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社会人インタビュー Vol.28

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大学図書館に勤務しながら、博士課程に在籍。
仕事へのフィードバックと、MLA連携がテーマ

 筑波大学大学院図書館情報メディア研究科は、04年に閉学した図書館情報大学の知的資産を継承して誕生した。図書館情報学と情報メディア学を研究対象としており、関連職種に就いている社会人学生が多数在籍している。安達匠さんもその一人で、「ミュージアム、ライブラリー、アーカイブという3要素を繋げるMLA連携が研究テーマ。勤務先の大学図書館にも役立てられる内容です」と話す。

筑波大学大学院
図書館情報メディア研究科
図書館情報メディア専攻
博士後期課程3年
安達 匠さん

(プロフィール)
1967年東京生まれ。國學院大學文学部史学科卒業後、職員として國學院大學に就職。4年目に図書館に配属され、以後、約17年勤務。2006年筑波大学大学院図書館情報メディア研究科博士前期課程に入学。08年博士後期課程に進学。

 
――現在は大学院博士課程に在籍されていますが、まず博士前期課程に入学された動機を教えてください。
小さい頃から本に囲まれて育ち、小学生の中学年から図書館に憧れていました。 学部時代に図書館司書と学芸員の資格を取得。自分にとって図書館に勤務することは自然な流れでした。縁あって母校に勤務することになり、最初の3年間は別の部署でしたが、4年目から図書館に配属され、以来、それなりに励んで働いてきたつもりです。
大学院に進もうと思ったのは、入学前年の11月の夜。残業中に、「大学院に行こう!」とひらめいたのです。その背景にはいろいろなファクターがありました。まず、近年、図書館界では資料の電子化や図書館間連携・外部連携など話題に事欠かないほど新しい動きが顕著になっています。その頃、國學院大學でも新図書館建築が俎上に載っており、新しい情報を渇望していた時でした。また、ある時、図書館情報大学(04年に筑波大学に合併されて閉学)出身の方々と知り合う機会があり、彼らのスキルの高さに驚き、刺激を受けたことなどが挙げられます。
筑波大学大学院図書館情報メディア研究科の存在は前々から知っていたし、社会人特別選抜入試もやっていると分かり、ここで悩んでいるよりは、前へ踏み出そうと思ったのです。
――入学試験とその対策について教えてください。
当時の入試科目は英語の筆記試験と専門科目の口述試験。まず、英語は図書館情報学の英文レポート2本が出題され、それを和訳。対策としては、過去問を取り寄せて練習し、市販の問題集も購入して仕事後に必死になって勉強しました。口述試験は大学院で研究したいテーマについてのプレゼンテーションで、辛辣な意見もいただきましたが、何とか合格でき、ほっとしましたね。
――その研究テーマは?
図書館界での大きな課題にMLA連携というものがあります。Mはミュージアム、Lはライブラリー、Aはアーカイブ。つまり、文化資源を扱う、博物館、図書館、文書館という3種類の施設を連携していこうということです。私が博士前期課程に入る頃はまだ単語も生まれておらず、日本で本格的に研究している人も極めて少なくて、超最先端の研究になる予定でした(笑)。入学当時は、Aは一般的な存在感が弱いので、まずはMとLの連携をテーマにしようと、その中心として図書館の活動を置こうと考えました。
もう少し説明すると、たとえば、フェルメールという画家がいますが、ネットで探せば簡単に彼の作品を見ることができます。次にフェルメールのことをもっと調べようとしたとします。その内容やレベルは人によって違いますよね。フェルメール研究家には一般的な解説書はいらないし、初めて彼の絵を見て感動した人には研究文献は高度過ぎる。この案内をするのは図書館では司書のレファレンスという仕事があり、美術館にはキュレーターと呼ばれる学芸員がいます。この両者の仕事をうまくミックスさせていこうというのがMとLの連携 です。言い換えれば、資料(この場合はフェルメールの絵)を活かすには本が必要、本を読み下すためには本物の資料が必要になる。この相互作用を研究しているのです。
もちろんwebなどのネットワークも活用して、利用者に最適な資料や本を探し出せるような検索システムの構築もMLA連携の目標の一つです。
――現在は博士後期課程に在籍されていますが、前期課程からの進学の動機は?
博士前期課程でMとLの連携を研究テーマにすると決めたものの、先行研究がほとんどなく、どうやって進めていこうかと最初から躓き、途中でも悩みながら、やっと修士論文を書き上げたのですが、そのときに「この研究はもっと広げられる」と感じたのです。ちょうどその頃からMLA連携が図書館界と図書館学会で関心を集め、研究者も増えました。でも、自分の研究の方が2歩は先に進んでいる。だからこそ博士後期課程に進み、研究を続けようと思ったのです。これから博士論文の執筆を始めますが、この論文も意味あるものと自負しています。
――学業と仕事との両立のコツは何でしょうか?
簡潔に言えば、職場の理解と環境の整備でしょうか。私の場合、勤務先の國學院大學が職員の自己啓発を奨励しており、大学院への通学もバックアップしてくれました。また、自分自身で食事と睡眠時間を確保することを心がけました。それでも、博士前期課程の1年次は授業数も多く、度々体調を崩すなど結構キツかったです。
実は、博士後期課程に進んでから1年間休学したのです。公私共にハードな時期で、特に新しい図書館の安定稼動という使命があり、研究に打ち込むなんてできない。ここは一度リセットしようと思ったのです。ただ、指導教授のご厚意でゼミには出席させてもらいました。「社会人院生は休学制度をうまく利用して、仕事と両立しながら研究できるようにペース配分すべき」とおっしゃっていただき、肩の荷が軽くなったことを覚えています。
――現在はどのようなペースで通学していますか?
博士後期課程になると授業はほとんどなく、私の場合、今学期はゼミだけです。通学も週に1回、金曜日の18時〜21時まで。そのほかの平日は月曜日から土曜日までは仕事、帰宅は金曜日も含めて23時頃です。
通勤時間や昼休みなどの空き時間を利用して文献を読むなど勉強しています。でも、修士論文から続けているテーマなので、アタマの中に知識のベースはあり、どこをどう繋げようかという思考が重要な作業になります。逆に言えば、常にアタマのどこかで博士論文をどうしようか考えている状態です。ただし、書く作業は集中しないとできないので、夏休みなどの長期休暇をあてようと思っています。
――大学院での収穫は何でしょうか?
図書館情報学という学問を研究するには筑波大学は最高の場だと思いますね。図書館情報大学時代からの教員が多数いらっしゃるので、図書館界や図書館学会についての最新情報をすぐにキャッチすることができます。また、在籍している社会人院生もキャリアが豊富で、学会の運営者や他大学でも有名な図書館員、国立国会図書館の司書などすごい経歴の方ばかり。ハンドメイドで図書館の検索システムをさくっと作ってしまえるような人もいます。こうした中で自分を磨いていけるのは、本当にありがたいと思います。
――今後の目標を教えてください。
まずは博士論文を完成させること。また、大学院で学んだことを仕事に活かすことも重要な目標です。國學院大學の図書館には150万冊の蔵書があり、特に古書は国内有数のレベルです。また大学内には貴重な資料が満ちている博物館施設もあります。こうした古書や博物館資料を活かすためにも、活性化し包括するような図書やスタッフなどが不可欠。つまり、大学でもMLA連携は起きていることなんですよ。
安達匠さんの1週間のスケジュール 2011年度1学期の場合