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キャリアアップを目指す「社会人のための大学院」ガイド 社会人のための大学院・専門職大学院特集

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大学院に聞きました! Vol.40
埼玉エコノミクス&マネジメント・スクール
埼玉大学大学院人文社会科学研究科

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アカデミックな理論と現場の実務を融合、
仕事を続けながら博士号も取得可能

 技術革新を背景とする経済活動の高度化によって、社会人が大学院で学ぶ必要性がますます高まってきた。それだけでなく、グローバル化が急速に進展。高学歴の国際社会への対応も求められている。国際機関や欧米の企業では修士号や博士号を持つビジネスマンは珍しくないため、学士号だけで十分とはいえなくなっているのだ。埼玉大学大学院経済科学研究科は社会人が働きながら学べる昼夜開講制大学院の先駆けであり、東京駅日本橋口のサピアタワー9階にサテライト・キャンパスを持つ。2015年度からの学部改編に対応して人文社会科学研究科経済経営専攻となり、分かりやすく「埼玉エコノミクス&マネジメント・スクール」と呼称するが、経済学部長の薄井和夫教授は「以前よりも間口が広くなり、経済学、経営学いずれも働きながら博士号まで取得可能。現場で直面する問題をアカデミックな理論と融合させることが教育理念です」と語る。

どんな局面でも応用可能な
バックボーンとなる理論を学ぶ

埼玉エコノミクス&マネジメント・スクール埼玉大学大学院人文社会科学研究科専攻長(法科大学院長) 大塚章男教授

埼玉エコノミクス&マネジメント・スクール
埼玉大学大学院人文社会科学研究科
埼玉大学経済学部長 薄井和夫教授

 埼玉エコノミクス&マネジメント・スクールの前身である埼玉大学大学院経済科学研究科は、社会人のための昼夜開講制大学院の先駆けとして1993年に開設された。2000年にはJR東京駅八重洲口にサテライト・キャンパスの東京ステーションカレッジを設置。2007年からは同じくJR東京駅の日本橋口に直結するサピアタワー9階に移転したが、社会人の通学に便利な抜群の立地であり、雨天でも改札口から傘をさすことなく教室まで行ける。首都圏はもちろん遠方からの通学者もいるという。

 午後6時半から開講しているほか、土曜日は昼間授業も実施しているので、社会人が働きながらでも修了できる大変に便利な大学院だが、2015年度から学部の改編に伴って従来の経済科学研究科から人文社会科学研究科となる。同大学院では分かりやすく「埼玉エコノミクス&マネジメント・スクール」と呼称しているが、これまでよりも研究対象の窓口が広がり、経済学・経営学・公共政策を専門分野とする社会人大学院という特長がさらに明確になったといえるだろう。

 博士前期課程(修士課程)の場合は、東京ステーションカレッジで「経済経営システム研究科目」として日本経済論、金融論、経営管理論、経営戦略論、マーケティング論、経営財務論などを開講。埼玉本校でも「地域公共政策科目」として地方財政論、地方自治論、地域福祉論、都市計画論、社会経済地理などを平日夜間または土曜日に開講している。

 また、社会科学系のバックグラウンドを持たない社会人のための「基礎科目」として、ミクロ経済学、マクロ経済学、経営基礎、会計基礎なども設定されているので、経済学・経営学を初歩レベルから学ぶことも可能だ。

 大学院としての教育方針を「理論と実践の融合」として、日本銀行や経済産業省、JICA、地方自治体や民間企業など第一線で活躍中の実務家を客員教授として招聘していることも特長だ。目先の経済動向は職場で日々実感できるが、たとえばアベノミクスによる金融の量的緩和など、大きな政策の理論的背景はなかなか勉強できない。だが、そうした大きな政策によって経済社会は変化していくため、現場の専門家から意思決定のプロセスや基本的な理論を聞くことで、ビジネスパーソンとしての判断力や分析力を高めていけるわけだ。

 「それによってより大きなパースペクティヴを持つことと並行して、職場で体験した問題や課題などをアカデミックな理論と接合させることで、新たな現場理論を創造することが大学院としての目標です。アカデミックな理論は現場の実態とは違うと考えられがちですが、正しく理解できれば戦略の立案や説得力のある根拠にできるなど、ダイナミックに応用できます。それによって現場の見方までもが変わってくるはずです」(薄井和夫経済学部長、以下同)

 

