大学プロジェクト【キリスト教】キリスト教が示す豊かな人間教育


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米国メソジスト監督教会の宣教師たちによって開かれた三つの学校を源流に1949年、青山学院大学は創設された。キリスト教信仰に基づき、公正な立場で社会に貢献できる人間教育を行っている。青山学院のスクール・モットーは「地の塩、世の光」という新約聖書の言葉で、社会に貢献し、世界をよりよくするための教育研究共同体でありたいという意志を表したものだ。
 「本学が目的とするのは、社会とそこで暮らすすべての人々に対して責任を果たせる自律的・自主的な人間の形成です。学生には、高い倫理性をもち、豊かな感性を備え、自ら問題を発見し解決できる能力を習得してほしいと考えています」
 伊藤定良学長が語るように、青山学院大学の教育目的は将来の基盤となる人間性・知識を備え、柔軟な思考力と複眼的な視野をもって社会に貢献できる人材を育むことにある。
 こうした理念を現実にするために、特長的な独自の教育が行われている。そのひとつが全学共通の教養教育「青山スタンダード」だ。学部・学科の枠を超えて学ぶ環境が整えられ、1年次に行われる少人数のゼミ形式授業「フレッシャーズ・セミナー」をはじめ、ひとつのテーマを専門分野が異なる3人の教員がリレー形式で講義を行う「教養コアの総合科目」、専門分野への橋渡しとなる「テーマ別科目」など、学生の能力を段階的に育むカリキュラムが用意されている。
 大学の4年間という人生の大きな転機ともなりうる重要な時期に、この全学共通教育システム「青山スタンダード」によって、十分な基礎教養と問題解決能力を身につけさせるとともに、青学生ならではの豊かな人間の形成に努めている。
 この他にも、同大学には教員と学生が一緒になって活動する「アドバイザー・グループ」という学部横断的な組織があり、スポーツや読書、ボランティア活動などを通じて、学生の見識を広げ、成長を促す場となっている。また、体育会陸上競技部が33年ぶりに箱根駅伝への出場を決めるなど、充実した教養教育で育まれた自律性・自主性は、課外活動にも表れている。
 青山学院は、来年、創立135周年を迎える。社会の要請に応えて進化を続ける青山学院大学は、2009年4月に、文学部を改編し、教育と心理を総合的に学べる「教育人間科学部」を新設し、経営学部を「経営学科」と「マーケティング学科(新設)」の2学科にする。さらに、2012年を目標に、就学キャンパスを再配置する計画も検討中だ。
 「大学は、教員や学友との交流による、創造、学び、出会いの貴重な場です。私たちは教育・研究をいっそう向上させる努力を継続します。本学には、学生がさらに輝き、成長できる環境があると自負しています」


 第2次世界大戦後、教育に携わる日本のキリスト者の間で、平和な社会の実現を担う人材の育成を目指して、キリスト教精神に基づく大学設立の動きが起こった。その後、日本と北米で展開された新大学設立のための募金活動に対して、その趣旨に賛同したキリスト者・非キリスト者を問わない数多くの人々、さらに企業、団体などから寄せられた募金を基に設立されたのが国際基督教大学(ICU)である。「大学の礎が多数の人々の善意によって築かれたという例は、ICUをおいて他にはありません」と鈴木典比古学長は語る。「本学の使命は国際的社会人としての教養をもって、神と人とに奉仕する有為の人材を養成し、恒久平和の確立に資することです。そして創立以来、その名に示される通り、国際性への使命(I)、キリスト教への使命(C)および学問への使命(U)の三つを掲げ、その実現に努めてきました」
 ICUはこの理念に基づき開学以来、リベラルアーツ教育を実践してきたが、2008年4月には教学改革を実施。従来、教養学部にあった6学科を廃止し、人文科学、社会科学、自然科学の主要分野を網羅した31の専修分野(メジャー)を設置した。学生は入学前に専攻を定める必要がなく、各メジャーや一般教育などのさまざまな科目を探索した後、2年次終了までに自分の希望や適性を考慮して自分がもっとも進みたいと思う専修分野を主体的に決定する。さらに二つの異なるメジャーを専攻する「ダブルメジャー」や、それぞれのメジャーの比率を変えて履修する「メジャー、マイナー」なども選択でき、学生は自らの好奇心に基づき自由に学ぶことができる。「こうした制度を運営していくためには、教員と学生の細かなコミュニケーションが必要です。少人数教育のICUならではといえるでしょう」。また世界各国の諸大学と互換可能な厳格なGPA制度、3学期制などをもち、文字通り「世界基準」の大学であるといえる。
 国際性も使命に持つICUでは、日本のみならず世界各国から学生が集まっている。学生には「英語教育プログラム(ELP)」、または「日本語教育プログラム(JLP)」を課し、日英バイリンガリズムを実現。語学の科目を除き、授業でも、生活面でも日本人学生と外国人学生の区別はない。また、外国語科目だけでなく専門科目を教える外国籍の教員も多い。「教室だけではなく、キャンパスそのものが、日常的な異文化との触れ合いの場となっているのです」
 鈴木学長は言う。「21世紀の世界は躍動する明るい未来と共に深刻化する問題を抱えています。本学は、このような世界でしっかりとした『個』を持ち、真のリーダーシップを発揮し、世界の問題を解決してゆく行動力を備えた人材をさらに輩出し続けていきます」


