の対策として、3月から全国の高校や中等教育学校などが臨時休校となり、少なくとも大型連休終了まではその措置が続いています。

これに対して、高校などでは、自宅学習用の教材や課題を提供したり、インターネット経由のオンライン授業を行ったり、予備校や出版社などが提供する映像授業を視聴させたりして、登校できない生徒の皆さんの学力伸長を助ける工夫を行っています。

しかし、先生も生徒、保護者の皆さんもこういった状況には不慣れなために、従来のような対面授業が行われないことに対して不安を募らせている方々も多いのではないでしょうか?

そこで、例年とは違う今年のこの時期にぜひ、やって欲しいことをまとめてみましたので、参考にしてください。

(1)「夏は天王山」はない!いまこそ「天王山」

受験では、昔から「夏は天王山」といわれてきました。特に、高1・2の既習事項の中の苦手・不得意分野を克服するには、最適な期間といわれてきました。でも、今年は休校となり遅れている進度を取り返すために、夏期休暇は大幅に短縮される可能性があり、夏に期待した先送りは致命傷です。

学校が休校となっている今こそ(地域によっては大型連休明けも平常の授業体制に戻れない場合もあるかもしれません)、徹底的に既習分野の復習と苦手・不得意分野の克服に力を尽くしてほしい思います。その時には、疑問点を質問できる環境が大事です。高校や予備校などの先生に相談してみましょう。そして、学校が再開されたら、引き続き苦手・不得意分野の克服とともに、新しく学習する分野の理解に精力を傾けましょう。

(2)センター試験の過去問で基礎力チェック

2021年度入試からセンター試験は共通テストに移行します。しかし、高校の教科書・カリキュラムには変更がないので、今のカリキュラムに代わった2015年度入試以降のセンター試験の過去問は基礎力チェックには最適です。30年間続いたセンター試験は、大学や高校の先生方からの評価も高い良問がそろっています。基本的な出題範囲やレベルは共通テストでも変わりません。少し問われ方が変わるだけです。本格的な共通テスト対策模試が実施されるのは7月・8月以降です。新しい出題形式には模試等で慣れるとしても、基本的な基礎事項の確認をぜひ休校で時間に余裕のあるこの時期にやって欲しいと思います。

(3)大学のことを調べよう

多くの大学では、前期中は対面での講義を行わずにオンラインでの講義に切り替えています。このような状況なので、例年のようなオープンキャンパスの開催もなかなか出来ない状況です。また業者主催の合同大学説明会の実施も中止が発表されています。そこで、大学では在学生への講義だけでなく、受験生へもインターネットを通じた情報発信に力を入れています。

学習の合間には、ぜひ志望校のWEBサイトを訪れてほしいと思います。在学生以外にもオンライン講義の一部を開放している大学もあります。自宅に居ながらにして、全国の大学の生の情報を手に入れる環境が出来つつありますので、これをうまく利用して、志望校をもっと身近に感じてください。そうすれば、学習のモチベーションも必ずアップします。

(4)入試情報に例年以上に敏感になろう

入試改革の2つの目玉であった、記述式問題の出題と英語4技能資格・検定試験の一括利用が見送られたことで、2021年度入試は基本的に2020年度入試と大枠は変わらないことになりました。ところが、新型コロナウィルス感染拡大防止に伴う措置の関係で、今後入試スケジュールに変更が生じる可能性があります。4月17日に萩生田文部科学大臣は記者会見で、「総合型選抜(旧「AO入試」)、学校推薦型選抜(旧「推薦入試」)の選考スケジュールを後ろ出しにできないか」との発言がありました。

このように、今後の状況次第ですが、受験生のことを考慮して、いろいろな入試スケジュールの見直しが行わる可能性もありますので、文部科学省、大学入試センター、各大学から発信される情報に例年以上に敏感になって下さい。

以上、4つのアドバイスをまとめてみました。例年に比べると確かに厳しい環境かもしれません。しかし、全国の受験生が同じ条件です。約10年前の2009年の新型インフルエンザ流行時は西日本から流行が拡大したため、9月頃までの模試成績では圧倒的に東日本勢が好成績だったのですが、最終的には地域間格差は見られませんでした。1月の共通テスト、2月・3月の私立大入試、国公立大個別試験まではまだまだ時間はたっぷりあります。まさに、「自分から率先してやる!」という学力の3要素の1つである「主体性」が試される入試になりそうです。このコラムをお読みの皆さんの頑張りを期待しています。

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