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キャリアアップを目指す「社会人のための大学院」ガイド 社会人のための大学院・専門職大学院特集

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社会人のための大学院ガイド Vol.4

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学位と資格を目指せる会計専門職大学院

 ひと昔前は、会計・財務・経理は裏方の仕事だった。しかし、今では営業マンでも財務諸表くらいは読めなければならない。企業が営利を追求する存在である以上、会計や経理に精通する必要はあるのだが、銀行中心の間接金融から直接金融へのシフトによって、財務会計の専門家ニーズはますます高まっているのだ。

公認会計士試験の一部科目免除も可能

 会計専門職大学院は、会計やファイナンスに関する専門的な知識や理論を習得できるだけでなく、所定の科目を履修して修士の学位を修得すれば公認会計士の短答式試験の全4科目中3科目を免除されるという特典がある。

 この公認会計士は、会計・財務・経理系では最高峰の専門職だ。特に企業の財務諸表の監査証明を独占業務としているため、「資本市場の番人」ともいわれている。上場企業の不正や粉飾決算などを見逃せば、多数の投資家に被害が及ぶほか、株式市場への信頼まで失いかねないからだ。

 こうした社会的責任を担っているだけに、厳しい倫理意識も必要とされる。こうしたことから、以前は3次にも及ぶ国家試験(1次は大卒者などは免除)を経なければ一人前になれなかった。合格率も10%未満(2次試験)という超難関だった。

 そんな試験制度が2006年から大改正されて、1回2段階と大幅に簡略化。合格者数も急増し、合格率も大きく緩和された。ところが、09年の試験では一転して合格基準を上げたことで最終合格者数が大幅に減少。合格率も厳しくなった。続く10年も合格率は8.0%。11年はさらに6.5%と厳しくなり、ほとんど制度改正前の水準に逆戻りする結果となった。

 以降の合格率は12年が7.5%、13年は8.9%、14年は10.1%(以上は願書提出者ベース)と少しずつ上がっているものの、合格者数では12年が1347人、13年1178人、14年1102人と年々減少している。

 これは合格者の主な就職先となる監査法人が不況から新規採用を絞り込んだことが大きな理由とされる。だが、試験制度が大改正されたのは、監査の回数(四半期決算)や対象の増加もさることながら、内部統制の強化などによって、企業内にも有資格者が必要になったことも背景としていた。にもかかわらず、採用動向によって合格者が増減するというのは、監査法人入社のための一次試験と同じではないかとなってしまう。

 実は試験合格後の登録要件にネックがあり、2年以上の実務従事・業務補助が必要となる。このうち業務補助は「監査証明業務を対象」としているため、必然的に合格者は監査法人に集中していたのである。そうした背景から、新人弁護士と同様に合格者の就職難が問題になっていたのだが、経済環境が好転したせいかIPO(新規株式公開)が急増。最近は監査法人の人手が足りなくなってきたと指摘する人もいる。

 いずれにしても、日本の産業は、これまでのような銀行中心の間接金融から、ダイレクトに資本市場から資金を調達する直接金融にシフトしている。そのためには会計などの透明性や信頼性(ディスクロージャー)が大きなカギを握る。監査は上場企業などに限られているが、会計のエキスパートに対する人材ニーズは今後も増加することは間違いないと思われる。

IFRS(国際財務報告基準)が新たなテーマ

 こうした会計の世界で今、最も大きな話題となっているのが、IFRS(国際財務報告基準)だ。金融はすでにボーダーレスといわれているが、現実には企業の経営内容が分かる財務諸表は国によってバラバラの基準で作られてきた。これでは投資家に混乱や負担を与えるため、財務報告書の表記基準を統一することで、より円滑な投資活動を促すことが目的となっている。

 基本的には株式上場企業や海外で資金調達を行っている企業に限られる話だが、外国資本による日本企業のM&A(企業の合併・買収)などグローバリゼーションが進展しているだけに、会計の専門家にとっては無視することができない。

 さらに、このIFRSは基準を細かく規定した「細則主義」ではなく、考え方や理念だけを定めた「原則主義」になっているため、知識だけでなく、その実際的な応用方法についても習熟する必要がある。経済のグローバル化はますます進展していくと考えられるので、会計専門職大学院で学ぶべき新しい重要なテーマといえるだろう。

財務・会計知識はビジネスパーソンの武器になる

 前述したように、会計専門職大学院で所定の単位を習得して修了すれば、公認会計士試験の一部科目を免除される。とはいっても、短答式試験4科目中3科目であり、論文式試験はまるまる残る。だが、短答式試験の合格と論文式試験の合格科目は翌2年間まで維持できるため、一発試験に比べてはるかに楽になるといえるだろう。

 問題は免除される3科目の価値だが、資格を目指すだけなら資格スクールのほうが安上がりで済むかもしれない。しかし、会計専門職大学院では高度な理論や体系、その応用から最新知識を学べるほか、修了すれば修士号(専門職)の学位を得られる。

 もちろん会計知識ゼロで入学した場合は、大学院の2年間で短期合格は難しいが、ある程度の経理知識がある社会人であれば、短答式3科目免除の効果は大きいといわれる。

 要するに、修士の学位と国家資格の2つを同時並行で狙えるのが、会計専門職大学院の最も大きな魅力といえるだろう。

 しかしながら、会計専門職大学院で学ぶ人たちすべてが公認会計士を目指しているわけではない。大学院にもよるが、財務会計の知識を基礎から、あるいは本格的に学ぶために入学したという社会人も少なくない。経営幹部、経営管理や経営企画の担当部門ともなれば、財務諸表が読めなければ事業計画が立案できないからだ。

 ビジネススクールでも財務会計は重視されているが、あくまでも基礎科目の一つという位置付けなので、敢えて会計専門職大学院を選んだという社会人も珍しくない。一般のビジネスパーソンにしても、取引先の経営状態が財務諸表で判断できるほか、企業の決算などの情報開示を正確に理解できれば、ビジネスの質と幅が広がる。企業買収などの際にも、チームに加わることができるはずだ。

 財務会計知識は、ビジネスパーソンのもう一つの武器になり得るのである。

 特に公認会計士を目指さないにしても、仮に国家試験で不合格が続いても、財務会計の知識は様々な業界や職種で応用できる。その意味でも、自分に対する投資価値の高い大学院といえるのではないだろうか。

 なお、この会計専門職大学院で、会計学または税法に関する研究による修士論文を作成して修了すると、税理士試験の一部科目免除も可能だ。免除申請以前に、税理士試験の関連一部科目の合格が必要など、やや複雑な制度なので国税庁のホームページを参考にしていただきたい。公認会計士試験では、税理士に対する一部試験科目免除制度もあるので、これを活用すれば税理士から最高峰資格へのステップアップも可能だ。