 上智大学は、460年前にフランシスコ・ザビエルが、「日本の首都に大学を」という希望をローマへ書き送ったことに端を発し、1913年に設立された。以来、他者のために、他者とともに生きるというキリスト教ヒューマニズムを掲げ、「惜しみない奉仕の精神」を備えた人材を育んでいる。
 「奉仕とは、地球社会や他者へ貢献する行動を意味します。本学では、一人の行動が社会をよりよく変えるという認識から出発し、自ら進んで行動を起こせる“ソフィアスピリット”をもった21世紀型市民を育成しています」という石澤良昭学長の言葉どおり、学生たちは街の清掃活動や、さまざまなボランティアなどを自発的に行っている。現代の諸問題に挑む「神学部」は今年創立50周年を迎え、2009年からは収容定員を増員するなど、同大学の人間教育はさらなる発展を遂げることになりそうだ。
 学生を育むうえで、大切にしているのが新入生とのコミュニケーションだ。1年次に行われるオリエンテーションキャンプがよい例で、『星の王子様』の中の一文「本当に大切なものは目に見えない」を引用し「何が本当に大切なことか」を考えさせたり、イプセンの『人形の家』から「人間とは何か」を問いかけたりしている。学生に伝えたいのは、大学ではよい先生・よい友・よい思想に出会い、そして自分自身を見つめること。石澤学長は同大学が行う人間教育に確かな自信をもっている。
 「近年、各大学では教育改革などを掲げていますが、本学では教育に王道なしの精神のもとに、積み重ねた上智らしさを大切に、教職員が一丸となって、揺るぎない教育を行っています」
 もう一つの強みが外国語教育の充実だ。“上智方式”ともいわれる初習言語教育メソッドもあり、学べる外国語は18カ国におよぶ。
 「グローバル社会への対応が求められていますが、本学は、キャンパス自体がグローバル化しています。そこには国籍の壁もありません。ただし、語学は厳しいですよ。何せ本学には、高度な専門知識を持った専任教員約500人(うち20カ国の外国人教員86人)が、学生一人ひとりを見つめていますから」
 かつて日本を訪れたイエズス会宣教師たちは、「言葉は思想」と言語を重視し、その志は時を経た今も受け継がれている。
 「本学は学生の数こそ少ないですが、中身ではどこにも負けません。一人ひとりを大切にして、“原石の才能”である学生をダイヤモンドに変えていく環境がここにはあります」
 成長を約束できる自信は、確かな教育力の証明。上智大学が育む揺るがない人材は、社会をよりよく変える力となるだろう。