論文重視の教育方針で
2名の教員が丁寧に指導

 MBAスタイルのビジネススクールでは修士論文を必修にしていないところも珍しくないが、こうした教育方針から、同大学院では論文作成を重視している。現役のビジネスパーソンにとって長文の論文作成は厳しいかもしれないが、このプロセスこそが「自律的な調査・研究能力の証明になるのです」と薄井経済学部長は語る。長文の構成だけでも論理的思考力の育成につながるほか、主指導と副指導の2名の教員が論文作成を丁寧に指導してくれるので、仕上げた時の達成感も大きいのではないだろうか。

参考までに、博士課程前期の修士論文のテーマを以下に抜粋した。

  • デジタルコンテンツの成功モデルの研究-デジタル教育産業の事例研究
  • 地域ブランド育成に関する考察-コンテクスト・ブランディングによる分析
  • 中国商業銀行における資金運用の分析-日本、米国との比較を踏まえて
  • スマートシティに関する研究
  • 看護職の賃金水準を規定する要因
  • 日本におけるグリーン・ツーリズムの現状と課題
  • ネットワークの視点に基づく中小企業連携の一考察
  • 児童養護施設における「経営」について-児童養護施設の新しい経営のあり方を求めて
  • 正社員登用・転換制度導入について-労働組合と基幹化を中心に
  • 実践的なIT人材育成に関する研究

 「外資系の営業職から技術系、教育、官公庁や情報通信まで、多彩な社会人が集まっています。中には助産師さんが生き残りを模索するために入学したというケースもあり、これは『助産院経営におけるソーシャル・アントレプレナーシップと実践コミュニティ』という修士論文に結実しました。このようにどんな職業や産業でも研究すべき課題や問題があり、それを解決するための研究を少人数制できめ細かくバックアップすることが本研究科の伝統であり、際立った特長だと考えています。

 ちなみに、経済学・経営学では数学力が必須といわれますが、実はそうでもありません。むしろ公式やフレームワークに落とし込めば何でも解決できるという考え方にこそ問題があると思います。歴史学の研究プロセスとトップ・マネジメントの戦略決定プロセスが酷似しているという近年の研究もあるように、文系的な感性や定性的な分析が新しい理論につながっていく可能性もあると思います。文系であるなら、そのバックグラウンドにとことんこだわって経済や経営を追求するというのも興味深いアプローチになるのではないでしょうか。いずれにしても、自分で独自の仮説を立て、エビデンスを収集して分析しながら理論を構築していく大学院での論文作成は、現実のビジネスでも役立つはずです」

 

経済学、経営学の
博士号も修得可能

 同大学院では、博士前期課程(修士課程)で経済学、経営学の修士号が修得できる。博士課程後期に進む社会人も少なくなく、同じく経済学と経営学の博士号も修得可能だ。

 「所定単位の履修と博士論文が審査に通れば、修了と同時に授与される課程博士が修得できます。ただし、大学に教員として残るのではなく、在野で調査・研究能力を活用していく社会人研究者がほとんどですね。これまでに95名の博士号取得者を輩出しましたが、約65%が企業内で活躍しており、新たに大学に転出して研究職に就いた人は20%程度、元々大学教員であった人が6%、残りは外国人留学生で帰国した人たちです。ビジネスはますます高度化しているので、修士・博士レベルの能力を持つ社会人はこれから必要になってくると思いますよ。それに国際社会は高学歴であり、欧米では修士号や博士号を持つビジネスパーソンは珍しくありません。近年は急速に日本社会や企業がグローバル化してきたので、学士号だけでは足りないと感じるケースも増えていくのではないでしょうか」

 名称が変更される2015年度からは、定員も社会人のみを対象として、博士課程前期(修士課程)で22名、博士課程後期で12名に拡大される。

 「やはり職場や仕事を通して問題意識を持ち、これを理論的に考えてみたいという志を持った社会人に来ていただきたいですね。東京芸大出身のピアニストが入学・修了したこともあるので、職種・業種は問いません。むしろ業界が異なる社会人が出会い、互いに切磋琢磨しながらも交流して視野を広げていける希少な場所と考えてください。

 そうした観点から、学部生との交流なども企画してきましたが、大学院の名称が変わったことを好機として、修了者や在学生との定期的な懇親・交流会を開催していく予定。そのほかにも、東京駅に直結という絶好のロケーションを活用した様々な企画を実施していきたいですね」

関連リンク
社会人のための大学院・専門職大学院特集(埼玉大学大学院人文社会科学研究科))>>
埼玉大学人文社会科学研究科経済経営専攻