
社会とつながる
長久手市と瀬戸市の自然豊かなキャンパスに5学部・10学科を構え、「良質の研究に基づく良質の教育」という基本理念のもと「知の探究」を目指す愛知県立大学。公立大学として、地域とのつながりという設立以来の使命を受け継ぎながら、時代とともに移りゆく社会の要請に柔軟に対応。高島忠義新学長を迎えた本年度以降も、グローバル化する21世紀の共生社会に貢献できる人材育成のため、さまざまな教育改革を実践していく。
人間力・キャリア教育とのつながり
専門的な学びを学生の将来へつなげるキャリア支援室
生涯にわたるキャリアデザインを描くために、大学としてどのようなサポートができるか。愛知県立大学で実践されるキャリア教育は、単に就職活動に付随するものではなく、学生を育てるという視点に立っていることが特徴。その要となるのが、2009年に独立して新しい組織になったキャリア支援室だ。
「学生がおのおのに学んでいる専門分野の知識を、いかに自身のキャリア形成につなげていくか。そのサポートが大きな役割」と話すのはキャリア支援室長を務める丸山真司教授。室長以下、専門相談員2名を含む5名のスタッフで運営される支援室の取り組みは、学生対応、イベント開催、キャリア教育、企業対応という4つの柱のもとに展開される。心がけているのは、スタッフ全員が学生の情報を共有する「顔の見える対応」だ。昨年度(2011年度)、相談に訪れた学生数は約1,500名。その90%(※)以上が希望する企業への就職を実現しているなど、きめ細かな支援の充実度はデータからも顕著だ。
就職ガイダンスなどイベントの開催も盛んだ。年間に40回ほどあるイベントには「文章力アップ講座」など、現在の学生に必要とされる能力に焦点を当てた企画も多く、昨年度はのべ4,000
名の学生が受講。また、「キャリアデザイン」「キャリア実践」など授業を通じたキャリア教育では、企画、プレゼンテーション、ディスカッションを通して社会人基礎力を養成。外部識者や卒業生を招く教養講座「企業トップに聞く」「英語連続セミナー」などとも連動させながら、学生が明確な将来ビジョンを描けるよう多彩なプログラムを実施している。
さらに、そのキャリア教育の効果が意外な形で示されたのが、東日本大震災後の現地でのボランティア活動だ。「参加学生が『自分たちの身近で起こった時に何ができるか』と、自ら視点を移して考え、議論する姿に本学のキャリア教育の芽生えを感じた」と丸山室長。今後は、ボランティアで養われる「人間力」を、キャリア教育といかにリンクさせるかを検討中だ。
※ 愛知県立大学調べ
地域の「公共財」としてのつながり
教育研究の成果で社会に貢献
公立大学の使命である地域とのつながり

調査中の古文書の一例
教育研究の成果を地域の多様なニーズに還元することは、公立大学に課せられた大きな使命。愛知県立大学では地域連携センターを窓口として、産学官連携、受託・共同研究、ボランティアなどで地域社会と交流し、大学が「地域共同の財産」となるよう努めている。各学部の特性を生かした取り組みはさまざまだ。
愛知県の進める「知の拠点」プロジェクトでは、情報科学部が「動脈硬化の超早期診断研究」に参加。企業との共同研究で、大学の研究シーズを製品化につなげ、地域を活性化させる試みが始まった。2年前から、豊橋市の普門寺で古文書の調査に取り組む日本文化学部も、地域住民や地元教育委員会の協力を得てフィールドワークを行っている。また、外国語学部と教育福祉学部では、長久手市、瀬戸市を中心とした小学校で外国籍児童や発達障害児童の支援活動「スクールボランティア」を継続して実施。さらに外国語学部では県内にある英語科(コース)のある高校との連携プロジェクトも計画中だ。子育て支援「もりっこやまっこ」が高く評価されている看護学部では、「看護実践センター」を中心にした認定看護師の育成に注力。愛知県のがん対策と連動させた教育課程を5年前に立ち上げ、県内の認定看護師数の大幅な増加に貢献している。
「本学が位置するのは尾張、三河、美濃の『国境(くにざかい)』。歴史的に内外の行き来が起こる国境では重要な事柄が起きてきた」と日本文化学部の上川通夫教授。今後も「場所としての固有性」を意識し、優れた知的生産、発信の拠点を目指して、多様な分野で地域との連携を深めていく。
グローバル人材育成とのつながり
異文化理解に基づくコミュニケーション能力で世界とつながる

優勝チームSkubaとの試合を終えて
(ロボカップ世界大会2011)
世界との距離が急速に近づいている現代、グローバルな視野を持った人材の育成は、大学に課された大きな役割のひとつ。4学科を有する外国語学部を持ち、海外にある20の大学と国際協定を結ぶ愛知県立大学では、少人数制による質の高い語学教育を大きな柱に、教員の留学支援制度、多読図書など、国際感覚を磨く取り組みは研究・教育両面で多彩だ。さまざまな言語で演説を披露し語学力とプレゼンテーション能力を競う「多言語競演レシテーション大会」という独自のプログラムや、自主的な学びの姿勢を支援する「学生自主企画研究」でも、国際的な文化の比較を切り口にした研究発表が次々に誕生していることも、その充実した国際教育を示している。
2009年にロボットサッカーの世界大会で準優勝した情報科学部のように、学部として世界とのつながりを持つ例も多い。情報科学部では、大学院生の半数以上が英語の論文を携えて国際会議を経験。外国語学部では半数以上の学生が在学中に海外留学を経験するなど、学生の語学力向上意識も高い。また、海外でインターンシップを経験する学生が増えている点も近年の特徴だ。
こうした背景を受けて昨年10月に設置されたのが国際交流室だ。「語学教育だけではグローバルな人材の育成には不十分。大学としてより明確な方向性を持って国際教育支援体制を体系化していく」と、狙いを語る学生支援センター長の宮浦国江教授。経済的支援も含めた留学制度の充実や、相互に単位認定ができる協定校の拡充はもとより、今後は異文化への理解に基づき、多文化共生社会を生き抜く国際感覚の涵養を目標にした全学共通科目の更なる充実を図っていく予定だ。
| 4 | 数字が証明する愛知県立大学の真実 |
教員1名あたりの1学年の学生数約4人 |

高島忠義新学長
愛知県立大学では、1学年あたり約4人の学生に対して教員1名が指導にあたっています。「学生の個性を把握した上で、きめ細かな指導を与える少人数教育こそ、『良質の研究に基づく良質の教育』を掲げる本学にとっての最大の強み」と今年度より学長に就任した高島忠義教授。講義は20人前後で構成されることが多く、例えば外国語学部の専門言語科目は15人ほどの少人数クラスで講義が行われています。また、日本文化学部で行われる古文書の調査研究、免許・資格取得に結び付く教育福祉学部の少人数による実践的教育、学生4人と教員1名がチームになって進める情報科学部のプロジェクト・ベースド・ラーニング、7人の学生に対し教員1名が指導する看護学部の病院実習などにおいて少人数教育を行っています。このように、新学長のもと、地域に根ざした「知の拠点」としてきめ細かな取り組みを本学は加速させています。
