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ITの急速な発達、国際化の進展、規制緩和と市場化など、社会構造が大きく変化している。その中で問われているのが、大学の意味や意義である。明治大学でも、こうした時代の変化に対応して各種の改革を進めているが、私たちが改めて知りたいのは「なぜ大学に行かねばならないのか」「大学では何が学べるのか」ということではないだろうか。そこで納谷廣美学長に、この素朴な質問からスタートして、明治大学の改革の方向性を語っていただいた。
■国際社会で「共生」できる人材の育成
戦後60年を経て、日本は大きく変わりました。少子化を背景として大学間の競争も激化しています。おそらく3割や4割の大学が合併などで存在が消えていくといわれています。このような競争的環境の中で生き残る大学とは何かといえば、これは逆説的ですが、大学らしい大学ではないかと私は思います。
大学には様々な機能が要求されていますが、一言でいえば「知」の拠点であり、専門知識を修得する場であることは当然のことですが、これに加えて学生達が歴史観や哲学、倫理などの「教養」を積み重ねていく場でもあります。この教養教育によって、学生は社会変化や異文化に対応する「適応力」を身につけることができます。目先の技術や実務知識は専門学校のほうが得意な面もあるでしょう。しかし現在は、人間は80歳近くまで生きるようになりました。その中で技術も知識もどんどん変わっていきます。さらに国際化も進展していくでしょう。こうした変化に適応し、国際社会の中で活躍するためには、知的体力(社会力)が必要です。それが得られるのは大学しかないだろうと、私は思っています。
明治大学は1881年に、フランス法の自由民権思想を学んだ3人の青年によって創設されました。明治の草創期に「近代市民社会を担う聡明な若者を育成する」ことを目的としており、この精神は明治大学のアイデンティティとして継承されています。それが「第三の開国」期と評すべき現代にあって、再び浮上してきたと考えています。最近の「官から民へ」の政策提言は、まさしく本学にとって「暁の鐘」といえます。
もちろん現代と明治時代がまったく同じというわけではありません。状況はより複雑で高度になっています。そのために大学改革が必要なのですが、基本的なテーマは「共生」であると考えています。たとえばカナダのケベック州についてお話しますと(本学は同州から文庫を寄贈されている)、このケベックはカナダの中でも特殊な地域です。フランス語圏で文化そのものから異なります。それでも、他の州と仲良くひとつの国を構成しています。こうした「個」を尊重したうえで、他との「共生」という視点を持ったことが、21世紀の国際社会で活躍する者にとって必要なことになるでしょう。
■国際系とスポーツ系の2つの新学部を設置
各学部等は、それぞれカリキュラム改正などの改革に取り組んでいますが、大きな変化としては08年には国際系とスポーツ系という2つの新学部を設置する予定で具体的検討に入っています。まず国際系では、日本人としてしっかりした見識を持ち、グローバル化した社会において「強い個」として広く国際社会で活躍できる人材を育成します。
スポーツ系は、平均寿命の長期化にも対応したものです。日本は世界一の長寿命国なのに、法律や環境はそれに追いついていません。また、スポーツを単にお金稼ぎの道具としてしか考えない企業もあります。明治大学は(駅伝をはじめとしてスポーツに強い大学です)学生スポーツを大学教育の一貫として位置づけています。この新学部では、スポーツを通して学校と社会を連携し、地域社会のリーダーになれる人材を育成するつもりです。
■「社会との連携」
「共生」という考え方を教育・研究の現場で言い換えると、そのテーマが「社会との連携」です。すでに駿河台にはアカデミーコモン、秋葉原駅前にはアキバサテライトキャンパスという社会に開かれた専用施設があります。また生涯学習機関であるリバティ・アカデミーが各種の公開講座を実施しています。これからは学生も教員も社会から研究ニーズを得て、その研究を実社会に還元していく仕組みを拡大していくつもりです。
幸いに明治大学はお茶の水という都心にあるのですから、大学も学生も、その有利な立地を最大限に利用すべきです。大手町から近いので、財界人も頻繁に講師としてお呼びしていますが、ジョブ・インターン(学生が企業に派遣されて就職前に仕事を経験する)なども含めて、社会との「風通し」をさらに向上させる所存です。
■校友会・父母会・大学との緊密な連携
これまで大学は入試という入口のみで語られてきましたが、現在では出口=就職も大きな要素として考えられています。そこで明治大学は、入口から出口まで一貫したサポート体制を整えています。在学中は1年から4年まで通して仕事の意識を持たせるキャリアデザインに関する全学組織を立ち上げます。また、明治大学は伝統がありますから、数多くのOB・OGが社会で活躍しています。全国的に展開している校友会組織や、在学生の父母会組織との連携を高め、大学も含めたトライアングルで学生を支援していきます。
もともと明治大学の校友は結束力が強く、「同心協力」という言葉がモットーのひとつになっています。それが駅伝などのスポーツの応援にも反映されているのですが、こうした意識を大学も含めてさらに涵養していきたいですね。それこそが実は伝統大学ならではの強みであり、学生の勉学や就職を背後から強く支えていくものになるはずです。
■多彩な可能性を持つユビキタス・カレッジ
最後に紹介したいのは、明治大学が全力をあげて取り組んでいる「ユビキタス・カレッジ」です。「ユビキタス・カレッジ」とは、いつでも、どこでも、誰でもが学べる、つまりユニバーサルなアクセスが可能な大学を意味します。すでにインターネットを活用した学習支援システム「Oh-o! Meijiシステム」がありますが、これをE-Learningシステムと有機的に結合させ、ユビキタスカレッジを展開していく予定です。
それによって地方や地域の人たち(将来的には、世界の人々にも)がいつでも明治大学にアクセスでき
るようになり、その学び方や内容も飛躍的に多彩になっていくと思います。在学生も4年間で2つの学位を取得するなど、その可能性は想像もつかないほどです。そして、明治大学は人生のある一時期だけの存在ではなく、一生を通じて利用できるものになっていくでしょう。
これこそが「ユビキタス・カレッジ」の本当の価値であり、意義だと考えています。
大学にしかできないこと、明治大学だからできることなどを目指して、改革は様々に進行しており、駅伝のように紫紺のタスキを次の世代に渡しつつあるという状況です。 これからも明治大学に期待していただきたいと思います。
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