 今年、創立90周年を迎えた東京女子大学は、英エジンバラで開催されたキリスト教世界宣教大会での提案に基づき、新渡戸稲造を学長に開学した。以来、キリスト教を基盤としたリベラル・アーツ教育を行い、自立した女性を育成し続けてきた。湊晶子学長は、同大学の教育理念をこう語る。
 「本学のリベラル・アーツ教育は、人材よりも人物、業績よりも人格、知識よりも英知を重んじるものです。『人間とは何か』『生きる目的とは何か』を追究し、判断力や決断力、困難に打ち勝つ人間力を備え、社会に対して責任ある行動を毅然として取り得る人物を育成したいと考えています」
 ここで行われているのは、他人との比較・競争による教育ではなく、キリスト教を人生の基盤に据えた、一人ひとりを伸ばしていく教育。東京女子大学の英語表記は「Tokyo Woman's Christian University」とされているが、女子を「women」とひと括りにせず「woman」としているのは、学生個々人を大切に育てたいという思いからだという。
 「私自身、時間を見つけてキャンパス内を歩いて学生に声をかけたり、学生食堂で学生たちと一緒に食事をとったり。学長というより大学の『お母さん』だなんて言われます(笑い)。だけど、大切なお子さんを預かったからには、責任をもって一人ひとりを大切に育てなければいけません」
 湊学長が語るように、同大学では少人数での充実したゼミや、自立した女性を育むためのキャリア教育・支援が充実している。きめ細やかな教育で確固たる自己を形成した学生は、自分に自信をもち社会へと羽ばたいていくことができる。
 そして来年度からは、同大学の強みであるリベラル・アーツ教育を進化させるべく、2学部10学科を「現代教養学部」1学部に統合。4学科12専攻を設け、より自由で、現代にあった学びを可能とする。哲学・史学・文学を学べる人文学科、国際関係・経済・社会について理解を深める国際社会学科、言葉・心・コミュニケーションを探究する人間科学科、数学・情報・自然科学を研究する数理科学科と実に多様だ。
 「自由で、創造性にあふれる学びは、複眼的な視野と学問を備えた『専門性をもつ教養人』を育てます。リベラル・アーツ教育の神髄は、心を自由に開放することです。多様な『知』を探究することで、一人ひとりがビジョンをもち、情熱をもって、社会へのミッションを果たせる自立した女性に成長していきます」
 東京女子大学では、こうした取り組みの他にも、アフガニスタンなどの女子教育支援などで女性の活動を支え続けている。キリスト教を基盤とし、少人数教育のもと、一人ひとりを大切に育む。信念と確たる軸をもった教育は、揺らぐことなく社会を支え続けていくはずだ。


 明治学院大学の歴史は、幕末にアメリカ人宣教医師ヘボン博士がクララ夫人とともに横浜に開設したヘボン塾にさかのぼる。庶民から武士まで無償で弱者への施療活動を成し、患者との出会いを通して日本語を学び、日本で最初の本格的和英・英和辞典『和英語林集成』の編集・出版や、聖書を日本語訳をしたことでも知られる。大西晴樹学長は同大学の教育理念をこう語る。
 「本学では、創始者の理想である『他者への貢献』“Do for Others”を教育理念に掲げ、キリスト教による人格教育を行っています。そのうえで重視しているのが、『自分は将来何をもって“他者への貢献”をしたいのか。そのためには、何をどう学んだらいいのか』という目的と方法論、つまり学生たちにミッションをもってもらうことです」
 明治学院大学では、理想を現実にするべく五つの教育目標を掲げている。その内容は、(1)他者理解による心豊かな人間の育成(2)分析と構想力を持つ鋭利な人間の育成(3)コミュニケーション能力に富んだ人間の育成(4)キャリアデザインをできる人材の育成(5)人間、社会、自然と「ともに生きる」ことができる人間の育成、というものだ。
 「五つの教育目標を明確に掲げるとともに、各学部・学科ごとに教育目標を定め、豊かな人間性と高度な専門知識・コミュニケーション能力、そして自分にふさわしいミッションを明確にもっている─これらが明治学院大学が育む人の姿です」
 各学科ごとに打ち出された教育目標は、英文学科なら「語学・文学の研究に加え、人に対する洞察力を備え、文化・価値観の多様性を理解してコミュニケーションをできる人の育成」といった具体的な人間像を明示するもの。また、今年度の「教育GP」に採択された心理学部の取組「心理支援論:心理学教育の新スタンダード」をはじめ、多くのプログラムが評価されている。こうした、多様なカリキュラムのもと、熟練の教授陣が学生一人ひとりを見つめ、夢の実現をサポートしている。
 各学部や教養教育センターのカリキュラムに加えて、“Do for Others”の精神を育むのが先進的なボランティア活動だ。ボランティアセンターを全国の大学に先駆けて開設し、学生の自主性や実行力、他者を思いやる心を育んでいる。また、本学に設置されたNPO「JUNKO Association」では、明治学院大学在学中に東南アジアでのボランティアを志しながら、交通事故で亡くなられた高橋淳子さんの遺志を継ぎ、ベトナム、ミャンマーに「JUNKOスクール」という学校をつくるなどさまざまな活動を行っている。本年は「JUNKOスクール」の第1期生を留学生として迎え入れた。
 「“Do for Others”を実践する学生や卒業生こそ本学の誇りであり、何よりの喜びです。明治学院大学の教育は、創立時の精神が大切に受け継がれています」

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