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社会人インタビュー Vol.46

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映画プロデューサーとして国際的に活躍。
さらなる飛躍を目指して知財を学ぶ

 東京理科大学大学院イノベーション研究科知的財産戦略専攻は、知的財産(知財)を「技術」「法律」「経営」「国際関係」の観点から学び、知財をコアにして様々なビジネスを展開できる人材を育成している。日本と台湾の共同映画製作プロデューサーを務める小出正之さんは「外国での映画製作にはトラブルがつきものですが、それを解決する軸となるものを求めて入学しました。また、アニメーションを始めとした“クールジャパン”と呼ばれるコンテンツの海外戦略も研究したい」と話す。

東京理科大学大学院
イノベーション研究科
知的財産戦略専攻
修士課程2年
小出正之さん

(プロフィール)
1971年静岡県生まれ。94年東京理科大学卒業後、アニメ制作会社の制作進行、CGディレクターを経て、99年にテレビドラマの監督を務めたことがきっかけで映画界に足を踏み入れた。2012年にビーチウォーカーズ・グループの映画製作会社の代表取締役に就任。13年東京理科大学大学院イノベーション研究科知的財産戦略専攻に入学。日本映画監督協会会員。

――知的財産(知財)を学ぼうと思った動機を教えてください。
勤務先の映画製作会社は日本企業ですが、台湾の映画製作会社(安可電影有限公司)に出資しており、私の具体的な実務は日本と台湾の合作映画のプロデュースです。このため1年の大半を台湾で過ごします。製作の現場では様々なトラブルが起き、判断に迷うことも少なくありません。
また、映画製作はコンテンツビジネスであり、ライセンスビジネス、ショービジネスと多様な要素を備えています。海外でこの仕事を円滑に進めて行くには、法律や会計、文化や商慣習という様々な視点で考えなければなりません。私自身は物理学科出身なので、これまでは、いわば「理系の発想」で仕事に取り組んできたのですが、しだいにそれだけでは足りないと危機感を抱くようになり、新たな「軸」となるものが必要だと強く感じるようになりました。
そんな時に特許庁に勤めている友人が「知財で日本を元気にする会」というイベントに誘ってくれて、それがきっかけで「知財こそ自分が学ぶべきものだ!」と気づいたのです。
最近はクールジャパンと呼ばれる日本のアニメーションやマンガを海外に発信する動きが活発になっており、国もバックアップしていますが、私からみるともっと戦略的であるべきだと思うのです。ですから、大学院で学んだことをベースに知財のエキスパートになり、より効果的で意味のある戦略を提案したいとも考えています。
――東京理科大学大学院イノベーション研究科知的財産戦略専攻を選んだ理由は?
知財を学べる大学院を探したところ、母校である東京理科大学の大学院に知的財産戦略専攻が開設されていることを知り、説明会に参加。そこで澤井敬史教授に出会い、「今は仕事が忙しいので50歳になったら入学したい」というと、「その頃にはもっと忙しくなっているでしょう。仕事との両立に苦労しながら学んでいる社会人は大勢います。あなたもやってみてはどうですか」と励まされ、挑戦してみようと思いました。
澤井教授との会話から知的好奇心が刺激されたことも受験のモチベーションになり、入学後に指導教官になっていただきました。
――基本的な1週間のスケジュールを教えてください。
1年次前期までは台湾で撮影があったので、日曜日から水曜日まで台湾で過ごし、水曜のお昼に羽田に着いたら、そのままスーツケースを引きずって大学院に通学する生活を繰り返していました。映画の撮影が試験期間にずれ込んでしまったので、試験やレポートがきつかったですね。
2年次になった今は、撮影はないのですが、月1回程度は台湾に行くので、週の前半に履修をまとめて、木曜の朝に台湾に発ち、日曜の夜に帰国というパターンです。移動時間はドア・ツー・ドアで5時間弱ですから体力的な負担はあまりないですね。
――特に興味深い科目を教えてください。
荻野誠教授の「国際取引法」「知財紛争処理実務」は、毎回楽しみにしていました。荻野教授は大手電機メーカーで国際的な知財管理に携わってきた実務家教員なので、授業で取り上げる実例も適切。例えば200年前のイギリスの判例をテーマにすることもありましたが、決して昔の話ではなく、今も通用する普遍的な内容なので、海外との交渉が多い私の仕事にもすぐに役立ちました。
それに、知的財産戦略専攻だけでなく技術経営専攻(MOT)の授業も1学年に2科目まで履修できるので、「プロジェクトマネジメント」などを学びました。社会人がメインのクラスで、中でもケーススタディ型の授業では様々なキャリアを持つ方々の経験に裏付けられた意見を聞けて、とても参考になりました。
――クラスメートや教授との交流はいかがですか?
この専攻は学部から上がってくる現役生と社会人が半々で、20歳ほど年下の人たちや異業種の人たちと同級生として勉強できたこと、幅広い年齢層の友人ができたことは大きな収穫です。
澤井教授をはじめ「師」となる方々が、私の長所や短所を知った上で親身にアドバイスしてくださることも、他のネット学習などでは得られないことですね。
――仕事と両立させるポイントは?
永遠のテーマですね。入学前の説明会で澤井先生がおっしゃったように、社会人は皆さんとても苦労して時間を作っています。事前に資料の読み込みが必要な授業で、30代、40代のクラスメートがしっかりレポートまで書いて議論に臨んでいる姿を目の当たりにして、「頑張らねば」と思い、自分もいつのまにか同じようにやれるようになりました。
あとは、パソコン、スマートフォンのツールを有効活用することです。一昔前なら予習といえば分厚い教科書を読み込むことでしたが、今は事前にパソコンやタブレットにダウンロードしておけば大量の文献を持ったまま、海外にも行けて、空港のラウンジや機内で勉強できます。
――これから大学院を目指す社会人にアドバイスやメッセージをお願いします。
自分のやりたいこと、好きなことを仕事にしていくには、勉強したり、努力して能力を向上させていかなくてはならないと思います。私の場合は映画プロデューサーですが、製作する環境も手法もどんどん変わっていますから、そうした時代に適応していくためには自己研鑽は不可欠。ですから、大学院を修了したあとも、勉強は続けていきたいと考えています。
それにビジネス社会はますます競争が激しくなり、しかも国際化が進んでいますから日本国内だけでなく世界全体を見据えて、その中での自社の立ち位置を見つけ、さらに自分自身の存在価値や生き方を考えなければなりません。誰も将来のことは分かりませんが、それだけに社会人が大学院に入って、自分を見つめ直しながらキャリアプランを立てて、必要となる知識や理論、スキルを修得することは大事だと思います。
小出正之さんの1週間のスケジュール 2013年度前期(修士課程1年次)の場合