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特集記事: 2007年12月11日 [ 週刊朝日 2007年12月21日号 掲載 ]

医療シリーズ 天然歯のような噛み心地が得られる 最新インプラント治療特集 -咀嚼力は全身の健康力-
  寄稿者川原先生写真

【特別寄稿】

川原 春幸(かわはら はるゆき)
大阪歯科大学名誉教授
臨床器材研究所所長

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歯列矯正とインプラント

廃用萎縮という発生学的用語がある。活用していない生体組織の局所は衰退し痩せるということである。とくに筋肉や骨格ではそれが顕著に表れる。無重力下で宇宙飛行士が懸命に自転車を漕ぐのは無重力による筋骨の衰退を防ぐためである。それほどに骨の成長や消失は外力の影響を受けやすい。  

弱い力で顎顔面の形態を変貌させる最も顕著な例は歯科矯正学である。歯に外力を加えると、まず顎の骨は変形しキレイな歯並びになる。このことは古くから知られており、歯科矯正学は100年以上の歴史と豊富な科学的基礎知識をもっている。歯列矯正によってキレイな歯並びになり顎顔面骨の形態まで改変される。つまり、歯列矯正はよく噛めるようにするだけではなく、その人の顔貌をより美しいものにする。ひいては心まで美しくし、より活動的な精神構造をも創造することができると矯正学者は言っている。

このように歯列矯正学は外力に対して骨組織が容易に変形することを実証し、外力に対する骨の力学的応答について多くの基礎知識をインプラント学に提示している。でも、矯正学は天然歯の変位改良による顎顔面の美的再構築が主目的であり、インプラントは無歯顎を対象としており、矯正学とは根本的に異なった視点からの顎顔面美的再建学である。

インプラントの効果

歯が抜けて無歯顎になると顎骨は急速に萎縮し、老人顔となる。入れ歯で修復しても、外見は良くなるが噛む力は天然歯(100%)に対して、23.2%しか回復されない。しかも顎骨の萎縮はつづけて進行し、老人顔は年とともに進行する。これに反して上下顎ともに全く歯のない顎骨に下顎だけでもインプラント修復すると噛む力は総入れ歯の回復率23.2%に対し、2倍以上の52.9%まで回復される(表)。

表

上下顎すべてがインプラントで修復された場合には100%に近い回復率を示すことは容易に想像できる。さらに、インプラントによる修復は噛む力が強くなるだけではなく、骨の萎縮も防止され若さは長期に維持される(図)。

図

しかも咬合力はインプラントを介して顎骨に伝播し骨質を強固にするばかりではなく、顎顔面頭蓋を通して脳幹部にまで伝達し、老化を防ぎ、認知症防止にもつながる。

インプラントは歯の無いところに人工の歯ができ、それが天然歯のような機能をもつわけで、患者はcharming smileをとり戻す。取り外しの入れ歯ではないので人前で笑っても入れ歯のようにはずれることはなく、取り外して隠して洗う必要もない。自分の歯と同じようになることで、その人の心を若返らせ活動的な美しい顔に変貌する。

インプラント手術の過去・現在・未来

もともとインプラントは粘膜を剥離しないで埋入手術を完了するワンピースタイプがほとんどであった。その後1970年頃からツーピースインプラントによる2回手術法が主流となり、その傾向は現在も続いている。しかし、1975年頃よりツーピースインプラントで1回の手術で埋入操作を完了するツーピース1回法が活用されはじめ、現在ではこのツーピースインプラント1回法が主流になっている。さらに驚くことは、古典的なワンピース1回法、しかも粘膜を剥離しないインプラント埋入技法が急速にその需要を伸ばしていることである。

最近では抜歯直後にインプラントを埋入し、より速やかな咬合機能の回復と顎顔面の美容的再建を計る方向に推移しつつある。この場合、術前の顎顔面骨の3次元画像から骨量(形態)と骨質(密度)を計測し、CAD/CAMとレーザーセンサーによる手術誘導法が急速に進歩発展しつつある。最近のロボット工学の進歩からすると、ドクターの器用、不器用に関係なく、失敗のない良好な手術結果が得られるような時代がくるであろう。また、インプラントの受け皿となる骨量が部分的に欠損している場合や、骨質が貧弱な場合には、移植用骨片または人工骨片で補強することができる。すでにこの骨補填増強法は多くのインプラント臨床医の常套手段となっている。そして、インプラント技法は適正な顎骨がなければ、まず、丈夫な顎骨を造ってからインプラントする方向に進展している。この背景には再生医学に関する多くの研究業績が存在している。もちろん、再生医学の発展にはまだまだ多くの障壁があり、一筋縄では解決できない多くの問題を残している。しかし、より的確な再生医学の発展には将来期待するところが大きい。

 

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