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必ずしも欧米型の競争原理主義が悪いわけではないが、弊害が目にあまるようになってきた。まるでそれを見越していたかのように、東洋の知と哲学を基本とした理念を今日まで受け継いできたのが東洋大学である。若き哲学者、井上円了が1887年に創設した哲学専修の専門学校「私立哲学館」を前身としているが、現実に応用できる「ものの見方・考え方」を身につけることを目的としていた。この建学の精神は現代にも継承されているが、松尾友矩学長は「これからは知力だけでなく、徳力も同時に身につけねばならない」と語る。
■東洋哲学を基礎とした文と理の総合大学
東洋大学は、明治の哲学者、井上円了を創始者とする119年の伝統を持つ大学です。彼は哲学者であると同時に、仏教者、心理学者、教育者、地球を旅する国際人など様々な顔を持っていました。彼にとっての哲学とは「万物の原理を探り、その原理を定める」学問であり、現実社会と積極的に関係し、社会に有用で、合理的な「ものの見方・考え方」をいうのです。
これが井上円了のいう哲学であり、この哲学を大事にすることが東洋大学の伝統的なポリシーになっています。
それを受け継ぐ私たちの使命は、「東洋の知」に基づくグローバルスタンダードを研究し、提起していくことだと考えています。欧米型の考え方がグローバルスタンダードとしてもてはやされてきましたが、それによる現代の文明社会は不安定さを増してきています。過度な競争主義や拝金主義で何が起きているかは、もう皆さんがご存知でしょう。このような時代の中であるからこそ、哲学とそれに伴う徳力あるいは倫理観が強く求められているのだと思います。
そうした思いから、全学をあげて、「東洋の知」の一つである「共生」の概念を軸とした教育・研究に取り組んでいます。環境との共生、異文化との共生、社会との共生など様々なテーマがありますが、大切なことは、この「共生」意識がなければ、社会の持続的な発展は望めないということです。たとえば企業も自社の利益追求だけでは、いつか成長に限界がやってきます。やはり社会の一員としての自覚を持ち、社会貢献による利益の還元がなければ、誰も支持しなくなるでしょう。ようやく今になってCSR(企業の社会貢献)が注目されるようになりましたが、「共生」の実践という意味で興味ある状況といえます。
ただし、「共生」の定義あるいは概念は未成熟なままに残されているのが実情です。本学では、この「共生」の複雑な概念を整理・淘汰する中で「共生学」を構築し、発信する活動を続けていく計画を持っています。東洋大学では、このような「共生学」をテーマとして、次のような活動を展開しています。
■グローバルな影響を持つ「共生学」の構築と発信
東洋大学の特色のひとつは、文系学部と理工系学部を備えた総合大学であるところです。このメリットを活用して、「共生学」の構築を様々な分野からの共同研究としてアプローチしています。そして、これらの成果を取り入れた「現代社会と『共生』を考える」という全学総合科目を開講しています。この講義はインターネットを利用し4キャンパスに同時配信されており、全学部で受講可能となっています。東洋的な知の所産である自然との共生、異文化との共生、産業界との共生、そして社会との共生を体系的・具体的に学ぶことができるのです。
「共生学」の及ぶ範囲は非常に広いと思います。本学には国際共生社会研究センターや地域産業共生研究センターが私立大学学術研究高度化推進事業による整備対象に選ばれ、既に活動を継続してきています。また、「共生」の意識は旧山古志村(現長岡市)へのボランティア活動など学生の実際の活動にも広がっています。
■国際人としての活躍を期待してのTOEFL特別講座の開設
21世紀の地球社会は、まさに国際的な「共生」が求められるものとなりますが、そこでの活躍には語学の習得は不可欠なスキルといえます。2006年10月からは、米国モンタナ大学との協定に基づき語学教育の専門教員を招いて、週4回の集中的な授業を1年間受けられるプログラムを始めます。在学中に留学を希望する人や、語学を視野にいれた学生のキャリアアップを図るためにも、役立つものとしたいと思います。
