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キャリアアップを目指す「社会人のための大学院」ガイド 社会人のための大学院・専門職大学院特集

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社会人のための大学院ガイド Vol.6

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女性に人気の高い臨床心理士の仕事と取得方法!

 心の問題のエキスパートであり、病院の心療内科にも勤務できる臨床心理士は、特に女性の人気が高い専門職である。だが、この資格は所定の大学院を修了することが受験要件となっている。

心理カウンセリングの専門資格

 生活が豊かになるに連れて、テクノストレスやPTSD(心的外傷後ストレス障害)など心の問題が浮上してきた。こうした心理に関する専門資格は様々にあるが、最も高く評価されているのが臨床心理士である。

 この資格は、1988年に設立された日本臨床心理士資格認定協会が審査を行うものであり、同協会は90年に文部科学省から財団法人として認められている。国家資格ではないのだが、心理系では広く公的に認められた資格といっていい。

 2012年4月現在の試験合格者は2万4666名(医師502名を含む)となっており、特に女性に人気の高い専門職であることも特長だ。

 有資格者は病院・診療所の心療内科で活躍できるほか、保健所、精神福祉センターなどのほか、家庭裁判所や少年鑑別所などで心理テストや矯正のための心理面接なども行う。
 また、文部科学省による公立小・中学校の「スクールカウンセラー活用事業」の任用資格にもなっており、約5800名のスクールカウンセラーが活躍しているほか、この実績を踏まえて、2010年度からは私立学校での「私立学校臨床心理士(私学スクールカウンセラー)支援事業」もスタートしている。

 病院の場合は精神科医もいるのだが、精神科医はもっぱら身体病理の側面から精神疾患などを治療する。それに対して臨床心理士は、文科系的な側面から心理の内面にアプローチするため、軽いストレスやトラウマから欝症状まで含めて、より身近な存在といっていい。

 ただし、臨床心理士は精神科医と異なり、投薬指示ができない。このため病院では必ずしも医師と同等の立場にはならないので、過剰な期待は失望につながる。それでも心理テストやカウンセリングなど幅広い仕事があるので、活躍の場には事欠かないといっても過言ではないはずだ。最近ではリハビリテーションの専門病院で、高次脳機能障害(脳卒中などに伴い、言語・思考・記憶などの障害を抱え、日常生活や社会生活に問題が認められる状態)を持つ患者への心理テストを行うなど、高齢者への医療や福祉現場での役割も期待されている。

 この臨床心理士の資格を得るためには、日本臨床心理士資格認定協会が実施する試験に合格しなければならない。そして、その受験要件が同協会指定の大学院修士課程を修了することなのである。つまり、この資格は大学院を修了しなければ取得できないわけだ。

指定大学院の修了が受験要件

 この指定大学院は1種(144校)と2種(15校)がある(11年8月1日現在)。これに加えて、05年には心理系の専門職大学院も誕生し、現在は全国で6校の心理系専門職大学院が開設された。

 これらの指定大学院や専門職大学院のうち、1種と専門職大学院は修了後すぐに受験できるが、2種の場合は修了後に1年間の実務経験が必要。この実務経験とは、学校や病院、心理相談室などでの心理相談員やカウンセラーとしての勤務経験が該当し、大学院在学中の経験は含まれないので注意が必要だ。

 だが、いずれの大学院でも定員は限られており、その一方で心理は多数の志願者が集まる人気研究科であるため、入学は容易ではないと予め覚悟しておくべきだろう。

 ちなみに在宅でも学べる放送大学大学院の臨床心理学プログラムも指定大学院(2種)だが、12年度は定員40名程度に対して361名の出願があった。うち合格者は32名。競争倍率は11.3倍と、狭き門というほかない。

 こうした難関であるため、出身学部も問われる。心理系または心理隣接諸科学を学んでいないと、授業などについていけないと指摘する大学院もある。もし他の学部卒業者で、どうしても臨床心理士を目指したいという場合は、心理系学部に編入学してリスタートするという方法も考えられる。3年次に編入し、その後に大学院に進むことになるので、2年ほど遠回りになってしまうが、一生続けられる専門職に就くと考えれば、それくらいの投資はペイできると考えたい。

産業カウンセラーも有力資格

 心理系以外の学部出身者で、指定大学院の入学はどうしても困難という人は、産業カウンセラーを目指すという方法がある。企業などの職場を中心として、従業者のストレスなどの心理カウンセリングを行う専門資格だ。

 この資格は日本産業カウンセラー協会が実施する民間資格で産業カウンセラーとシニア産業カウンセラーの2つのレベルに分かれている。基本的には大学の心理系または隣接諸科学の出身者が受験要件なのだが、エントリーレベルの産業カウンセラーは、同協会の養成講座を修了しても受験資格が得られる。他分野から転身できる数少ない心理系資格の一つといえるだろう。

 こうした産業カウンセラーを、スクールカウンセラーのように職場に配置する義務はないため、まだまだ採用する企業は限られているが、すでに職場におけるパワーハラスメントなどで心理的な障害を受ける人が目立ってきた。リストラなどで正社員を絞りこんだため、過重労働で心理的な圧迫感や負担を感じている人も増加しているといわれる。

 現在では派遣、契約、アルバイトにパートなど非正規雇用者と正社員が混在する職場も珍しくないため、そうした軋轢を調整して、生産性や創造性を向上させるような前向きの心理カウンセリングも不可欠になってくると考えられる。つまり、これから産業カウンセラーの人材ニーズが急速に高まっていくと予想できるのである。なお、日本産業カウンセラー協会では、キャリア・コンサルタント試験も実施しているので、こちらへの転身も可能だ。

 心理カウンセリングに興味のある人は、この2つの資格をぜひ検討していただきたい。