QOLを低下させる脊椎脊髄(せきついせきずい)疾患
人の体を支える脊椎(せきつい)(背骨)は、椎骨と呼ばれる骨が連なって構成されている。上から頸椎、胸椎、腰椎、仙椎に大きく分けられ、椎骨と椎骨の間にはクッションの役割を果たす椎間板という軟骨がある。脊髄(せきずい)は脊椎の中を通る中枢神経の塊で、脳から送られる情報を体の他の部分に伝達したり、逆に体の各部分から脳へと送られる情報を伝える経路として働く重要な役割を担っている。脊椎脊髄疾患は、神経根(末梢神経)の圧迫や脊髄(中枢神経)圧迫による麻痺などが原因で、手足のしびれ、歩行障害、腰痛などを引き起こす病気だ。
代表的な脊椎脊髄疾患の一つである腰椎椎間板ヘルニアは、成人男性に多く見られ、腰・下肢などに激しい痛みを伴う。治療は保存療法が基本となるが、重症化すれば手術も考慮される。手術は背中を100mmほど切開してヘルニアを摘出するLOVE法、切開幅16mm程から内視鏡を挿入し、モニターの画像を見ながら行うMED法などがある。またレーザー照射により椎間板の内部を減圧するPLDDも日帰りが可能な治療法として注目を集めているが、椎間板の状態によっては適応でない場合もあるため、必ず医師との相談が必要だ。
腰部脊柱管狭窄症は、脊髄が通る脊椎の管(脊柱管)が加齢に伴って狭くなり、神経根が圧迫されて起こる。腰痛や手足のしびれ、数分歩くと進めなくなり、休むとまた歩けるようになる間欠性跛行などがこの病気の特徴だ。専門の整形外科では、まずCT、MRIなどで狭窄の有無、原因を診断する。内服薬や保存療法で改善が認められない場合は手術の適応となる。手術は背中側から腰椎の脊柱管の狭くなった部分に窓を開けて神経根の圧迫を自由にする「開窓術」や、最近では内視鏡を使用した手術なども行われている。脊椎脊髄疾患は同じような症状が現れても、その原因によって治療法が大きく異なるため、専門の整形外科による適確な診断・治療が重要だ。
【文/小林 恵美】