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鮮やかに自分を変えられる大学です

  大学を取り巻く環境は激変している。少子化によって07年度には志願者と大学の入学定員が同数となり、選びさえしなければ誰でも入学できる状態になる。もはや大卒に特権的な意味はなく、社会や企業が大学に求めるものも変化している。こんな時代の大学とはいったい何か、何を学ぶべきなのだろうか。専修大学の日高義博学長は「大学は学生が自ら変身するための場である」と熱く語る。このため今年4月から学年・学部を横断したキャリアデザインセンターを発足。近視眼的な就職対策ではなく、学生と教員が一緒になって人生設計や生き方を考え、学内にフィードバックしていくという。
■明治期の建学の精神を見直す

 
専修大学は、明治維新後に留学先のアメリカで出会った若き4人の青年たちが創立した大学です。彼らは、維新前は討幕派と幕府側に分かれていたのですが、そんな過去のしがらみを捨てて、新しい社会に必要な人的な基盤をつくろうとしたのです。そのために最初から日本語で授業を行いました。外国語による授業では、知識や規範は民間に浸透しません。理想とする市民社会を草の根からつくりあげていくことが、彼らの建学の精神だったのです。

  実際に政財官界に多くの有為な人材を輩出し、明治の新社会を支えたのですが、彼らは真のサムライだったためか声高にPRなどしませんでした。おかげで専修大学は一般的に地味な印象を持たれているかもしれませんが、近代日本の黎明期に多大な貢献をしており、今でも社会の要職についている先輩たちは少なくないのです。いわば日本の屋台骨をささえる人材を育成してきたことが本学の基本的な伝統です。

  こうした建学の精神は現在も専修大学の中に息づいています。たとえば法曹界なら「赤ヒゲ」的な弁護士といってもいいでしょう。企業法務などに携わっていても、常に視線を社会の現実に置き、市民の辛さや苦しみや悲しみに根ざした心を持つということです。困難から逃げないで、しぶとく立ち向かうこともサムライ・スピリットです。 ただし、創立者たちの生き方を現代的に捉え直す必要があるでしょうから、私はジェントルマンと表現しています。しかもパワフルなジェントルマン、女性であればハートフルでしなやかな強さを持つレディを育成することが本学の使命だと考えています。

  現代は建学時、約130年前の日本と同じではありません。しかしながら、人間が持つべき精神に大きな違いはないだろうと私は考えています。むしろ、明治の激動期から新生日本をつくってきた創立者たちの専大スピリットが、今ほど必要な時代はないのではないでしょうか。価値観の混乱や金銭至上主義といった風潮の中で、自分なりの確固とした理念を持ち、社会の中でそれを実現していくこと。本学における建学の精神は、時を超えて教員そして学生諸君に脈々と継承されているのです。

■大学4年間で自分を変える

  大学に求められるものは多様化しています。教養教育も必要であり、専門教育も必要です。教育のあり方もカリキュラムも時代の要請によって常に変化しなければなりません。

  しかし、大学の基本的な役割は学生自身が自らの手で自分の殻を破り、大きな可能性を手にしていくことだと信じています。私自身も、専修大学に入学した当初は法律の実務家になろうと考えていました。ところが2年の時に、ある教授の講義に感銘を受け、法学研究者の道にはいることを決心しました。それからは勉強がおもしろくなり、気がついたら首席で卒業していました。補欠で入学したのに司法試験にみごと合格、今では第一線の弁護士として活躍しているOBもいます。

  こうした変身の事例は本学では珍しいことではありません。むしろ伸び切っていない学生のほうが鮮やかに変わることができます。いわば4年間で自分を変えられる大学ということですね。入学時の成績にかかわらず、明確な意識と目的さえ持てば、能力はあとから自然についてきます。大学にはそのためのアカデミック・リソースが揃っていますからね。

  問題は、そうした自己発見や、前向きな生き方や使命感を自発的にどのように得ていくかということになります。伝統や学風、それに社会で活躍するOBの皆さんに触発されるなど様々なきっかけが考えられますが、それを促進させるひとつの仕掛けとして、今年4月からキャリアデザインセンターを発足させました。

■学年・学部を横断したキャリアデザインセンター

 
これまで勉強するのは学部、学生の面倒をみるのは学生課、就職は就職課といった形でそれぞれ単独で学生のキャリアづくりを支援してきました。しかし、キャリアというのは企業から内定をもらって就職するという狭い概念ではありません。

  自分の将来を見据えて、広い意味での人生設計や生き方を考えるということです。これには画一的な手法やノウハウなんてありませんから、学生自身が自主的に考えていかねばならない。

  そのための場として誕生したのがキャリアデザインセンターなのです。就職を控えた3年次だけというのではなく、1年次から指導していきます。もちろん学部を横断した組織になっています。

  大学で何を学ぶべきか、社会に出て何をしたいのかといった基本の有無で大学生括は大きく変わってきます。まだスタートしたばかりですが、こうした意識は入学時の導入教育にも影響してきます。本学における教育のあり方にも大きく関係する。このため、キャリアデザインセンターでの発見や分析を広く学内にフィードバックしていくことも大きな目的になっています。


■学生とOBを巻き込んで「社会知性」を育成する

 
創立の原点に立ちかえると共に、本学では21世紀ビジョンとして「社会知性(Socio-Intelligence) の開発」をかかげています。  これは、まず社会が要求する知性とは何かを考え、逆にあるべき社会をつくるためにはどんな知性が必要かという、社会と知性の双方からのインターアクションでものごとを考えるという理念です。現実社会の要請にこたえるだけでなく、自然と人間がどう共生していくべきかなど、あるべき社会をつくるための「知の創造」を実現していこうということです。

  それを担うのはシステムやノウハウではなく、まぎれもなく人間ですから、倫理感や豊かな人間性も含まれます。国際性や専門教育も大切であり、いろいろなテーマが考えられるでしょう。方向性はひとつでも切り口は多元的であり、それだけやりがいのある大きな理念だと思います。

  この「社会知性」は突然に生まれたものではなく、実は最初に述べた4人のサムライたちの理念を現代的に言いかえたものにすぎません。ですから、これまでの教育とそれほど異なった概念ではないのです。しかしながら、専修大学のカラーとして外部ではあまり強く認識されてきませんでした。

  そこで、OBも含めたオール専修として、今後は幅広く展開していくつもりです。大学というアカデミックな場に、社会の実務で鍛えられた知性が融合する。大学からの発信を企業人の専修OBが受けとめる。こうしたダイナミックで相乗的な交流によって、専修の「人間教育」はますます豊かなものになっていくはずです。
(談)
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