■情報化社会を実践できるナレッジスクエア
学問だけでなく、学習環境の整備として、ノートパソコンを自由に使えるナレッジスクエアを昨年末にオープンさせました。プラズマ大型ディスプレイを利用して常時CNNニュースやブルームバーグ提供の経済情報も放映しています。社会の動きを迅速に報道するニュースやマーケット情報に常に接することで、教室で学んだことを現実に則して理解してもらうことが狙いです。
配置したパソコンも視野をさえぎるデスクトップではなく、ノート型にしたことが一工夫。これはいま注目されている新しいオフィスのレイアウトをモデルにしています。情報教室としての利便性に加え、情報化社会との「共生」を考慮した環境づくりといえるでしょう。
■キャリア形成支援と就職支援は特に充実
大学の教育の成果は、卒業生が実際の社会で元気に活躍してくれなければなりません。端的に言えば、学生の皆さんが、それぞれに自らの社会におけるキャリアをどのようにイメージし人生設計をしていくかが、問われることになります。その意味で、大学のキャリア形成支援の意味は大きなものがあります。東洋大学では、早期から体系的かつ網羅的に、次のように様々なキャリア形成支援と就職支援を行っています。
1)特別講演会
財界人や著名人による、「キャリア形成を考えるための特別講演会」を実施。2005年には日本銀行総裁の福井俊彦氏や、ジャーナリストの田原総一朗氏、櫻井よしこ氏、トヨタ自動車取締役会長 奥田碩氏、富士ゼロックス会長 小林陽太郎氏、建築家 安藤忠雄氏、旧山古志村(長岡市)元村長 長島忠美氏をお呼びしました。06年度も普通では聞くことのできない各界トップの方々のお話から、自らのキャリアに対するヒントを学べると思います。
2)キャリア形成支援
キャリアデザイン講座、インターンシップの紹介、大学院進学相談会から公務員講座まで、多彩なメニューが揃っています。入学時から「自分探し」をスムーズにしていくために、学年別・目的別など細分化されていることも大きな特長です。
3)就職支援
学内会社説明会、OB・OG懇談会、就職のための合宿講座、マスコミ就職講座、女子学生のための就職講座などに加えて、エントリーシートの書き方やSPI試験対策、それにリクルートファッションの指導も行っています。手取り足取り、丁寧過ぎるのではという意見もあるでしょう。しかし、バリエーションを揃えることで、一人ひとりにあった進路を見つけるための「きっかけ」を探し出してほしいと考えているのです。
4)キャリアアドバイザー制度の実施
キャリアアドバイザーとは内定を得た4年生のことで、彼らが自分の体験に基づいて後輩に就職に関する情報や対応などを伝授するものです。今まさに就職活動に直面して戸惑う後輩に、経験者である4年生が優しくアドバイスする姿が見られます。大学側が情報を提供するだけでなく、学生間での情報伝達、支え合いが機能していることが嬉しいですね。
■「知徳兼全」な人材を育成
「共生」は東洋大学としての代表的なテーマですが、教育に関しては「独立自活の精神に富み、知徳兼全な人材を輩出し、もって地球社会の貢献に寄与する」ことを基本的な方向として定めています。「知徳兼全」とは知力とともに徳力を備えていることを表しています。
知力はいうまでもありませんが、この徳力こそが今の時代に求められているものだと思います。「徳」とはモラルであり、他者や社会への貢献によって得られるものです。いわば人間と、それを取り囲む事物すべてへの配慮であり、それこそ「共生」の精神的な核をなすものといって過言ではないでしょう。
東洋大学が教える知力と徳力は、不安定化する現代だからこそ輝くべき資質ではないかと私は思います。何ものにも流されない主体性を持ち、「生き方に哲学を持つ挑戦者」の気概を備えた人材を育成すること。それが現代の東洋大学の使命だと考えています。
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